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#3 人知れず魔法に新たな1ページを加えていました

 ここはダンジョンの外なる世界、小国が連なる連邦の中央にある魔法学校にあたる。古くからの伝承と魔法文化を重んじる風土は、ダンジョンが生まれる前の歴史にさえ及んでいるのだと言う。


「ねぇ。 ほら、入学試験はこっちじゃない」


 ひとりの少女が同じくらいに小さな男の子を連れ、きょろきょろとあたりを伺うように受付を探している。


「えー。 聞いた方がいいよぉ」


「なに? いままでお姉ちゃんが間違っていることなんてあった?」


「いつも間違いばっかりじゃん」


 他に入学試験を受けに来ている子どもたちも見当たらないので、おそらくは編入試験を希望している冒険者なのだろう。狩人がこなす仕事や街での雑用で下積みをする冒険者は多い。おそらくは成人の儀まで、自身にも魔法の適性があることを知らずに過ごしたはずだ。


「いいからお姉ちゃんについてきなさい」


「産まれたのがほんの少し早かっただけで同じ日じゃん」


「先に生まれたのは私なのッ」


 少女と男の子が迷うのもそのはず、各研究機関と併設しており、学校というよりかは国家の育成機関との風潮が強い。道行く人に聞こうにもその多くは明らかに学校関係者ではないと見受けられるのだ。二人は何度か同じような塔を廻ったのち、靴の大きさから察したのだろう、ようやくそれっぽい下駄箱を見つける。ここが魔法学校なのだと二人は嬉しそうに顔を見合わせた。


「「失礼します」」


 建物の1階を進んで見つけた職員室に二人は入ると、そこはまるで図書館のようにずらりと本が並んでいる。カリキュラムと言うよりも、発展途上の文学が乱雑にオカルトから基本的な学術書まで入り混じったその様相はまさに圧巻だ。


「あの、入学試験を受けに来ました」


「少しそのまま待ってください」


 山のように本を乗せた机から腕だけを覗かせて、“すぐに行くのでそのまま”と散らかった足元から寝ぐせの酷い男の職員が手を振る。他は出払っていることからも、彼が受付の事務職員なのだろう。ほどなくして男が二人のもとに頭を左手で搔きながらやって来る。


「冒険者ギルドからの書状は持っていますか?」


「はい」


 少女がズボンのポケットから少ししわくちゃになった一枚の紙を取り出す。


「冒険者ギルドからの紹介は実技試験にて承っています」


「え、僕たちは魔法なんて使えません」


 弟の男の子がその驚きをあらわにする。


「いえ、そうではなくて、魔法書やワンドやロッドなどは高価です。

 冒険者のみなさんには、遺跡で拾ってきてもらっています」


「ダンジョンのことですよね??」


 弟はこういうことに慎重なのか、試験の内容について不安そうに聞いている。


「確かにダンジョンですが、もう魔物はいませんので安心してください。

 知っての通り門の中に広がる世界をダンジョンと呼びますが、遺跡とは活動を止めたダンジョンになりますので危険はありません」


「ふふぅん。 そこで魔法学校に必要な教材を自分たちで調達しろってことね」


 少女が“わかっていましたよ”といわんばかりに胸を張って会話に割って入る。


「はい。 高額な魔法書やワンドやロッドを買うよりか現実的です。

 そこはその昔多くの者が挑み多くの死者を出しました。

 遺品をそのままあなた達が使うことになるのが心苦しいのですが……」


 少女が弟と顔を見合わせながら、魔物がいないことに少しだけほっとする。冒険者と言っても成人の儀を終えたばかりの魔物さえ見たことない駆け出しなのだ。


「遺跡が活動を止めたダンジョンだなんてはじめて知りました」


 少女が答える横で、弟も強く頷いている。


「これから案内しますのでついてきてください」


「試験に期限はありますか?」


 今度は弟が心配そうに尋ねる。試験は安全ではあるが、簡単ではないと気付いたのだろう。職員の話によれば遺跡は、ずいぶんと昔から遺跡なのだと伺えたからだ。


「期限はありませんが、拾得物はダンジョンと同様に申請してもらうので不正はできません。 神儀盤は当時使っていたものが遺跡の出入り口にあるのでそのまま使ってください」


 お試しダンジョンと言えば聞こえは良いが、実際には採掘を終え廃坑になった金山で金を探すようなものだろう。それでも命の危険を冒さず教育を受けるチャンスが、狩人のまねごとや街での雑用の下積みをしながら得られるのであれば十分である。特別な地位や財産などのない世間一般の人々にも教育のチャンスがゼロではないことが分かる。


「では行きましょう」


 職員は二人を連れて建物の地下に続く階段をずいぶんと長いこと降りる。


「すみません。 ランプは僕が魔力を補填しているのですが、地下はあまり補填してなくて」


 階段の壁には等間隔にランプが灯されているが、光量はお世辞にも明るくは無くお粗末である。魔物もでなければ野党がいるわけでもないのに、あまり気持ちの良いところではない。


「さぁ。 着きましたよ」


 着いた先には大きな鉄のような重厚な門があり、門には火と水、そして風と土を表すエレメントが刻まれている。そして、扉から少し離れた壁に神儀盤が埋め込まれている。


「ここには、“聖樹へ至る精霊水脈”と呼ばれる門がありました。

 ダンジョンは成長してその真理に至ります。 残念なのはここが遺跡であることです」

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