12話 処刑2
眠い
「お前ら明日ここで処刑される」
ん?
「とりあえずお前らを今から地下牢に案内する」
話が分からない
「明日の朝までそこで待機してもらう」
ますます話が分からない
「こっちだ」
兵士が紐を引っ張り重くなった足を無理やり動かしてくる。
え?処刑?
思考がまとまらない僕を置いて兵士は処刑場に隣接された3階建てほどの石造りの建物の中に案内される。
中に入ると地下に続く階段が見えてきた。
「地下牢はこの下だ、明日までそこに待機しろ」
兵士が鉄格子と石で出来た独房のような牢に1人づつ閉じ込めていく。
「余計な真似はするなよ」
そういうと兵士は先程降ってきた階段を登っていった。
「しくったなぁ…」
正直言ってもう手がない、これに関しては流石に詰みだ。
「どうしようもできないよなぁ…」
周りの音に耳を澄ましてみると啜り泣く声や鉄格子が震える音が聞こえてくる。
どうしようもない現実ともたれかかっている石壁の冷たさが体にしみ渡る。
「あんなでかい口叩いた途端にこの様かぁ…」
まだやり残したことはあるけど悪くない人生だった。
「色んなことがあったよなぁ…」
孤児院での日々は大変だった、お風呂や着替えもなくベッドはボロボロで…
物心ついた時にはもう働いていたな、低い賃金で雇われて国のためだのなんだの言われて…
「そういえば…妹はどうしてるんだろう」
血は繋がっていないが脳裏に「お兄ちゃん」とぼくのこと慕ってくれた黒髪の女の子が浮かぶ。
「あの娘とも徴兵された顔を見せてあげれなかったな」
東側に徴兵されてから家に帰らせてはくれない癖に訓練の途中でで戦場に駆り出されて、人を助ける決意をして…
クシェルにも出会ってステラさんにも出会って…
本当に…
「悪くない人生だった」
まだやりたいことがある。
だとしても自分がやってきたことに悔いはない。
「寝るか」
僕は瞳を閉じ今までの出来事を振り返りながらゆっくりと眠りについた。
ザーと激しい雨音が聞こえてくる。
「生きる…あ…」
あぁ…この夢か…
「さい…の…時ま…」
女性のような声が聞こえてくる。
いつもと同じように目は見えない
「頑張ってね」
女性の表情は分からないけど
どこか悲しそうな声だった。
この夢もこれで最後か…
「う〜ん…」
意識が少しづつ覚醒してくると、石畳のほんのりとした冷たさが身体中に伝わってきた。
「今どれ位だ…」
牢の外を覗いてみると外に続いている階段から仄かに光が差していた。
「朝が近いな」
結局この夢のことは分からずじまいだったな。
まぁただの変な夢だし気にしないでおこう。
「処刑…か…」
そう、今日僕は死ぬ。
「覚悟はできている」
暫く経つと昨日僕らが降りてきた階段から誰が近づいて来ているのがわかった。
「おい、起きろ」
兵士の声が地下牢中に響く。
頑張らなきゃ