禁止10
「気合い入れないとなって」
「流石の心がけです。将軍が攻めて来たということは、前線の守りが突破されたということです。邪主自ら、乗り込んできているのかもしれません」
「うわあ……」
まだこっちは、力の使い方もおぼつかないのに。
と、ここからの旅は一部割愛させていただく。
残る4将や3大ドラゴン王との戦いとか、伝説の鎧の入手とか、本当に色々あったのだが、仏教用語禁止については、攻略方法を見つけたからだ。
おかげで死ぬことなく、無事に邪主の喉元にまで迫ることが出来た。
邪主は親征により前線まで来ていたので、本国よりは警備が手薄な砦に居たのだ。
これなら少人数で――それこそ数人で魔王を倒すRPGのようなことも出来るわけだ。
今では魔法の使い方もばっちりだし、装備も十分。
結局、パーティーは二人のままだが、与えられた魔法の能力のおかげで、少人数でも行けた。
というより、同行者が増えると、会話でうっかりミスやって死にかねないので、2人が一番安全という判断でもあるが……。
前述の攻略法もあるから、そこまで心配はしなくても大丈夫かもしれないが……。
「さぁ、行きましょう」
「ラジャ―」
そう。攻略法とはつまり、英語で喋ればいいということだ。
「邪主をバスターしてピースだ」
……ルー大柴みたいになっているのは気にするな!
邪主は、いかにも魔王が座っていそうな椅子に腰かけた、魚の骨のような頭の男だった。
「よくぞここまで来たものだ」
「ユーが邪主か!!」
「無論。わしが邪主・シャガガレーマだ。覚えているがよい。お前たちが最後に聞く名前となるのだからな!」
やたら雄弁なので、このまま「冥土の土産」とか言って自滅するんじゃないかと思ったが、流石にそれはなさそうだ。
「死ぬがよい! キッズども!」
キッズって……と思ったが、たぶん小僧的なニュアンスで言いたかったんだろう。
思いっきり僧って入ってるもんな……。
――とか、余計なことを考えている場合じゃない。
邪主の放つ魔法は苛烈そのもの。
地水火風に雷に闇にと、あらゆる属性の魔法を乱れ打ちしてくる。
「くっ!」
シャケテラスとタイミングを合わせて、おれも魔法を放つが、手ごたえがない。
「まさか、マジックマスターたる邪主にマジックが効くとでも思っていたのか?」
邪主の腕の一振りで、魔法が全て跳ね返される。
「うわあああっ!?」
返って来た自分の攻撃に、吹っ飛ばされる。
「くうっ……」
「まさ終わりではないぞ! かぁっ!!」
邪主は、黒いオーラを嵐のように噴き出した。
「きゃああああああああ!!」
「うおおおおおおお!?」
荒れ狂う魔力に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「がはっ!?」
一気に肺の中の空気が吐き出される。
「はぁっはぁっはぁっ……」
「くくく……弱すぎるぞ」
駄目だ、強すぎる……。
魔法が効かないのは誤算だった。
というかそれなら違う能力を転生の特典にくれよ!
なんか支援策が微妙に現場と合ってないのが行政っぽいけどさあ!
とても正攻法で勝てる相手じゃない……!
「ハァハァハァ……」
「勇者と聞いていたがつまらんな。もうおしまいなのか?」
「おれは諦めない」
or
「ネバーギブアップ……」




