幸福以外のなんでもない
無事生放送も終わりやっとエリシアと食べるのを再開した。
「ケーキ。ほら、あ~ん」
「えっ、あっ、いや……あーん?」
「うん。はい、あ~ん」
「ん……」
エリシアは結構の甘党だった。モール内をふらついていたらミシュランにも載ったこと
のあるケーキ、パフェなど多くのスイーツをそろえ全国チェーンの「スウィートスイー
ツ」を発見した。見つけた瞬間「ねえ、あの店この前友達に誘われていったんだけどお
いしーよ 甘いのいよね」なんて言っていた。俺も自分に甘いのに打ち勝つために甘い
ものをやめていたが今日だけは食べることにした。
「おいしい?」
「おいしいな。少し甘すぎるけど」
「その甘さが美味しんだよ」
「甘いのはエリシアな」
2度目の「あ~ん」をしようとしていた右手からケーキが落ちそうになる。俺はそれを
取りエリシアの口元に持っていく。
「食えよ。あ~ん」
カシャッ。横からカメラのシャッター音がした。いつの間に用意したのだろう? そこ
は流石の女子高生だ。
「食べろよ。食べさせられてばっかりだと甘くてもたれちまう」
「快君の・ば・か・」
「写真は後で送れよな。」
俺に「バカ」とか言いながらちゃんと「パクッ」と食べた。こんなセリフを言ってもら
えるのも少し前の俺じゃ想像もつかない。リア充していない時の俺に会えるならば「世
界はいつ何が起こるか分からないぞ」とでも言ってやりたい。
――このリア充、永遠続きますように――
その後、ショッピングモールを出た俺達はエリシアの提案でウィンドショッピングをす
ることになった。
「わ~‼ ステキだなぁ。着こなしが良すぎる」
「着付けてるのはプロだからな」
*余計なひと言を言う、俺。
ウィンドショッピングとは、実際には商品は買わずに展示してある服屋ものを見て楽
しむのだが……それの楽しさが男の俺にはどうしてもわからない。買うためのショッピ
ングなんだから買わなければ意味がないんじゃないか? なんて思ってもしまうがエリ
シアの笑顔に比べたらゴミ同然のことを考えているように思ってしまう。
グイッ――。力強く俺の服が引っ張られる……振り向くと転んでるエリシアがいる。
「こんななにもない所で転ぶな、ほら立てよ」
「えっ、いや……うーん」
「どうした?」
エリシアが俺の手を掴んだ。なんとなくエリシアが戸惑った理由も分かったかもしれな
い。さぁ、どうするか。
「どうした。顔赤くないか?」
「あっ、赤くないよ。全然!」
「全身真っ赤だぞ」
「――ッ。変態、想像したでしょ」
「全く。で、どうしたんだよ」
本当に顔が真っ赤だ。こんなエリシアは初めて見た。俺の理性的にもダメージ100パ
ーセント! 男を一人で落とせる可愛さだ。
やっと建ちあがろうとする。
「ねえ、手繋がない?」
「お、おう」
「初めてだね」
きずけば俺の手とエリシアの手は繋がれていた。ほんとエリシアはDAIGOのようだ。
他の事で気をそらせ気づけば他の事をしている。
それに驚いた。テレビで「あ~ん」も出来たエリシアが、手を繋ぐとなった瞬間思いっ
きり照れたのだ。俺の思い違いか? どちらにせよ俺はしあはせだからいい。
「ㇷㇷ。さらに新婚ぽくなったね。楽しい♪」
「途中らへん何て言った?」
「さらに恋人レベルが上がったね」
新婚て言ったような気がしたのは楽しすぎる俺の幻聴か? 勘違い? まっ、残りの時
間を楽しもう。
「ほら行くぞ」
自分から手を「ギュッ」っと若干力を入れてにぎり通りを走っていた。
「ありがとう!」
「エリシアの手、心か? すごく温かいな」
「そう? 心の優しさが手の温かさなら……私はとっくに、とっくに溶けちゃってと思
うよ」
お互いの手がさらに熱くなっていく。横を見ると神の隙間から覗くエリシアの耳が真っ
赤だ。俺も真っ赤なのだろう。
一日を振り返れば、ゲーセンや映画を見たりして楽しい一日だった。
「「あっ」」
気づけば家の近くの公園に来ていた。
「エリシア。ちょっと目をつぶってくれ」
「こう……? 歩くならちゃんとリードしてね」
「大丈夫だ」
俺はエリシアの手と肩を掴み公園に向かった。相変わらず今日もここは最高だ。
「目開けていいぞ」
「公園?」
「上を見てみろ」
「わぁ~! きれい」
「小さいころからお気に入りスポットだったんだ」
家から近いここは俺が保育園の時、家族でたまに夜空を見に来ていた場所だ。遠くには
高層ビル、周りには自然、空には星、1万ドルの夜景だ。もちろん100万ドルではな
い。100万ドルの夜景は、隣の彼女の幸せの笑みに決まってる。
「あっ、あれって……」
エリシアの指さす方向。その先には白い尾を出して上空を通過するもの。太陽の近くを
通過するときにだけ見る事が出来る。
「見れたな。すい星」
「快君って幸運の持ち主だね」
言われてみれば確かにそうなのかもしれない。その幸運が存在するのならば、今は「エ
リシアを幸せにできる値」であってほしい。エリシアとはまだ少ししか一緒にいない…
…だけどエリシアのいない日常が想像できない。
「あ~。あっとゆう間だった~‼」
そんな風に言いながら伸び伸びするエリシア。
「あぁ、ほんとに1日が速く感じるよ」
「時間が足りないよ~」
笑顔で同意してくれる。「時間が早く進む。1000年あっても足りない」とはその通り
だと思う。
もう辺りはすっかり暗くなり街頭が道を照らす。その光で照らされる道を2人で手を
つなぎながら歩いている。10分ぐらいで家についてしまうけど……その一瞬でさえ惜
しく感じてしまう。
「そうゆえばUFOキャッチャー上手かったね」
「そうか? ゲーセンなら友だとたまに行くし」
でも思い出せば中学背のころよく親に黙ってゲーセンに行っていた。初めて行ってUF
Oキャッチャーした時からお菓子を大量にとって持ち帰り親に怒られていた。
「え~。でも、狙った獲物は逃さない。みたいな感じ出てたよ」
確かにゲームの腕は良いのかもしれない。今でも近くを通った時は良く寄っているし。
お菓子なんか低下の値段で倍の量手に入るからな。
「映画も楽しかった! また行こうね♡」
振り返ってみれば二人の思うままに行動していた。計画を立てるのは逆に良くないのか
もしれない。
「着いた!」
「もうか」
貴重な10分も話しながら歩いていればあっとゆう間に過ぎてしまった。心なしか残念
そうなエリシア……それだけ楽しんでくれとゆう事だと思うし、個人的には嬉しく思っ
てしまう。
「あのね」
握られてる手に力がこもる。
「今日は本当に、本当に楽しかった。だから――」
「また行こうな。予定、また空けとくな」
俺はエリシアを近づけそっと抱いた。
「次も楽しみだよ」
「ほ、ほんと! 水着用意しなきゃ」
ほんのり顔を赤くするエリシアの次の目的地は海になっていた。暑い夏には最高のデー
トスポットだお思うし、水着姿も少し見てみたいかも。
家の前に俺たちの残像が残るように感じながらも手を放す。
「今日はほんとに楽しかった」
「私の方こそ一生の宝物」
そう言ってくれると今日1日楽しんだ甲斐があった。無垢な笑顔も近づいてきた……な
んで、近づいてくる?
「――――ッ」
「それじゃ」
頬にこの上なく柔らかく暖かい感触。解けていく理性――俺の思考回路がシャットダウ
ンした瞬間だった。「キス」してくれた……エリシアから俺に……。俺はラノベの主人公
のような展開が起きた後、安心して寝られるだろうか?
エリシアは今日一番の真っ赤な顔で勢いよく玄関に向かって行った。俺は呼び止めると
すらできそうにない。状況を理解するのに追いついても、その嬉しさのあまりなのか。
自分でもよく分からない感覚を肌で、心で感じながら呆然と立ち尽くし、時間が過ぎて
ゆくのを感じているだけだった。
残りの日はゲーム、テレビ、補習、で時間を使った。次戻ってくるのはいつなのだろ
うか?
時とは人間の感情を考慮しない。その時の感情が楽しく、嬉しく、辛く、悲しかろう
が、何かが憎い時でも。時の速さが異なるように感じても過ぎる時間は同じである。裏
を返せば、そうゆう概念が生まれるとゆう事は、良くも悪くも自分が感じている時間に
感情を抱いているとゆう事。
――エリシアとの時間はあまりにも短くて、
短くてほんとに一瞬であった。
まだ見ぬ先の未来、永遠の関係になれますように――




