Epilogue*終わりの炎
私は図書室の猫である。
名前は……アイザック、やっと思い出した。
でも、リアにはザックと名乗ったからこれからはザックにしよう。
私は、図書室の猫の絵画の中に封じられた二百年前のこの国の王子であり魔法使いであった。
二百年ずっとこの猫のままで死んだように生きていて、そのまま朽ちていくものだと信じていた。
だが、金の瞳の娘が私を解放した。
不完全な体だけれど、クリスティーンとファビアンのいない二百年後の世界に蘇ったのだった。
二百年後の世界に戻ったのはいいが、私は混乱した。
誰ひとり、私を知る人がいないのだから。
絵画の中でも、孤独だった。
絵画の外でも、孤独である。
絵画の中では、腹は減らなかった。
絵画の外では、腹が減る。
どんな状況になっても、人間は腹が減り、眠る場所が必要である。
どんなに嘆き悲しんでも、人間は腹が減り、眠る場所が必要である。
解放されたけど、体が中途半端だから
解放されたけど、知る人はいないから
解放されたけど、このまま朽ちていってもいいかと思っていた。
それを覆したのは、人間とエルフのハーフのリアだった。
クリスティーンへの未練を断ち切れたのは、リアのおかげだった。
ファビアンへの恨みを浄化できたのも、リアのおかげであった。
彼女の中に、生きるという本質を見つけたような気がする。
適当な頃合いで消えようと思ったが、
そう死に急ぐこともないだろう。
もう少し、この二百年後の世界を楽しんでみようか、
せっかく、ともに歩むいい相棒が見つかったのだから。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
すっかりお尋ね者となってしまったリアとザックですが、喧嘩しながらも楽しくやっていそうです。
魔法の要素の入ったお話はこの作品がはじめてとなります。なかなか難しくて苦労しましたが、書き終えた今は、いい思い出です。
お話はここで終了となります、楽しんでいただければ何よりです。