3話 リアム・アールヴ
疲れちゃ
「逃げ…逃げろ!」
「殺せぇ!」
「一族の裏切り者がァ!」
「子供を逃がせ!!」
声が聞こえる
人々が苦しむ声
視界は真っ暗で何も見えない
だけど音だけが聞こえてくる
声が聞こえる
「アーシャ!この城も時期に陥落する!すぐに逃げるんだ!」
「嫌よ!あなたを置いて逃げるなんて…」
夫婦の会話のようなものが聞こえる、こんな状況で言い争いをしているようだ
「子供を守ってくれ…頼んだぞ」
「待っ…」
走り去っていく音が聞こえるどうやらという妻の言葉を聞く前に夫が去って行ったようだ
「あなたは私達の希望よ」
妻と見られる女性は泣くような今にでも消えてしまうような声で言った
希望?なんのことだろうか
だが不思議なことにその言葉は自分に向けられているようだった
「あなたは私が絶対に守るわ」
何故だろう
とても懐か…し
鳥のさえずりで目が覚める
「う、う〜ん」
「目が覚めたか」
半開きの目を無理やり開くとそこには美しい金髪の髪を持つエルフの女性がいた
「ここ…は?」
目をかき周りを見渡すと石造りの壁や釜戸
自分が寝ているところは木でできたベットだった
「私達は川に流されたあとお前が助けた村人達に助けられたんだ」
「助けた村人達って…」
「あぁあの時お前が逃がした人達だな」
あぁ…よかった…彼らは無事に…
「そしてそのままこの村に一緒運んできたってわけ」
?「僕はどれくらい寝てましたか?」
エルフの女性「3日だ」
「3日!?」
僕は驚きのあまりベッドから体を勢いよく起こす
「僕はそんなに寝t」
その瞬間、体から軋むような音が聞こえる
「ウギッ!!」
エルフの女性「何してるんだ、お前は川に落ちる時水面に岩と一緒に飛び込んだんだ。逆によく骨折しなかったって思うよ」
自分でも聞いたことないような声が出た。
彼女はそんな僕を見て呆れたような顔をしてこちらを見ながら言った
「あなたは大丈夫なんですか?」
そうだ、僕は重要じゃない。
彼女のことの方が…
「あなたじゃない」
彼女の声は僕の思考を一瞬で塗り替えた。
それほど彼女の声は優しさに満ち溢れ、彼女の唇につい視線が行ってしまう。
「?」
「クシェルよ。クシェル•ヴァルト」
「クシェルさん…」
僕はなぜ彼女の名前を口に出したか分からないだけど何故か心のどこかにしっくり来た
「そういうお前の名前はなんだ。あの時聞きそびれてしまったからな、教えて欲しい」
「あぁ…僕の名前は…」
「リアム・アールヴ」
「リアム•アールヴか…良い名前だ」
彼女は僕の名前を確かめるように繰り返すと右手を差し出してきた
「あの時助けてくれてありがとう。これからもよろしく頼むぞ。リアム」
「はい。よろしくお願いします」
お互い微笑みながら硬い握手を交わした
「ちなみに私の体は大丈夫、治癒の魔法を使ったからな」
「クシェルさん魔法使えたんですか?」
ここ一番の驚きだった。魔法は軍の者にしか使えないんじゃないのか?
「そうよ、まぁ治癒の魔法は自分にしか使えないけど」
なるほど、そんな魔法もあるのか…
ん?
「…それって僕らが出会った時になんで使わなかったんですか?」
そうだ、あの時使っていたら僕が肩に手を回して運ぶ必要なんてなかったんじゃ…
「あ、あの時は魔力がそこをついてたんだ…ずっと戦ってたから…」
少し恥ずかしそうにクシェルがそう言った
なるほど、こうして聞くと魔法にも長所と短所があるらしい
クシェルが話すことはとても新鮮なものばかりでついつい色々聞いてしまう。僕は日が沈みかけるまでクシェルと喋り続けていた
数時間前
エルフの里近く 東側の軍 キャンプ地にて
「引けぇ!!引けぇ!!」
「クソッ!!なんなんだアイツは!!」
「魔法使いだ逃げろ!!」
「熱い!!誰か助けてくれぇ!!」
その場は正しく地獄だった
辺りには人を喰らう炎が地面を走っている
炎に触れた者を容赦なく溶かしていく
その中心に1人の女性がいた
角のように尖った白帽子を被っている
耳が隠れるか隠れないか位の赤髪のショートヘア
白を基調とした軍服に黒のショートパンツ
スラッとした足をさらに強調させる黒タイツ
さらにその女性と同じくらいの大きさの真っ赤な長杖
彼女を形成する要素の一つ一つが存在感を際立たせる
「呆気なかったわね」
彼女は地面に焼け焦げた死体を見ながらつまらなそうに呟いた
「魔女様、少しよろしいでしょうか」
後ろに甲冑を来た兵士が女性の前に跪く
「何?」
「先程襲われたエルフの里の被害を確認しに行ったのですが…」
兵士が言葉を濁す。
「何よ、はっきり言いなさい」
「エルフの里は壊滅状態なのですが、死体の数が異様に少ないのです」
「え?」
魔女はとても驚いた。
それもそのはず西側は相手の攻撃に2日ほど遅れを取ったのだ。
普通に考えてエルフの村人も皆殺しにあってもおかしくない。
「エルフの戦士と思われる死体はあるのですが、民間人と思われる死体が少ないのです。」
「逃げ延びた民間人が居る、ということ?」
「はい、恐らく」
彼女が少し黙り込む。
「まぁ良いわ、生存者を探しましょう。まずここから近場の村へ補給も兼ねて向かいましょう。ここから何日かかるかしら」
「2日もあれば着くかと」
「わかったわ、じゃあ支度をしてすぐに撤収よ」
「わかりました!」
(東側の奇襲に対してエルフの死者が少なすぎる、何故こんなにも素早く逃げれたのか… )
(まぁ考えても仕方がないわね、とりあえず生存者を探して王都に報告しましょう)
先程の兵士が駆け足で再び女性に近づき跪いた
「魔女様、あと30分程で支度が完了します」
「わかったわ、終わったら私に伝えて」
「わかりました」
彼の運命が廻りはじめる
終わった後に描きたいことが増えていく
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