第3話 復讐の果実
◇◆◇
雨が降っていた。
冷たい雫が頬を打つ感覚で、
冬真は目を覚ます。
また、戻っていた。
あの教室。あの時間。
神谷の笑い声、そして、美月の優しい笑顔。
だが今、冬真の瞳には温もりはなかった。
代わりに宿っていたのは、
凍てついた光――“憎しみ”だった。
(もう……信じない。誰も)
机の上のペンを握りつぶしながら、
冬真は自分に言い聞かせた。
◇◆◇
神谷は相変わらずの王様気取りで、
取り巻きに囲まれ、笑っていた。
美月はそんな神谷の隣で、
“笑顔を作っている”。
その笑みが、痛いほどに嘘だとわかる。
見ていて辛い。
――だから美月を、見たくなかった。
(いい。今度は、俺が壊す番だ)
◇◆◇
放課後。
冬真は神谷を裏から追い詰め始めた。
SNSの裏垢、教師との不正、女遊びの証拠。
すべてを静かに集め、少しずつ流していく。
同時に、美月に近づく。
だが今回は「優しく」ではなく、
「冷たく」接した。
愛しているからこそ、突き放す。
「美月。お前、
俺より神谷のことが好きだよな?」
「……っ、な、何それ……!」
「いいんだ。別に。
俺にはもう、関係ないから」
その瞳の奥に、確かに恐怖が見えた。
怯えている――何かに。
それは神谷か、
あるいは……もっと別の“何か”か。
◇◆◇
数日後、学校に衝撃が走る。
神谷の裏の顔が暴かれた。
動画、金、暴力。
教師も巻き込まれたスキャンダル。
だが――神谷は、笑っていた。
「お前か、冬真。俺を嵌めたのは」
屋上。
黄昏の空の下、
神谷がナイフを持って立っていた。
その手は血で濡れている。
「あの女《美月》も喋りすぎなんだよ」
美月が、屋上の端に倒れていた。
腕から血を流し、ぐったりしている。
「お前が……美月を……!」
冬真は駆け出した。
だが、間に合わない。
神谷の刃が胸を貫く。
痛みも、怒りも、もう感じなかった。
ただ――目の前の少女の涙だけが見えた。
「ごめん……冬真……
私、守れなかった……」
「違う……美月……
俺が……守る、側……だ……」
視界が、暗くなっていく。
◇◆◇
(――もう一度……
もう一度、やり直せるなら……)
(今度こそ、復讐なんてしない。
絶対に……愛を……選ぶ)
そう願った瞬間、
また、雨音が響いた。
――世界が、巻き戻る。
◇◆◇
つづく→第4話 最後の輪廻




