限りなくゼロに近い距離
俺は台所に行き食材を取り出し切る。――――シャッ、シャッ。フライパンの中で野菜
の音を立てながら炒め、右手で卵を焼く。
数分後……
「よしっ。出来た」
やっと今日の昼食が出来た。思わず口に出してしまう。皿に盛り付け自分の部屋まで持
っていく。
「エリシア出来たぞー。おーい」
「んー。にゃにー?」
寝てたのか。せっかくお昼作ったし悪いけど起こすか……
「お昼で来たぞ。起きろ」
「あっ。ごめん寝ちゃった」
「俺こそ起こして悪かったな」
心配する必要はなかったな。
「全然! 何これ美味しそう。いった抱きま~す」
「そっちの抱くじゃないからな」
エリシアの冗談も面白い。正しくは「いっただきま~す」だからな。料理にくぎ付けの
リシアは、そんなことを考えてるうちにもどんどん食べている。次から次へと。
「凄い。全部美味しすぎる!」
「それは良かった。ありがとな」
俺自身はこんなに豪華にしないんだが、彼女が来てくれてるんだから腕を振るっただけ
だ。メニューは野菜炒め、オムレツ、フルーツジュース、果物である。料理するのは結
構好きで小さいころからよくやっている。
「今度買い物に行きたいんだけどおすすめの場所ある?」
「炊飯器や掃除機でも買うのか?」
「……なんで?」
エリシアは素直に驚いていた。
「引っ越して来たから新しいもの買うのかなと思っただけだぞ」
「JKがお店行って家電製品なんて買わないよ‼」
そうだよな。他に引っ越してきて買うものとなれば……
「そうか……。だとすれば道着とかか?」
「なんでそうなるの? 言うとしても、もっとJKっぽい理由は考えないの?」
「普通に女子高生ぽくないか。世の男から身を守るために道場に通うんじゃないのか」
「……ナンデソウナルノ?」
俺の知っている周りの女子はみんな護身術をやっている。とゆうのも、俺たちの通って
いる「松ヶ丘スクール」はお金持ちの人が多いせいか「イケ男美女」学校でもある。だ
から、狙われる女子も多くなりやすいわけだ。だから、結構の人が習ってる。その証拠
に周辺の教室でダントツトップなのが「護身術」だ。
「なるほど! 最初の発言は理解できないけど……まあ納得かな?」
「固定概念とは怖いものだな」
「哲学を語りだそうとする快斗君の方が怖いけどね」
分かりやすくドン引きするエリシア。
「せっかくだし今度の日曜。ショッピングセンター行くか?」
「嘘つかないよね?」
「こんな事で嘘つく必要はないぞ」
「やったぁ。デートできるんだね」
俺達は付き合っているのだからデートとゆう扱いになるのか。人生初の彼女との出会い
は異世界(ゲーム内)で、俺の学校に転校してきて、早速デート……ラノベの主人公的
な展開って現実でも起きるんだ。人生分からないものだ。
「なあ、えりしあ。これからも今日みたいになるのか?」
「やだった? 私の事もしかして嫌いになっちゃった?」
そうじゃないんだな。流石にあそこまで学校でされると要注意生徒にされかねないし。
周りにはリア充も憶いるけど、露骨ぬやりすぎない方が良い気がするのだ。
「俺たちが付き合っているのはもうばれたと思うんだ。」
「そっか! 転校してきたばかりの私をなぜ知っているのかも聞かれるね」
勝手にいい方向うに理解してくれるエリシア。それも考えなきゃいけない。他にもいろ
いろ考えなきゃいけないことだらけだった。そのあとも、今日は二人でいろいろ話して
お開きにした。
「家まで送ってくよ」
「えっ! そんな事までしてくれるの」
「当たり前だ。こんな夜遅くに女子一人で歩かせれないよ」
「ほんと楽しいことばっかり」
心の底から思っているのだろう、顔にそれが笑顔として表れている気がする。靴を履き
終えたエリシアからローファー独特の音がする。
「快斗君、行こう」
「そうだな」
俺も靴を履き玄関を後にした。周りには家があるが、俺の内の前の道路のから見る景色
は一番いい。東には綺麗なまん丸の形をした月があり、西の空では日が沈み始め、待っ
ていたかのように一面がオレンジに染まり始める。
今日最後のサプライズ。今後の事はさっき二人で話して決めたことだが……男としての
けじめを付けないではいられない。
「エ、エリシア。改めてだけど、これからもよろしくお願いします」
「ほんと改めてだね。でも、こちらこそ末永くお願いします。」
俺達は手をつなぎ、照れ隠しのように空を見上げていた。手は今繋いでるのに。今だけ
は俺もシャイニングハートなんてどうでもよかった、それ以上にうれしいから。
「「あ――っ」」
おもわず声が出た。空が夜の顔に変わろうとしている時、西の空が一瞬エメラルドグリ
ーン色に光った。……生きている間に見られるなんて思ってもいない「グリーンアイ」
たそがれ時に奇跡に近い確率でおこる現象。見ようとして見られるものではない。恋の
伝説ではカップルでそれを目にする事が出来たならば円満な夫婦になるだろうとまで言
われる。
「綺麗だね」
「ああ……。幸運すぎるな」
「ほんとだね。一生――いれると――ね」
最後になんて言ったんだろう。聞いても教えてくれなかった。たそがれ時の俺達は幸せ
な沈黙を保ちつつ西の空を見ていたのは確かだった。
しばらく歩いた。少し遠回りしたのだろうか。空が月と星の光だけになっていた。
「そろそろ着くか?」




