Interlude-3*恋慕の指輪
オレンジ色の目をしたエルフがやってきて、こうささやいた。
━━よう、……ザック。クリスティーンとはうまくいったんだってな。
━━うるさい、あっちへいけ! お前など、用はない。
━━へへん、ずいぶん嫌われたものだなぁ~
私は魔力が強いから、エルフが勝手に集まってくる。
奴らは寂しがり屋だから、悪戯好きだから、無責任だから、自分たちの姿がみえる魔法使いのところまでやってきて、勝手に願いをでっち上げ、勝手なことをして、勝手に消えていく。
━━なんだよ、せっかくお祝いをしてやろうっていうのに、ひどいいい様だ。
━━お前らのお祝いなど、ろくなことがない。とっと消えろ、私の前に現れるんじゃない。
━━まぁそういうなって、あとできっとおいらに感謝するんだからな!
そういって、奴は勝手にクリスティーンに贈る指輪に魔法をかけた。
エルフの魔法がかかった指輪、これを嵌めてもらった人は、指輪を嵌めたくれた人を好きになるという。無条件で。
愛し合う恋人同士が使えば強固な絆となり、永遠の愛が存続する。幸運の恋慕の指輪。
片恋する人が使えばその魔法は呪縛となり、永遠の隷属が強要される。不幸の恋慕の指輪。
こんな恋慕の指輪は、王家で代々、重宝された。
愛し合うものが王と王妃ならば、ふたりの絆が強まって国はひとつにまとまり繁栄する。
愛し合っているとは限らない政略結婚の王と王妃だって、ふたりの絆を深めることができた。なぜなら、贈られた方は絶対に贈り主を愛してしまうのだから。無条件で。
禍々しい功罪とともに恋慕の指輪が、王家の家宝となるのは当然だ。
━━その指輪は、おいらの魔力に……ザックの魔力が加わった最高の品だぜ!
━━やめろ! そんなものに頼りはしない。さっさと退散しろ!
━━おお怖い! まぁいいさ、消えてやるよ、あばよ、……ザック、エルフの加護があらんことを、だ!
エルフは寂しがり屋だから、悪戯好きだから、無責任だから、私のところで、勝手に願いをでっち上げ、勝手なことをして、勝手に消えていったのだった。