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ポインズの手記  作者: ポインズ
1/1

1stセッション

日付は不明確だが、ここに記しておこうと思う。サイファーくんが合流するまでの出来事だ

また、出来事や個人の発言も端折られていたり、改められているところがある。

あくまでも印象的な出来事を、ピックアップして、すこし肉付けしたものと思ってもらえれば幸いである。

 階段をドシドシと駆け上ってくる足音がした。その足音は毎朝のように聞いているので、もう聞きなれてしまった。だからその足音に怒りの感情を感じても、僕たちは朝の冷えた空気の、布団の外の世界へと出ることはない。


「ちょっと!いつまで寝てるのよ!」


 扉を勢いよく開けて、ソニアが叫ぶ。ソニアは僕たち四人が寝泊まりしているこの宿の娘で、僕たちの幼馴染だ。


「もう!ごはんできてるんだから、早く降りてきてよね!」


 彼女は十六歳にして、しっかり者だ。この"風見鶏亭"の看板娘をやっている。僕たちにこそ気性は荒いが、この村じゃ一番の美少女だ。


「あ~、ソラさん、下から僕の分のご飯も取ってきて・・・」


 ポインズが布団の中から床に敷いた布団に寝ているソラに向かって声をかける。


「えぇ~・・・部屋で食べようとなんかしたらソニアになんていわれるか・・・」

「いいなぁそれ、俺もちょっと今日は布団から出るのが億劫で・・・ソラ、俺の分も頼んだ」


 乗り気ではないソラに対して、ジョンも布団から眠そうな声を上げる。


「馬鹿なこと言ってないで、さっさといくぞ」

「なんだよゲルデ、お前だってさっきまで寝てて、寝坊なのは一緒じゃないか、まじめぶりやがってよ~」

「ジョン、僕たちのパーティのなかで唯一学者でもある君がそんなんでどうするんだよ・・・」

「いいのいいの、俺は面白そうだなーっておもって学んでるだけなんだから」

「はぁ・・・俺は先に行って食べてるぞ」


 ゲルデはジョンにそう行って部屋から出て行った。

 ちなみに、ゲルデは神官戦士、ジョンは学者戦士、ソラさんはただの戦士、僕は魔導士神官だ。特に意味はないが書き記しておくことにする。


 それからはしばらく静寂があった。もう一度布団の温もりに幸福を感じながら目を閉じる。


 ドタドタドタドタ


「は!や!く!し!て!」


 ソニアが俺たちの布団を無理やりはがすまでは。


 ────────────────────────────────────



 僕たち四人、ジョン・ゲルデ・ポインズ・ソラは戦争孤児だ。どの戦争なのかも、詳しいことはしらない、ただ親無しで、この村のみんなに温かく育てられた。それだけが事実だ。


 冒険者を志して剣を振ったり、森歩きを練習したり、魔法の勉強をしたり、ほかにも戦争孤児がこの町にいたが、僕たち四人はなんとなく馬が合って、パーティを組んでいた。といってもこの村にやる仕事なんて特にないんだけど。


 その日も、村の村長"ジョエル"じいさんの愛犬の散歩を四人でしていたところだ。ジョエルじいさんは俺たちを本当の孫のように思っていて、散歩を、腰を痛めた自分の代わりに行ってもらう労働、という建前で僕たちの食事代や宿代を賄っていてくれている人だ。


 僕は四人の中では最年少だが、物心がついた時にはじいさんの手伝いをして、村の人たちの手伝いをして、そんな日々を今日まで続けてきた。そんな人生だった。


 その日も僕たちは散歩をしていた。だけどその日はいつもと違った。


「キャラバンがきたぞおォッ!!!」


 村の東の入り口の方からそんな大声が聞こえた。この村は小さな村で、鍛冶屋もなければ本屋も何もない、農業を営むためだけの村みたいなもんだ。


 だから本や嗜好品がこうして別の町や村から行商人たちの群れ"キャラバン"が来たときはお祭り騒ぎだ。僕たち四人も貯めたお小遣いで剣や、本をよく買っていた。だからその日も犬を引き連れたままキャラバンの方へと急いだ。




 村の入り口のほうへと向かうと、ちょうど最後尾の馬車が村の中へと入ってくるところだった。ひと際立派なもので、普通行商人たちの馬車には飾り付けなどはないのだが、貴族のように、その馬車には少し装飾が施されていた。


 その馬車が僕たちの目の前で止まり、四十代くらいの中肉中背の男がおりてきた。


「村長の家へ案内を頼む。****行商隊が来たと伝えてくれ」(名前は忘れた)

「・・あ。はい、わかりました」


 ソラが少し間を開けて返事をする。たしかに行商隊が来たらいつも駆け付けてはいたが、こんな人に急に話しかけられたのは初めてだったから、僕たちは少し動揺していた。


「それではこちらです」

「うむ」


 ソラさんが彼を先導し、それを追いかけようとしたとき、男が石を蹴っ飛ばした。


「ギャン!!!」


 その石はじいちゃんの犬へとすっ飛んで行ってぶつかった。


「ふん」


 それを見てもその男は鼻を鳴らすだけだった。




 俺たち四人はおそらくこう思ったはずだ。なんだ?こいつ?いま技と石を蹴ったよな・・・?意味が分からなすぎる。殺すか?と。

 まぁ結局のところは、意味が分からなすぎて、唖然としたままとりあえずじいさん家へと連れてった。今思うとなぜ僕たちはこの男に食って掛からなかったのか、よく覚えていない、だがそんなことがあったということを記録しておく。




 ────────────────────────────────────




 あのいけ好かないおっさんを村長宅へ案内し、ついでにじいちゃんに犬を返しといた。お小遣いをもらって、そのまま僕たちはキャラバンの方へと走った、が、特にめぼしいものもなかったので、僕たちは何も買わずにそのまま宿へと戻った。


 宿へ戻ると、宿主"オーリンブラス"のおっちゃんが僕たちに向かって手招きをしている。近づいてみると


「よう、お前ら。喜べ、仕事だ」

「仕事、ですか?」


 ソラが聞き返す


「んむ、ほれ、オスタッカーお前から言ってやれ」


 そういってオーリンブラスはカウンター席に座ってる恰幅のいいおじさん・・"オスタッカー"おじさんに顎をしゃくる


「よう、お前ら元気してるか」


 オスタッカーさんはバサリ村出身の行商人だ。僕たちの何度か話をしたことがあった。


「実は、首都パトライのほうに作物を送り届けたいんだがね、足を悪くしちゃって、代わりに送り届けてもらう人を探してるんだ。むろんお礼はきっちり払うし、作物ついでにそれを送るための馬と馬車、どっちも買い取ってもらう予定だから君達にはなんも迷惑をかけない。どうだろう、受けてくれないかな?」


 オスタッカーさんがそう口火を切る。


「うーん、首都パトライにですかー、それってどれくらいかかるもんなんですか?」


 ポインズが聞き返す。僕たち四人はあまりこの村を出たことがない、パトライは僕たちがいるファン王国の中でもかなりでかい都市だが、僕たちは行ったことがなかった。


「うーん、大体片道一週間くらいかな?この時期だと雨が降るかもしれないから、途中にあるでかい川が氾濫したりすれば、足止めをくらっちゃうけど」

「往復二週間かー」

「で、いくらくれるんですか?」


 僕とオスタッカーさんの会話にジョンも入ってくる。ジョンはかなり金にがめついほうだ、貯金も僕たちの中では一番ある。こういう節々で金にがめつい態度は村の女からは少し敬遠されているところがあるのを彼は知らない。


「1200ペニーで、どうかな?」

「!!!!!!」


 1200ペニー、それは大体、僕たち四人が60日は暮らしていけるほどのお金だ。正直言ってたかだか二週間首都へ赴いた程度でそんなにもらえるのは破格の申し出だった。


「「受けます!受けさせてください!」」


 僕とジョンが急いでそう答える。


「はは、そう言ってくれると思ったよ。ところで、それに付随してなんだがね、パトライのほうで募兵があるんだが、そっちもどうかね?」


「募兵・・・ですか?」


「パトライ、レイド、ロマール、ユラニアの四ヶ国の間にある森は知ってるかな?そこに蛮族たちが潜伏して、ゲリラ的にファン王国の行商隊を襲ったりしているんだが、それの討伐にパトライ公が名乗りを上げたんだ。蛮族たちは大体100人程度の規模らしいが、パトライ公はそれを数千という軍隊でつぶすつもりらしくてね。」


「100人程度をつぶすのに、こんな村でも募兵をかけるんですか?」


「いや、これはパトライ公がしてる募兵じゃなくて、首都の騎士、エドワードダルシッパ殿がかけている募集でね、大体予想されてる出兵期間が二か月なんだが、一人頭一ヵ月につき750ペニー・・・二ヵ月で四人だと、6000ペニ───」


「「「行きます!!!!!!」」」


 今度は三人の声がそろった。


「そんなに金金いってるなら、お前らマイリーを信仰するんじゃなくてチャ・ザでも信仰しろよ・・・」


 ぼそっとゲルデがそうつぶやいたのを、俺たちは無視した。


 こうして僕たちは行商隊について、オスタッカーさんの作物を首都の知人の元へと届けた後、ダルシッパ家という騎士の下で戦争に参加することが決まったのだった。


「それじゃあ、出発は翌朝だから、準備をしっかりしてきてね」

「「「「はーい」」」」


 オスタッカーさんから事の詳細を聞いて、僕たちはそのままソニアが用意してくれていた晩飯を食べる。


「戦争なんか、本当に行くの?」

「うん、久しぶりの仕事だし」


 ソニアが心配そうに僕たちを見るが、僕たちは合計7000を超えるペニーをどう使うか、そんなことしか考えていなかった。


「ふーん、そっか」


 あの時のソニアの表情は、くぐもっていたが、僕たちはそれに気づくことはなかった。




 ─────────────────────────────────



 翌朝、僕たちは荷物をまとめ、オスタッカーさんの馬車の作物と一緒に詰め込み、行商隊の一員として出発した。村のみんなは暖かく僕たちを送り出してくれて、少し泣きそうだった。


 これは出発して数時間後、昼食を取ろうと思って馬車の荷物を探ると、白いメモと麻袋に入った干し肉が入っているのを見つけた。


 "みんなへ、無事へ帰ってきてください ─ソニア"


 それを見て僕たち四人は思わず笑みをこぼした。


「さくっと蛮族なんか蹴散らして、もらった給料でソニアに髪留めでも買ってやるか」


 そう僕が呟くと


「馬鹿だなポインズ、そんな無駄遣いなんかしないほうがいいぜ」


 ジョンがいつものように守銭奴を披露するのだった。





 ────────────────────────────────────


 それから旅は順調に続いて、三日目までは何もなかった。

 この行商隊には護衛の部隊もいるし、そもそもかなり大規模な行商隊なので盗賊や魔物は襲ってくることはない。だから馬を歩かせながら、横を適当に歩いて、首都へと向かうだけだ。


 だが、三日目の夜、一個前の馬車に乗ってた三十路ほどの男がニヤニヤしながら近づいてきてこういったのだ。


「すみません、ちょっとお話よろしいですか?」


 僕たちは焚火を囲って、芋を食べていたが、こういう面倒そうな人の対応はいつも最年長者のソラさんに任すことにしていた。


「はい?」


「あぁ、あなたがリーダーさんですか?」


「えぇっと、えぇ、まぁそうですかね?」


「ふーむ・・、して、お願いがあるのですが・・・・」


 男は北のほうの村からこの行商隊について、自身の村の作物を首都へと届ける途中だという。だが、思いのほか間の村々で、その作物が売れてしまったがために、品不足だというのだ。首都で作物を売ることができなければ、安定した供給ができない行商人とみなされてしまい、来年以降の商売に影響がでる。そこで僕たちの作物を買い取らせてもらいたいということだった。


「うーん、そうですか、でもこれはもう売る相手が決まっているので・・」

「そこを何とか・・・相場の倍・・・いや、三倍で買いますので!」


 相手がそう言った瞬間、ジョンの目が光った。だがソラがそれを制していう。


「いえ、そういうわけにはいきませんので。お引き取りください」

「・・・そうですか・・・チッ、物分かりの悪いガキどもが」


 急に男は態度をかえ、そう吐き捨てて自分の馬車のほうへ戻っていく。


「へー、驚いたなソラさん、あんなにきっぱりと物を断れるんだ」

「いや、まぁ・・・なんかダメな気がしたから・・・」


 ふだんソラは割となよなよしているほうだ、今回のことは少しだけ驚いた。

 だがジョンはそうもいかなかったらしい。


「なんだよ、相場の三倍っていってたぜ?あ~あ、損した、売ることが決まってるって言ったって、少しくらい分けてやるくらいよかったじゃねぇかよ、こんなにあるんだからよー」

「俺たちのリーダーが決めたことだ、それにやっぱりそういうのはよくない」


 ジョンが文句を言うが、ゲルデがそれをたしなめる。


「ふん!ま、いいけどよ、俺はもう寝るぜ」

「あぁ・・・でもあんなにきっぱり断っちゃって、なんか嫌がらせとかされなきゃいいけど・・・」


 そんな僕の心配をよそにして、次の日も特に何もなかった


 だが、代わりに雨が降り始めた。最初は優しくパラパラと落ちる程度だったが、昼を過ぎるころには、雨期の強い雨のように降り始め、日が沈む頃には風も吹き始めた。


 行商隊は一時停止して、近くの村に避難することに決まった。僕たちもその報告を受け、村へと向かうが、僕たちが村へ到着するころには、先に到着していた人たちがすでに宿を埋めてしまっていた。


 仕方がないので僕たちは村のはずれにある大きな木の根元に馬車を止め、中の作物をうまく隅に積み重ねて、中に入って雨をしのぐことにした。むろん濡れた服を乾かすこともできない、もっていた毛布にくるまって、なるべく風邪をひかないようにと努めた。


 そんな時、


「ハハ八!宿が取れなかったんですか、旅慣れていないガキはかわいそうだなぁッ!」


 と昨日の男が僕たちの馬車へと近づいてきたのだった。


「どうです?僕は宿の部屋をとっているんですが、少し広くてねぇ、四人くらいなら泊められるんですけど、作物を譲っていただけるというのであれば、考えないこともないですねぇ」


「・・・」


 いつも通りジョンの目は交渉を訴えていたが、ソラは断固として無視をするという態度をとった。僕も正直いってこのいけ好かない男としゃべるのは嫌だった。


「ふんっ!無視かよ!風邪でもひいちまいな!」


 そういって男は去っていった。昨日、あの男に作物を譲っていれば、僕たちは宿にありつけたかもしれない。今譲っていれば、風邪をひかずにすむのかもしれない。脳裏にそんなことを思い浮かべながら、いろんな選択肢があるもんだと感心していると。


「すみません・・・!すみません!!!」


 外からあのいけ好かない男とは別の、優しそうな人間の声が聞こえた。あいつじゃないのなら話は別だ。僕たちはソラさんに目配せをする。


「はい?なんでしょう」


 幕を開いてソラさんが応対すると、そこには若い男女がいるのが僕からも見えた。


「あぁ、よかった!どこの人も睨んでくるばかりで・・・お願いがあるのです!私たちは宿をとれなくて・・・でも、娘がいるんですが、娘は体が弱くて・・・あぁっ!その!とにかく、よければ娘だけでも馬車の中へ入れてやってくださいませんか!!」


 そういって、三歳か四歳か、馬車の荷台からでは見えなかったが、小さな女の子を抱えて男が懇願する。


「あぁ・・・・そういうことでしたら、どうぞ」


 ソラさんはそう言って馬車から降りて女の子をのせる。


「んーん!!パパとママは!?一緒がいい!」

「コラ!わがままを言うな!パパとママは・・・」

「あー、でしたら僕が「いえ、私たち二人は別で
















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