9話 捕虜
寝み、これから忙しくなんのにつれぇ
リアムとクシェルはステラおばさんに連れられて外にある広場に来た。村人全員が集まっているようだったが、よく見るとエルフの人達も集まっている。しばらくすると重そうな装備を着ている兵士が必要な物資について喋り始めた。
「我々は明日エルトリア王国へと4日間かけて帰還する。そのため食糧と水を分けて欲しい」
「必要な物と量は、ここの紙に記してある。全員で確認し明日の昼までに揃えて欲しい」
と、広場にいる全員がその紙を中心に寄ってくる。
「こ、こんなに!?」
「こんな量…村の備蓄がなくなってしまうわ!!」
「水ならまだしもさすがにこれは…」
皆突きつけられた物資の量に驚いている様だった
「それでは頼んだぞ」
兵士は村人の愚痴をまるで聞こえていないかのように紙を押し付けて臨時のテントに帰って行った
数分後
「んで僕らはジャガイモを運んでいると」
「なんで私たちがこんなことをしなくては行けないんだ!」
リアムとクシェルは軍に要求された食糧を軍の荷馬車に運んでいる最中だった
「仕方ないよ、居座らせて貰ってる身なんだから」
「しかしだなあんな量、普通要求するか?」
クシェルが愚痴を漏らしながら歩く
「確かに食糧の量と兵の数が合ってない気もするけど…」
喋っているうちに軍のテントが並んでいる空き地にたどり着いた
「荷馬車が多いな、どの荷馬車だろう」
よく見ると荷馬車が見えるだけで10台はある
「この荷馬車か?」
とクシェルが荷馬車の幌をあげる、するとそこには…
「これは…」
手足が縄で縛られた若い少年達がいた。数は15.6人はいるだろう、彼らは幌をあげたクシェルと必然的に目が合う。
「し、失礼した」
さすがのクシェルも気まずそうな表情を浮かべた。
クシェルが幌を下げようとした時…
「お、おい!!アイツ裏切り者じゃねぇか!?」
「ホントだ!!なんでここにいるんだよ!!」
すると少年達はクシェルの後ろに視線を向ける。
(まずい…)
リアムは咄嗟に視線を逸らす。
「お、お前、死んだんじゃなかったのか!?」
キャンプ場に歳若き声が響き渡る。
(まずい…このままじゃエルトリアの兵士が…)
と、思考巡らせたその瞬間
「おい!!うるさいぞ!!捕虜が騒ぐな!!」
(気づかれた…ッ!)
案の定、エルトリアの兵士が駆けつけてきた
「何があった!!」
「こいつ俺らの大隊いたやつなんです!」
「こいつも俺たちと一緒の隊にいました!」
少年達が指さす方向にいるリアムに兵士は視線を向ける
「それは本当か」
「はい!間違いありません!」
「お前のような存在が何故ここにいるかはわからんが、お前も捕虜になってもらう」
すると兵士はリアムの方向へ歩き出すが、その眼前にクシェルが立ちはだかる
「この人は無関係だ」
「やめろ、邪魔をするな」
「でも…」
クシェルが言葉を発しようとした時後ろから囁く声が聞こえてきた
(クシェル…大丈夫…君が庇う必要はない…)
少し後ろを振り返り小さな声で語りかけてくるリアムの様子を見た
(覚悟はしていた…君が庇えばエルフの人達が悲しんでしまう…それに)
クシェルは彼の言うことに耳を傾ける
「僕が救った命を無駄にしないでくれ」
彼は少し潤んだ金色の瞳でクシェルを見つめた
(そう言われてしまったら…何も言い返せないじゃないか…)
クシェルはそっと横へ逸れた、歩みを止めていた兵士がリアムの前へとたどり着く
「お前を捕虜とする」
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