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#4 魔物の進化はどうするの~その3、幼体に戻そう~

「かえでちょっと落ち着く」


 “ていっ”とジェイがかえでの角に触れる。


「なによ。 ジェイのくせに」


「僕にも分かるように話してよ」


「え? 魔物のことならジェイも知ってるでしょ。 だって、あたしの知らない方法で存在進化だってさせたじゃない」


 “そうなんだけど”などと呟きながらジェイが考え込む。


「魔物のことは、知ってたわけじゃない。 同じ数字を合わせると次の数字になるのはね、学校の友達と同じような数字を合わせたら強くなるゲームを昔よくしてたから」


「それじゃぁ。 ダンジョンマスターの学校で、そういう強くする訓練みたいなのがあったってこと?」


「訓練じゃないけど、友達と競い合ってたのは間違いないかな」


 ジェイが“えへん”とばかりに胸を張って、それを見たかえでが笑顔で応える。そして、ようやく少しだけ二人の勘違いが小さいものになっていく。


「だから、僕も教えて欲しいな。 魔物がどうやって生きてるのか、だって実際に生きてる魔物なんてはじめて」


 ジェイがかえでに手を伸ばして、かえでの協力を求める。


「なら、そっちはあたしが先生ね」


 かえでがジェイの手を前にどうしたらいいのか分からなそうにしながらも、両手でつかんで何度も握り返し“にこり”と笑う。


「ジェイが門から召喚してくれたのは、羽虫の成体。 大人の魔物って言った方が分かりやすい?」


「うん!」


 ジェイが大きな声で嬉しそうに答える。


「羽虫は大人になれるのはメスだけで、子供の時にオスとメスに分かれて卵を作るのよ」


「へぇー。 人は大人になって子供を作るのにね」


「虫は姿を変える生き物だから子供って言い方をしたけれど、本当は正しくないのかも知れないわね。 それに卵が出来てしばらくすると、オスもメスに変化するんだから」


 ジェイに分かるように、かえでがゆっくり魔物である羽虫の生態系を伝える。


「それが、かえでがよく言うしょくもつれんさ?」


「そうね。 本当はもう少しダンジョンに魔物が増えて、多くの個性をもった魔物が産まれて、自然に強くなっていくのよ」


「じゃぁ、ユニークとかそうやって作るの?」


「そう! そうなの。 やっと伝わったわ」


「じゃぁ。 もっと魔物が増える様に、どんどんさっきの続きしなきゃ」


「そうよ」


 “いつか必ずあたしもきっと”かえでが小さな声で呟く。


 夕日のようにオレンジ色に染まる薄い透明な羽、ふわりとした灰色の綿毛がその胴体を包む羽虫が6匹、その幼体が3匹、繭が1つと何故か卵が3つある。ジェイのダンジョンに魔物はそれだけである。ジェイがそのうちの2匹の羽虫に触れ“いたずら”と言うと、途端に1匹の羽虫は羽が抜け落ちて幼体に戻る。羽根付きの成体から幼体に戻したり、進化値2の個体を掛け合わせて存在進化させると、最後は繭が2つと進化値2の成体が1匹、幼体が7匹に卵が3つになる。


「かえでこれ数が増えれば増えるほど、どれが進化値いくつとか調べるのが大変になりそうだよ」


「泣き言いわないッ! 普通はそんなに簡単に存在進化しないんだから」


「はい、はーい」


「『はい』は1回」


「エイムさんに頼まれてる両手鎌も作らないとなんだよなぁ」


 暮れない夕日が暮れるころ、ジェイがさらに4つ増えて7つになった卵の前で暇そうにあくびをする。


「ところでかえで、これいつになったら孵るの」


「進化値を見てみたら?」


「へーい」


 ジェイは卵にそっと触れる。


“進化値-1”


「かえで進化値がマイナスになってる!!」


「それが原因なのかしら? 進化値が影響してるのか難しいところね。

 ジェイなら何か調べるようなスキル知らないの?」


「あ、そうか。 鑑定スキル」


『ダンジョンポイント100を使用し、鑑定スキルを取得しますか?』


「はい」


『保有しているダンジョンポイントが不足しています』


「あーもう。 ダンジョンポイントもないし寝る」


 どこまでも広がるオレンジ色に照らされる緑の絨毯に寝そべり、どこまでも続きそうな地平の彼方とオレンジ色に染まり揺れる木々のこすれる音を聞きながらジェイは目を閉じる。ここには夜は無い。


「ジェイ。 あなたはよくやってるわ」


 かえでがジェイの隣に座り、姿の変わらない繭や幼体に卵を見つめながらジェイの髪を撫でる。どのくらいの時間が過ぎただろう。卵はさらに増えて12個になるが、繭も幼体も卵もまるで成長せず姿が変わらない。


「起きたら武器をもっと作って貰って、神々の間での情報交換がもっと必要ね。

 普通に起こることがジェイのダンジョンでは起こらないし、創造神様が強くなることを望んでいる理由も気になるわ」


 ゆるやかに時は流れ、寝返りが多くなったころを見計らってかえでがジェイを起こす。


「もう少し寝てたいよ……」


「ほら、起きて。 ダンジョンポイントを確認する」


 ジェイが目をこすりながら“ダンジョンポイント”と呟く。


『保有しているダンジョンポイントは236です』


「お! ダンジョンポイントがある」


 ダンジョンポイントが溜まっているのを知ったとたん、ジェイがさっきまでのうとうとした様子が嘘のように元気になる。


「鑑定スキルをください」


 ジェイが飛んだり跳ねたりしながら見つめている先には、茨が巻き付いた門があり、その上に光るように炎で描かれた文字が浮かび上がっている。


『ダンジョンポイント100を使用し、鑑定スキルを付与します』

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