2話 エルフの女性
小説って難しいね
「朝か…」
テントの入口の隙間から朝日が入り込んでくる
「今日も戦争か…」
重い瞼を無理やり開ける、食料不足の為朝ごはんはない
「昔の生活に比べればまぁマシか」
速く準備をしなければ、今日は…
「今日は昨日のエルフの里の生き残りを探す!全員エルフを見つけ次第ころせ!」
上官の野太い声が辺りに響く
なぜこんなにもエルフに固執するのか
それはエルフは魔法適正が高い者が多いからである
東側諸国は未来の魔法使いの卵を少しでも減らすため
この作戦に打って出たらしい
「奴らは森の北側に逃げた痕跡がある!全員北側を手分けして探すんだ!」
おいおいマジかよ
北側って言っても相当広いぞ…
ざわめきが辺りに広がる
(さすがに皆疲弊してきてるな…)
(まぁ無理もない、ここにいるもほとんどの兵士が年若く訓練もまともに受けていない者もいる)
(東側は魔法がないから兵の数で勝つしかないからな…)
「そろそろ西側の兵達が今日の夕頃に付くという報告があった」
「我々は迅速にエルフを排除し帰投する」
「各員配置に付け!!」
「さぁ…どうしようか」
僕は北側に残されたエルフ達を逃がす方法を考えていた
「昨日は夜だったから逃がしやすかったけど…今日は時間がなぁ…」
「エルフはこっちか」
気配がする
エルフ特有の魔力
………あっちか
助けなきゃ…
魔力を感じた地点から2キロ程離れた大きな木下から魔力を感じた
そこには…
「止まれ!!」
僕がたどり着いた先にはエルフの女性がいた。美しい金髪の長髪、翡翠色の目には強い意志を感じさせる。手にはナイフ背中には弓が携えておりこちらを警戒している
「大丈夫です。僕は…」
「来るな!!それ以上来たら殺す!!」
正常な反応だ、こんなことを2ヶ月もしてればこういうことにも慣れてくる
「僕はあなたを助けたい」
思いを伝える
「嘘を付くなっ!!その首このナイフで切り裂いてやる!!」
よく見ると女性は足を怪我していた。恐らく逃げてきた時に怪我をしたのだろう
「怪我を見せてください」
「!? 何をッ!」
「良かった骨折はしていない…これなら縛るだけで…」
その時ナイフが首に突きつけられた
「それ以上私に触れたら殺す」
彼女の声はとても鋭く意志を感じるものだった
「僕はあなたを助けたい」
「嘘をつくな!」
彼女の言葉を無視して話を進める
「いいですか。もう1キロ圏内に東側の兵士が来ま
す、ですから大きな声も出さないですぐに逃げてください」
「そんな話信じられるとでも…」
僕は彼女に全員では無いけども1部のエルフ達は逃げ切ったことを教えた
「まさか…いや…ほんとに?」
「えぇ本当です」
「な、なぜお前は我々を助ける?」
この問いにも何度答えたか分からない
でも僕の答えは変わらない
「助けたいからです」
そうただそれだけだ
「歩けますか?」
「あ、あぁ…何とか…ウグッ」
立ち上がろうとした時彼女は足から崩れ落ちた
「痛そうですね。途中まで送ります」
彼女は拒否しようとしたが、この状況では頼らざるを得なかった
肩に腕を回し森を歩く2人がいる
1人は美しいエルフ
もう1人は東側の兵士
彼らは今
敵からの追っ手から逃げている
おい!!こっちだ!!
探せ!!
裏切り者が!!
「しくったなぁ…」
遡ること1時間前
「ねぇ」
「どうしました?」
彼女は小さな声で質問をしてきた
「あなたこんなことして大丈夫なの?」
「言ったじゃないですか、助けたいからです」
「それだけじゃ理由が薄いじゃない」
「僕にはその理由だけで十分なんです」
エルフの女性は諦めたように「そう」と言って話をやめた
無言の時間が続く、木々が風に揺れる、草花が香る
まるで戦争などないかのような時間が過ぎる
「この速さなら追いつかれないと思います」
「ありがとう、ここまでで大丈夫だ」
「わかりました」
この人を最後まで送りたいがこれ以上着いていってしまうと仲間に怪しまれてしまう
「そうだ、せめて最後に名前を…」
おい!そこで何をしている!
しくった
思ったより東側の動きが速かった
これは…
エルフを見つけたぞ!!裏切り者も一緒だ!!
まずいな
はぁ…はぁ…
森の中を翔ける
なぜ敵の動きがこんなにも速いのか
今そんなことを考えても何もならない
おいこっちだ!!
兵士の声が近づいてくる
もう時期に追いつかれる
「ハァ…ハァ…」
彼女の体力が限界だ
でも今はとにかく前にすすむしかない
「私を置いていけばお前はまだ助かるかも知らないぞ」
彼女は息を荒くしながら聞いてきた
「僕はもう敵を助けた裏切り者です。今更逃げても時期に殺されるでしょう」
それに
「あなたを見捨てるなんてありえない」
彼女は笑いながら言った
「お前はバカだな」
まだ日は高い、夕頃の西側兵士が来るのを待つのは不可能
どんどん逃げ道が塞がれていく
その状況の中でも
神は僕らに微笑まない
川が目の前に現れた
いや崖と言って方が正しいだろうか
高さは10mはあるだろう
その下を川が通っている
「詰みか」
僕らは苦虫を噛み締めたような顔をしているだろう
すぐそこまで敵は来ている
逃げ場所はもうない
その時
「危ない!!」
崖が崩れた
僕と女性は川に落ちた
僕は彼女に手を伸ばした
彼女の美しい髪に触れたところまでは覚えている
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