第二十話:「架空勇者戦記アセトアルデヒド」
夏が終わった。
正確には、夏休みが終わった。
高校球児が野球で敗退して夏が終わるように、
私たちもまた、夏休みが明けることによって夏が終わるのである。
平凡な夏休みであった。
要するに、甲子園優勝して夏が終わるような清々しい終わりではなかった。
宿題もまだ残っている。
私たちにとって夏休みとは一体何なのだろうか。
なんてことを考えて鬱になってみたりもする。
せいぜい起こった特異なことといえば。
あれだけだ。
冒険をした。
変な世界で。
今までにない夏の始まり方だったな、と思う。
終わるのも早かったが。
最後は特に酷かった。
一旦こっちに戻ってきたのにまた連れ戻された。
と思ったら、向こうの世界で私たちと一緒に旅をしたやつはいつの間にかこんなのありかよと言いたくなるくらいのパワーインフレをしてくれやがっていたのだ。
それで、魔王をそいつが一人で倒してくれちゃって、こっちは見ているだけだったのだ。
何のために私たちはいたんだ、と思った。
あれから、また紗希さんと会った。
その不満をぶつけた。
そしたら彼女はこう言ったのだ。
「私たちは見届けるためにいたのよ」
彼は自分の成長を見てほしかったのだ。
自分が変わったということを誰かに知ってほしかったのだ。
だから私たちは連れ戻された。
そう彼女は語った。
弟に対する拒絶は薄れていたようだった。
だが、金槌を常備していたことに関しては、見ていなかったことにしたい。
まとめる。
私はなぜあの世界に連れてこられたのか?
彼を変えるためだ。
ひきこもりで不登校のダメ人間である彼は、変わることを望んだ。
他人から影響を受けることを望んだ。
それのために作られた世界で、それをするために私たちは呼ばれた。
迷惑な話だと思う。
しかも任務の中には、成長を見届けるという条件付きだったのだ。
この条件は酷いことに最後まで語られることがなかった。
私たちはなんやかんやで、強制労働させられていたのである。
これは問題になるぞ。
問題にしたいけれど、どうすればいいのかわからないぞ。
とことんたちが悪い。
このままでは無駄なボランティアをさせられた気分だ。
ポジティブな解釈をしよう。
理由はともあれ何もない夏休みの彩りとなるべく、壮大な冒険をしたのだ。
これは小規模ながらも多少は偉大な記録なのだ。
ある人間が作りだした架空の世界で、旅をする勇者たちの戦いの記憶。
略して架空勇者戦記。
なんか、それっぽい。
戦記とか、そのあたり。
ただ、それだけだとインパクトにかける。
そうだ。
私たちは勇者軍団アセトアルデヒドとか名乗っていた。
調べてみたら、アセトアルデヒドは本当に酒に関する有害物質だった。
響きがいいだけじゃねえか、マジで。
と情報を得た時、低い声で呟いてしまった。
そう、それで。
それをくっつけよう。
架空勇者戦記アセトアルデヒド。
いいね。
わけのわからない響きだけのかっこよさがいい。
これなら。
こういうことにしておけば、有意義じゃなかったわけでもないように思える。
さて。
それはともかく。
夏が終わった。
終わったのだから、学校へ行かなくてはならない。
日常に戻るのだ。
私は架空の世界で勇者して戦記を残す人間ではもうないのだ。
優太とやらは学校に来るのだろうか。
来るんだろうな、たぶん。
以前会った時よりも酷いセクハラ魔になって。
丁度、ジカルマさんのようなセクハラ魔に。
もう勇者ではないけれど、
とりあえず、金槌は持っておいた方がよさそうだ。
以下あとがきです。
題してアセトアトガキ……
なにもうまくないので題さないでいきましょう。
この作品のカテゴリについて解説。
・異世界
我々から見た異世界、ではなく、少女たちから見て異世界が舞台、ということでした。
「そういう意味だったのだよ!」「な、なんだっry」
というためだけに序盤では少女たちの世界について全然語られません。
優太関連とか伏線張れまくりなのに、こっちを取るあたりあれです。ギャグ重視です。
・涙
下ネタの多さに下ネタ苦手な人が。
・シリアス
たまにあった気がしなくもない。
・コメディ
これメイン。超メイン。
というかこれが全て。
・ファンタジー
金槌でセクハラ魔を撃退するあたりがそうなんじゃないんですかね。
・冒険
作者もいろいろ冒険しました。
とみせかけて安全圏だと確信してやってます。えへ。
・魔法
もしかして余分な設定だったんじゃね?
まあいいや。
・架空戦記
戦記が架空なんじゃなくて、架空の舞台の戦記でしたオチ。
だからなんだと言われればそれまでさ!
・R15
「これだけのためにR15に設定しましたーーーーっ!!(←悲鳴)」
スカートめくり+この悲鳴。それだけのためです。マジで。
こういうしょうもないネタにも全力を出して取り組むことができる。
そんな人間になりたかったんです(綺麗事っぽいけど綺麗じゃない)。
そういうわけで下ネタが多かったりします。
最近ではそれが下ネタであるという認識が薄れています。危険。イエローピーポー呼ばれちゃう。
これだけがこの小説を書いた動機です。
むしろ、スカートめくり+悲鳴のためだけにこの小説が生まれたといっても過言ではないです。
あとがきといってもあれです。
ここまで見てくださった方には理解ができるとおり、ストーリーとか二の次です。
なので語ることがないのです。うわあ。
同時に反省点でもあり、次回は頑張りたいなあと思います。
それでは私の次回作に以下略。