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Interlude-1*封印と幽霊
私は『図書室の白い猫』である。
ずっと絵画の中へ封印された『白い猫』。
額縁に刻まれた封印のスペルはとても強固だから、私はまったく動けない。その月日、幾霜月。
目眩がするくらい長い時間が流れ、だんだん魔法は人々の中から消えていった。
魔法は信じられなくなってしまったけど、私の封印は解けなかった。
魔法は信じられなくなってしまったから、私の封印は解かれなかった。
封印された当初は助けを求めて、私は叫んだ。
━━この先の……に、私はいる。
━━早くしないと、……が捕まってしまう。
━━私は彼女を助けにいかなければならないんだ! お願いだ、早く、ここから、出してくれ!
当初、私の叫びは届いた。魔法が人々の意識の中に存在していたから。魔法を操る能力を持つ限られた人にだけ、だけど。
絵画に閉封印された人物は、災厄を起こす悪魔の代理人。だから正しい魔法使いが、正しくない人物を絵画に封じ込める。
私は悪魔の代理人だから、私の声が届いても、きこえた人は怯え、怖れ、耳を塞ぐ。
いつしか私の声は、図書室の幽霊の声となったのである。