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ハマったVTuberが義妹だと知ってしまったので、本人に聞こうとしたところ、チャットコメントを本名で残していたことを思い出し、恥ずかしくて聞けなくなってしまったのだが

作者: 夜炎 伯空

「……ハマっていたVTuberのルミナが、まさか義妹の瑠衣歌るいかだったなんて……」



 僕の名前は神代洞夜かみしろとうや

 漫研サークルに入っている大学二年生。

 

 義妹の瑠衣歌は高校二年生。

 昔は従兄妹いとこだったのだが、瑠衣歌の両親に不幸があった後、家族に加わり、今は義理の妹として一緒に住んでいる。


 当時、僕は学業のかたわら、趣味の延長で似顔絵のイラストをネットで描いて、こづかい稼ぎをしていた。

 本当は漫画家を目指していたのだが、絵を描くスピードが遅いことに挫折して、イラストを描いたり、小説をネット投稿したりすることで気持ちに折り合いをつけていた。


 一年前、似顔絵イラストの依頼で、


『妹系VTuberになりたいので、イラストを描いてもらえませんか?』


 という依頼があった。


 ちょうど、その頃、VTuber用のイラストを描くことに興味があった僕は、


『VTuber用のイラストは初めて描きますので期待に応えることは出来ないかもしれませんが、それでもよろしければ描かせてもらいます』


 と返信をすると、


『はい、大丈夫です。楽しみにしています』


 と返信があった。


 似顔絵イラストを描くために、写真を送ってもらおうとしたのだが。


『もし妹さんがいれば、その妹さんに似たキャラを描いてもらえませんか?』


 そうお願いされたので、キャラクターの参考にするだけだし、もしバレたとしても、それくらいで怒らないだろうと思って、瑠衣歌に似せたキャラクターを作成することにした。


 まず、VTuber作成用のソフトをダウンロードして、使い方も一生懸命に調べたりと時間はかかったけど、何とかキャラクターを描き上げた。

 もちろん、今の方が上手に描ける自信はあるのだが、苦労してVTuberのキャラクターを初めて描いたので、ルミナは僕にとってもとても想い出深いキャラクターになった。


 そんな想いがこもったキャラクターだっただけに、VTuberのルミナにハマるのにそう日はかからなかった。

 そして、そのキャラクターを作った本人ということもあり、僕はルミナの最初のファンとなった。


 初めての配信の日からずっと応援してきて、今では人気のVTuberになったのだが、


「トウヤさん、いつも来てくれてありがとうございます。嬉しいです」


 と言って、僕のチャットコメントには毎回返事をしてくれていた。


 逢うことはないけど、名前を覚えてもらえるくらいには、ルミカと特別な関係が築けた。


 ……そう思っていたのに……

 

 今日、僕はそのVTuberが瑠衣歌だったということを知ってしまった。



 両親が出かけているので、今日は広々としたリビングで配信を見ようと、瑠衣歌の部屋の前をノートパソコンを持ちながら通過しようとした時、部屋の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 ルミナが話している内容と部屋から聞こえてくる話が完全に一致している。


「あれ? ルミナの声が部屋から聞こえてくるんだけど、もしかして瑠衣歌も配信を見てるのか?」


 瑠衣歌は僕がルミナのファンだということを知っているので、その時は同じ配信を見ているのだと思った。

 しかし、立ち止まってルミナの声を聞いていると、目の前にあるパソコンから聞こえる声よりも部屋から聞こえてくる声の方が早い。


 それに声色は変えているが、瑠衣歌が話しているかもしれないと疑って聞いてみると、ところどころ、瑠衣歌の普段の声も混じっていた。

 僕は信じられないと思いながらも気になる気持ちを抑えられず、部屋のドアの前で声を聞きながら配信を見続けた。


 配信を最後まで見た僕の感想。


 ……ルミナの前世(中の人)は瑠衣歌で間違いない……


 僕はルミナの前世(中の人)が瑠衣歌であると確信した。


 ◇


「……あれ、お兄ちゃん、今日はここでルミナの配信を見てたの?」


 リビングで放心状態になっている僕に瑠衣歌が声をかけてきた。


「……ああ、たまには、広々としたリビングで見たいと思って……」


 ……これって、ハマっていたVTuberルミナの中の人が目の前にいるってことだよな……

 

 僕は瑠衣歌の顔を見ながら、胸中でそう呟いた。


「な、なに、じっと私の顔を見て? 顔に何かついてる??」


「……ごめん、ちょっと考え事してて……」


「そうなの? ……調子悪そうだけど、大丈夫……」


「身体は大丈夫だけど……。……あのさ……」


 瑠衣歌にVTuberを始めた理由を聞きたいと思ったのだが、ふと、チャットコメントを本名でしていたことを思い出す。

 

 ……今までのルミナとのやり取りを考えると、恥ずかしくて聞けないな……


「……どうしたの?」


「あ、やっぱ、何でもないや……」


「……お兄ちゃん、疲れてるみたいし、部屋で休んだ方がいいよ……」


「ありがとう、そうするよ」



 ドサッ!


 僕はベッドに倒れ込んだ。


「……瑠衣歌の言動げんどうを思い返すと、確かに違和感はあったんだよな……」


 漫画やアニメの二次元キャラにハマっていた時は、相変わらずキモイねって言われたのに、ルミナの配信を見ていることを知った時は、


「……ふーん、そのVTuber好きなの?」


 と聞いてきたので、少し不思議に思っていた。


「ルミナのゲーム実況も、昔一緒にやってたゲームが多かったしなぁ……」


 僕がサブカルチャーにハマっているのを嫌ってると思ってたんだけど、いつの間に瑠衣歌も好きになってたんだ?


「まあ、一人で考えていても答えが出るわけじゃないし、明日、癒貴音ゆきねにでも聞いてみるか……」


 幼馴染の癒貴音に聞いた方が、答えにたどり着くのが早そうだ。

 そう結論づけた後、色々あって疲れた脳を休めるため、僕は眠りについた。


 ◇


「……ということが判明したんだよ」


 同じ大学に向かっている通学中、ハマってるVTuberルミナの前世(中の人)が、瑠衣歌だったということを癒貴音と共有した。


「……で、一年半前に幼馴染を振った洞夜は、私からどんな答えを聞きたいわけ?」


 高校の卒業式の後に、僕は癒貴音から告白された。

 癒貴音は穏和な性格で、リアルでもモテるくらい可愛い顔(自分は毎日見ていたので気がつかなかった)をしている。


 そんな癒貴音が、僕のことを好きだったなんて、今でも信じられないのだが……


「ま、まだ根に持ってるのか……」


「……ご、ごめん、今は二次元の恋愛にしか興味がないんだ……、だったかな?」


 告白を断った時の台詞セリフを真似された。

 

「うっ、あれは、癒貴音に魅力がないとかじゃなくて、あの時は本当にそう思ってたから……」


 必死に言い訳する。


「まあ、洞夜らしいといえば洞夜らしい返事だったけどさ……。……最近は、VTuberにハマってたから、少しは前進したのかなぁって思ってだんだけど……。まさか、ルミナの正体が瑠衣歌ちゃんだったなんてね……」


「そうなんだよ。僕もビックリしたよ」


「……その手があったか……」


「え、何か言った?」


 小声で聞き取れなかった。


「ううん、独り言」


 ……あれ、癒貴音さん、ちょっと怒ってます?

 よく分からないけど、話を戻した方がよさそうだ……


「それで、癒貴音に相談すれば、瑠衣歌がVTuberになった理由が分かるんじゃないかと思って……」


「……そうね……。私にはその理由が分かったわ……」


「さ、さすが、癒貴音さん、ぜひ、そのお答えご教示くださいませんか?」


「どうして、急に敬語。でも、私がその答えを教えるわけにはいかないわ……」


「え、そうなの?」


「……敬語から戻すの早くない? そう、それは、洞夜が気がつくか、瑠衣歌ちゃんから聞かないといけないことだと思うから……」


「そっか、そういうことなら、答えは聞かない方がいいんだよな、きっと……」


「私はそうだと思う……。……ところで、もし私がVTuberになったら、れ直したりする可能性ってないのかな?」


「……惚れ直す?」


 ……あんなひどい告白の返事をしたのに、もしかして、こんな僕のことをまだ好きでいてくれてるのか?


「……惚れるとか、そういうのは分からないけど……。ちょっと見てみたいとは思うかな……」


 僕のことを好きだと言ってくれた人のVTuberとか、見てみたいに決まっている。


「あ、そうなんだ……。……そっか、そっか……」


 癒貴音はそう言いながらうなずいた後、しばらくの間、何か独り言を呟いていた。


 ◇


「ああ、お兄ちゃん、好き、大好き!! もう、ずっと好き!!」


 最近、お兄ちゃんとあまり話ができていなかったけど、今日は、久しぶりにお兄ちゃんとたくさん話をすることができた。

 話したことを思い出しながら、ベッドの上でお兄ちゃんからもらった抱き枕を強く抱きしめて、何度もゴロゴロする。

 

「……それにしても……。お兄ちゃんの今日のあの反応は、どういう意味だったんだろう……」


 ……もしかして、ルミナの前世(中の人)が私だって、お兄ちゃんにバレた?


「私は、別にそれでも構わないんだけど……」


 ゆき姉からお兄ちゃんに振られた理由を聞いた時、正直、私が告白しても同じ結果になると思った。

 そこで考え抜いた結果、私が二次元に近づくしかないと思い、VTuberになることを決意した。


「……まさか、あそこまでお兄ちゃんがルミナのファンになってくれるとは思わなかったな……」


 なるべく、表には出さないようにしていたけど、お兄ちゃんからチャットコメントをもらう度に、実はテンションが爆上がりしていた。

 最初の目標から考えると、予想以上の前進。


「でも、ルミナの前世(中の人)が私だと分かったら、お兄ちゃんは、きっとショックを受けるよね……」


 前世(中の人)がバレたとしても、私は構わない。

 だけど、ルミナの前世(中の人)が義妹の私だと知ってしまうことは、お兄ちゃんにとっては酷こくなことだろう。


「……やっぱり、バレないようにしないと……」


 それに、VTuberルミナとしてだけど……



 ………ようやくお兄ちゃんにとって特別な人になれたんだから………

最後まで読んでいただきありがとうございます!!

連載小説のプロローグをイメージして書きました。


評価が多いと続きを書きたくなる気持ちになりやすいので、もし続きを書いて欲しいと思った方がいましたら、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をよろしくお願いします。

もちろんブックマークも嬉しいです!


感想も気軽に書いていただければと思います。


今年最後の作品です。

来年もよろしくお願いします。


『ハマったVTuberが義妹だと知ってしまったので幼馴染に相談したところ、幼馴染もVTuberをしてみたいという話になって、二次元にしか興味がなかったはずの僕の心がかき乱される』


というタイトルで連載小説の投稿を始めました!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです!! 個人的に一番好きかもしれないですw 次の作品も楽しみにしてます。
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