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#4 魔物の進化はどうするの~その6、卵に戻そう~

 ジェイと少女はたいして会話もしていないのに、エイムは話の主導権を握りたいかのように慌てていたようでさえあった。


「あら、それなら私もそちらの灰色の卵を頂きたいわ」


 少女も卵を欲しがっているが、どうしてエイムも少女も卵を欲しているか分からない。


「まってまって、卵ならあげるからひとりずつ話してよ」


 もともとお店の商品として売る予定だったジェイはあっさりと承諾してしまう。


「いいわ。 その新生した魔物の卵に見合う情報ね」


 少女の言葉に、エイムが頭を抱える。


「しんせい? した魔物の卵??」


 ジェイが少女の言葉に、その言葉の意味を知ろうとする。


「死んだものを能力で生き返らせること。

 ダンジョンマスターの魔力が注ぎ込まれること。

 聖杯に水が満たされるとき、6つの扉のいずれかが開く。

 ひとつは、可能性をつかみ取る扉。

 ひとつは、望んだ未来に続く扉。

 ひとつは――」


 謎解きを錯覚するような少女の説明に、ジェイは何を言っているのか分からず困惑してしまう。


「ちょっと待った! 俺から説明させてくれ。

 簡単に言うと新生は、魔物に稀に起こる死を超えた先にある存在進化のことさ」


 それ以上聞かれるとまずいかのようにエイムが、少女の話を中断し簡単にまとめて説明する。


「死んでから進化するの?」


 会話を邪魔しまいとかえでは小声で“そんなのあり得ないわ”と呟きながらも会話に入りたくてうずうずしているようだ。


「違うわ。 聖杯に水が満たされるときよ」


「わかんないよ」


「まぁとにかく普通は起こらない存在進化が新生ってことさ。

 珍しいから俺もその卵が欲しいんだ」


「まぁね。 これ普通の卵じゃないよね。

 殻が割れたのに、魔力の膜で覆われた卵になったんだもん」


 ジェイは納得したかのように“うんうん”と頷いている。エイムは目を細めて満足げに頷いて銀面を“くいっ”と右手で持ち上げる。


 おそらくはジェイが持ち込んだ卵は、普通ではない奇跡の賜物だったに違いない。


 少女の言葉を借りるのであれば、進化値マイナスの卵は形だけが存在し生命は宿っていなかったのだろう。そして、ジェイにとっては魔力を注ぎ込むつもりが、無意識に装備錬成の能力を使って誕生を上書きすることで命を与えていたのかもしれない。その魔物の卵は同じくして、装備錬成していた両手鎌の影響を受け属性付与する際の闇属性魔力が流れ込んだのだ。


 ジェイは卵を丁寧に両手で包み少女に灰色の卵を差し出す。


「これいいよ。 ありがとう。

 特別な卵になってるって教えてくれてありがと」


「ええ。 私の方こそあなたのことを覚えておくわ。

 魔王種を誕生させたジェイ」


「え?」


「さ、さぁそんなことより、ジェイ。 俺も情報を提供していいか?」


 神々の間は次第にがやがやと他のダンジョンマスターの声で溢れる様になっていた。


「あ、うん」


「守護者は口を揃えて食物連鎖を勧めてくる。 だが、無理がある。 いや、不可能と言ってもいい。 冒険者の世界に繋がるのに、1年足らずで作った生態系では太刀打ち出来るはずがないんだ。 冒険者がここに何しにくるか分かるか?」


「あ、そっか! 冒険者は僕たちを倒して、ダンジョンの資源を略奪にくるんだね」


 その言葉は的を射てはいるもののどこか“ふわふわ”としている。


「それだけで済むのかいささか疑問に思うが、ダンジョンポイントが枯渇した後、食物連鎖で減る資源の中で最後にぽつんとダンジョンマスターが残るそういう可能性もあるってことを忘れるなよ」


「それはどういう意味?」


 エイムがにこやかに手を差し出してくる。


「違う違う。 卵だよ」


「あ、うん。 情報のお代だよね」


 ジェイはエイムに黒色の卵を差し出す。


「そろそろ始まるみたいだぜ」


 円卓の空いた席が3席だけになっていることを“見てみろ”と言わんばかりにエイムがあごで指し示しながら言う。


 ほどなくして創造神の声が建物の天井から音もなく、そこに集うすべての者の頭へと響いた。


“此度は最初の魔王種の誕生まで、半月足らずで至るとは実に喜ばしい。

 そろそろ互いの出自は紹介を終えたころだろうか。

 それぞれが別の世界から集められておる。

 それぞれの可能性で我らの種にも繁栄をもたらしてくれることを願う”


 円卓の上にいつもよりも豪華な食事が現れる。いつの間にか少女は卓に着いており、エイムも卓に向かって歩を進める。


「さぁ、ジェイ。 あたしたちも行きましょう」


 このときジェイは初めて周りを改めて見渡した。


「エルフに、天使?」


 ジェイが気にも留めてなかったそれぞれのダンジョンマスターは、マーフォークにガーゴイル、フェアリーにナイトメアなど多種多様ではあるものの知性ある種族が選ばれている。


「あれ? もしかしてこの夢って現実なの?」


 幾日も過ごす中で薄々は感じていたのだろう。ゲームには登場しない、知らないはずの種族と夢にしてはより鮮明な彼らの守護者を見て気付いたのかもしれない。


「ジェイ。 わけのわからないこと言ってないで席に着いて」


「うん!」


 エイムと少女へ卵を渡していたのを見られて、話題を集めたのかジェイには多くの視線が寄せられている。


「私にも卵を頂けないかしら」


 フェアリーのダンジョンマスターがジェイに駆け寄り話しかける。光の加減で玉虫色にキラキラと変化する羽にブロンドの長い髪が時折触れて幻想的に光る。


「ここでお店を開きたくて持ってきたからいいよ」


「お代はダンジョンポイントだけかしら?」


「う~ん。 魔物の素材か情報がいいかな」


「それなら、妖精の鱗粉はどうかしら。

 魔力への親和がとても高いわ。

 それに、これは私にしか準備できないものよ」


 “クスクス”とフェアリーの少女は笑う。声が重なるように聞こえたかと思うと少女が二人に分かれている。


「そうね。 妖精の鱗粉を二袋にするから卵も2つで如何かしら」


 もう一人の青いドレスの少女がジェイに問いかける。ジェイは驚きながらも、頷いてフェアリーの姉妹?と灰色の卵を妖精の鱗粉と交換する。


「種族限定! 素敵な素材ありがと」


 ジェイは楽しそうに目を輝かせている。

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