表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人族なのに、魔物の王の王になってしまいました  作者: 星村直樹
良き隣人と虚ろな商人の王
38/43

左方の守り

 左方に向かわせたゴーレムは、体長が3メートル。サムライタイプのゴーレムだ。おれ、日本人だし、結構、時代劇ドラマ好きだったんで、士のイメージは、とてもしやすかった。おれが魔法剣士になったのもそれが影響している。つまり最強の剣士が作った士ゴーレムということだ。

 なにがすごいって、士は、剣が強いだけではダメなんだ。文武百般と言って、柔術も合気道もできるのが当たり前。抜剣、居合、兜割り、二刀流と、普通の剣だけでも強いのに、それに、ファンタジーLDの剣技まで加わって、ちょっと、強すぎるのだ。

 それにオーク戦の時に覚えた、ライトソードの剣が伸びる技。あれを岩の剣で,やるものだから、敵軍の被害甚大、それに、長槍くらいだと、ゴーレムの体には、通らないもんな。FLDのスキルで、ゴーレムが使えるのは、


アッパーソード  :下から上に剣を振り上げ、その力を利用して自分の高度も上げる

ローリングホール :剣を前回転をしながら敵に突っ込む

グランドインパクト:大地をたたいて振動を起こし、微ダメージを与え動きを封じる

スラッシュ    :飛翔する敵を切る斬撃

海撃       :スラッシュに水を乗せる物理斬撃。士ゴーレム特殊技

ジャストガード  :受けの居合技。受けなのに攻撃相当になる。吹き飛ばしに近い技



 自前の剣に比べると硬度は落ちるが、剣なんか砂漠から、幾らでも作れる。水属性を持った士ゴーレムの特性でスピードも早い。更に、このゴーレムは、おれの剣技を習得している。自分の戦闘スタイルは、相手の剣をよけて切るスタイルなので、盾がいらない分、剣技が多彩なのだ。


 士ゴーレムには、単純な指示をしているだけ。外の壁から入ってくる敵を内側30メートル以内まででたたけ。出来るだけ打ち漏らすな。グランドインパクトは使うな。ここに一言、あやふやな指示をしている。「出来るだけ打ち漏らすな」の出来るだけをあいつらは、どう、認識したのかとっても気になる所だ。ゴーレムが撃ち漏らした敵がどれぐらい本陣に攻め込んでくるかで、おれの対応も変わる。


 右方の戦いが始まり、ワーグ+ハルク部隊が突進を開始した時、時を同じくして、左方の騎馬隊が大挙して押し寄せてきた。右方と同じで、五百。これに縦列に並んだ士ゴーレムが、立ち向かった。ゴーレムは、元々盾役なので、向こうは、これをやり過ごすためにスピードを上げた。ここを抜けてしまえば無人の荒野だ。


 敵から見たらなのだが、ゴーレムたちは、何を思ったか馬の前に立ちはだかった。


 ブオーーーーン「ジャストガード」


 突っ込んできた馬に、まあまあ盾役っぽいジャストガードをかました。馬は、ビックリするぐらい敵後方に吹っ飛んだ。これが永遠とも思える数分続いて、敵騎馬隊は、足を止めた。ゴーレムをすり抜けるのではなく迂回しようとしたのだ。士ゴーレムたちは、これに対して馬より早く動いて馬上の騎士を屠りだした。

 いよいよ騎士たちは、ゴーレムと戦うしかない。隊形を組みなおして槍を構えて突進した。


 突っ込んだ騎士たちは、馬の首ごと動体を真っ二つにされた。


 無いわ、あれはないわ。士ゴーレムたち強すぎだ。たぶんおれが無意識にイメージしていたんだろうなと思うが、剣がゴーレムの身長近く2メートル50センチぐらいに伸びた。向こうは、全く足が止まった。おれのゴーレムは、敵を追いかけても壁の境界までしか行かない。成り行きだが、敵、右軍は、その外側で、隊形を整えることに成功てしまった。奇襲も何もあったものではなかった。


 せっかく数が減らせると思ったのに、失敗した・・・。


 それでも騎馬を100は削ったと思う。騎馬は、ここで半分に分けられて将軍の側に付く騎馬と攻撃の騎馬に分けられていた。


 オートマターにしているので、仕方ない。それに比べて古参の岩ゴーレムは、学習機能付き。岩五郎という名前を付けている。おれのニューロマシンと、土の結晶核が融和して、オークたちの事を仲間だと思っている。また、長い時間をかけて、オークたちの言うことも少し聞いて動けるまでになった。


 この戦が終わったら、岩五郎と同じにしないとな


 向うは、銅鑼を鳴らして一斉に前進しだした。いい作戦だ。数で押せば、士ゴーレムの防衛線を抜けられる。


 馬で押せないから、重歩兵が盾役になって、通り道を作る。おれが指揮官でもそう思う。その重歩兵にメイジが付いていた。ゴーレムの結晶核を特定して重歩兵に壊させる為だ。と言っても、結晶石はゴーレムの額に燦然と輝いているけどね。結晶核は、宝石のように綺麗なので、第3の目の様に額に飾っている。壊せるものなら壊してみろって話だ。



 三百人のメイジ隊の構成は、どうなっていたか、今更知る由もないが、各部隊付きのメイジは、火系がメインのようだった。殺傷能力を優先していたのだろう。火属性では、土の結晶石を壊すのは、苦手。土だと、風属性に弱い。同じ土属性のメイジならゴーレムを生成した術者より、魔力が強かったら壊せるけど、どうだろう。そんなのがいたら、一戦したいものだ。


 敵右軍は、ものすごい歓声を上げだした。太鼓を鳴らして、足並みを揃えると同時に、スピードを徐々に上げている。


 ワーーーーーーーーーーーー


 これ、やばいんじゃないか


 敵三千の内二千が、押し寄せてきた。残りの騎馬を含む千は、大幅に迂回する作戦だ。ゴーレムが、いくら強くても、十一体しかいない。この動きには、対処できないだろう。


 重歩兵盾隊を先頭に槍兵、歩兵、弓兵と続く。その要所要所にメイジ兵がいて指揮官と並走。やっぱり士ゴーレムの額を指さしている。無駄と分かりつつも、指揮官に言われて後続の弓兵の中にいるメイジが、ファイヤーアローの詠唱に入った。メイジの前にいる長弓兵の猛者が、思いっきり弦を引いている。士ゴーレムは、壁が切れたところから出ようとしない。たった30メートルの防衛ライン。敵はこの防衛線を越えられないはずがないと思ってしまった。


 士ゴーレムと重歩兵がぶつかる瞬間、長弓の矢が放たれた。それが途中で、火矢に変わった。強烈な技だ。これが、敵の猛者や指揮官だったら、当たると致命傷か、避けそこなっても大怪我する。火矢は、見事、士ゴーレムの額を撃ち抜いて火花を散らした。のけぞるゴーレム。これだけの弓の使い手が何人もいるわけないので、連続攻撃をしないで、成果を見極めている。


 攻撃されたゴーレムは、頭が半壊している、そのゴーレムを見て、そうだろうなと思った。結晶石は、無傷でゴーレムの額に浮いていた。そこに欠けた部分の岩がごつごつ集まっている。士ゴーレムの身長は、3メートル。槍兵では、肉薄しないと届かない位置。当然チャンスだと、重歩兵の盾隊と付属の槍隊が、そのゴーレムに肉薄する。

 その時には、そのゴーレムは目を光らせて復活。2.5メートルという長剣を無造作に振り回して、周りにいた重歩兵と槍兵をなぎ倒した。居合が入っていないので、切れ味が悪い。こん棒のような攻撃。しかし、それで十分だった。一度に、4,5人が倒されていく。重歩兵の大きな盾は、ぐにゃっとなり、重歩兵の甲冑も同じようになっている。士ゴーレムが、長剣を何度か振るとその刀は、折れるのだが、折れる先から復活する。


 数で押して、ゴーレムの隙間を抜けようとする歩兵が現れた。戦場で、戦死者を踏み越えて行くというのは、よく見る光景だ。それに対して、士ゴーレムは、長剣を回転させながら投げていた。長剣は砂漠の土でいくらでも作れるのだ。自分のは、大切に脇に差して、それをドンドンやる。


 メイジの火攻撃は、結晶石の破壊に至らなかった。しかし、頭を潰せたので、効果ありと見た指揮官は、継続して、攻撃せよと命令。最前線に位置していたメイジも弓隊まで引いて、その数が増えていく。


 それまで、重歩兵でさえスパッと切っていた別のゴーレムも、同じように居合能力を削られた状態になった。


 あのスピードと破壊力のある実弾の火矢は、見切りが必要だ。敵もやる。それでも、あんなに一度に攻められていなかったら、受けれるんじゃないかなと思う。下では、足を崩そうと歩兵が、がむしゃらに攻撃している。ゴーレムは、自分を抜かない限り、その攻撃を許していた。たぶん優先順位が低いのだ。アバウトな命令に対応してくれているんだと思う。


 注目していたゴーレムとは違う機体が、腕を落とされた。びっくりするスピードで、回復している。ところが、おれのMPに思わぬダメージが来た。砂漠で、水を生成するというのは、よりMPを消費するということなのだろう。まあ、平気だけど。


 一進一退だと思われていた攻防は、徐々にゴーレムに軍配が上がりだした。何十回かの攻撃を受けて、ゴーレムが、その攻撃を学習しだしたのだ。頭を狙ってくる火矢には腕でカバー。大剣を片手剣に変えて重歩兵中心に切り刻みだした。重歩兵は、これに恐怖した。甲冑と盾が役に立たない。代わりにゴーレムをする抜ける歩兵が現れた。ゴーレムは、自分の防衛線を超えた敵は、追いかけない。敵の作戦が当たりだしたと思われた。


 足を壊され膝間つくゴーレム。腕を落とされるゴーレム。頭を砕かれるゴーレム。百人ぐらいの歩兵と槍兵が抜けたころだろうか、そこで、重歩兵がいなくなった。盾を失った歩兵と槍兵は、再生したゴーレムの餌食になりだした。


 百人ぐらい抜けたか。でも、歩兵と槍兵ばっかだな。


 左方本陣にはエルフの弓隊とそれを守るドワーフの猛者がいる。たった百人では、到達するのがせいぜい。

 ゴーレムの防衛線では、大量の敵兵が削られた。200の騎馬を中心とする突撃隊が生きればいいと思っているのだろう。2000の歩兵を中心とする本部隊は、もう、撤退させなくてはいけないのに、消耗させられていく。これじゃあ無駄死にだ。敵ながら歩兵に同情した。


 あいつら指揮官失格だ。おれは怒りで、歩兵の指揮官に特大のファイヤーボムを見舞ってやった。


「バカ野郎。人を消耗品のように使いやがって『火の精霊よ敵を吹き飛ばせ、ファイヤーボム』!」

 詠唱付きの魔法は強力だ。


 ドガンドガンドガン。

 指揮官が吹っ飛んでいく。


 指揮官の近くにいて生き残ったのは、火の耐性がある魔法使いのみ。指揮官が倒されたのを見た歩兵たちは、我先にと撤退を始めた。


 それを見たおれは、5体の士ゴーレムに、突撃隊の騎馬をたたけと命令した。5体のゴーレムたちは、すり足で、騎馬に向かって走った。6体は、ここに残ってて防衛。敵本隊2000の内、半分以上削った。重歩兵は全滅。弓兵は無傷。メイジ兵は無事。ゴーレムたちは攻めないので、そこでの戦いは、歩兵指揮官が不在になったため一時中断。左方側、敵右軍の将軍は、本隊の後ろにいた。しかし、命令系統の瓦解は、簡単に修復できるものではなかった。


 エルフがいる本陣に、先行していた騎馬が到達しそうになっている。士ゴーレムに初当たりで減らされ、将軍付きと分けられて200ぐらいしかいない。それが、エルフの長弓で倒されていく。そして後ろから攻めてきたゴーレム。孤立した騎馬隊とゴーレムを抜けた歩兵は、ドワーフの長、ガブの「お前さんら、降伏しろ。これ以上は、無駄死にじゃ」という降伏勧告を受け入れた。おれは、ゴーレムに「騎馬をそれ以上攻撃しなくていい。残りの遊撃隊を倒せ」と、命令を変更した。


 敵右軍は、殆どゴーレムの防衛だけで、兵士を半減させられた。ゴーレムは、防衛線より先には出ないのだ。そこで、膠着状態に陥った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ