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人族なのに、魔物の王の王になってしまいました  作者: 星村直樹
良き隣人と虚ろな商人の王
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戦いの準備は全て整った

 明け方、前線の天幕で寝ていたら、コドシ本人が迎えに来た。今回の戦の要は、ゼイン将軍だが、コドシの後ろだてがあってこそだ。


「キビト殿大変だ。物見やぐらまで来てくれ。急ぎだ、乗れ」


 コドシは、寝ぼけているおれを無理やり背中に乗せた。コドシは、ワーグの進化系ローガだ。身体能力は、ワーグより上。そして風の魔法を使える。コドシは、風を纏ってスピードを上げた。


 おれは、中央の物見やぐらに、ザインを訪ねた。


「ザインどうした?」


 その中央の物見やぐらでは、ザイン将軍と鬼人族の長ノーブがおれを待っていた。


「ノーブが見つけてくれた。みろ、もう、敵は陣形が出来上がっているぞ。今日は、あれで進軍してくる気だ」


 物見やぐらに立ってみると、いつの間にか、中央軍、左右軍、本陣の形ができていた。おれたちの作戦では、縦列行軍している先頭集団を襲って、敵わないと逃げる振りをしてこの、岩盤かある地帯まで、敵をおびき寄せる予定だった。


「メイジ隊の無力化が早すぎたかな。それにしても展開が早すぎだろ」

「いや、初めて使った魔法だったんだろ。試すしかなかった」

「動き出したのは、明け方前からですぞ。軍師ハクオウの手腕でしょうな」


 ノーブは、この大軍を前にしても全く動じていなかった。鬼人族というのは、単体の戦力が普通でない。暴力で100人力なのだ。


 コドシもこの物見やぐらに上がってきた。


「敵は、陣形を維持しつつ進軍してくるのだろう。よく訓練された軍隊だ」

「コドシ様、敵に塩を送りなさるな」

「敵の力量を正しく把握しなくてどうする」


「ザイン、みんなは?」

「もう呼びに行ってる。こちらも当初の予定通りの陣形を組むしかない。しかし、あの陣形のまま攻められては、岩盤を起こすのが間に合わない。こっちは、キビトを入れても、土んでん返しができるのは、47人しかいないんだぞ」

「急に作戦は変えられないさ。おれは、ヒデラ皇帝と吐出して、説得を試みる」

「ワーグ隊が、ついて行こう」

「我々も行くぞ。王を最前線に一人立たせられない」

「鬼人族は、戦いの要だ。作戦通りに岩板の後ろに控えてくれ」

「ザインの指示は最もだ。ノーブそうしてくれ」

「王がそう言うのなら」


「みんな、当初の予定通りだ。ワーグ隊がついてくるだけでいい」


 そこに、ハルク族のボイとカイ。若手のムイとクイが、相棒のワーグと共に、それぞれ重要人物を連れてやってきた。ヒデラ皇帝、ドワーフのドレイク、エルフの長スメル、ダークエルフの隊長エンドルフである。


 おれは、スメルの、この状況に、全く動じていない表情?をたくましく思った。それで、物見やぐらに上がってきたスメルに最初に声を掛けた。


「スメル、これをどう見る」

「べたな作戦で、来るのでしょうね。この後、左右の軍が吐出して鶴翼の陣に変わり、我々を包囲殲滅する。戦力差が、ここまで違うのです。べたな作戦が一番効率的だ。ふっ、ですが、当初の予定通りの作戦でいいのではないでしょうか。私が聞くに、この軍の総大将、ホウギ将軍以外は、雑魚将軍でしょう。功を焦って、囮に食いつくのでは?」


 そう言って、おれとヒデラ皇帝を見た。


「おれたちが、囮?」


「一昨日、メイジ隊が不慮の魔力不純に陥ったのです。我々の中に強力な魔術師がいると想定しているはず。ヒデラ皇帝の言葉を3万人に聞こえるようにする魔術師が、皇帝の側に付くのですぞ。恰好の餌でしょう」


 スメルが、そんなの当り前でしょうと言わんばかりの顔をした。


「囮を追って、鶴翼の陣が崩れて、左右の軍が、中央に雪崩れ込んでくるというのか。面白い。ワハハハ」


 ザインが、急に元気になった。おれの肩をバンバン叩く。


「待て待て奴らは、皇帝の言を聞く耳を持たないということじゃないか」

「それは、陛下しだいです」


 スメルは、ヒデラ皇帝を真っ直ぐ見る。しかし、ヒデラは臆することが無い。どうやら、覚悟を決めたようだった。


「キビト殿。こちらの軍の準備が整い次第、我を彼らの鼻先まで連れて行ってくれ」

「そうしよう」


 そんな話をしているうちに、オークの女たちやワーグ隊、エルフ弓隊、オーク歩兵隊。コドシの嫁ミヨ率いる救護部隊。いつの間にか現れた鬼人隊。後方支援のオークの女たちがこれに続く。こっちは、総力戦だ。



 向こうは、朝食の煙が上がっている。余裕こいでいるなと思う。


「敵は、朝飯を食べている。こちらもそうしよう」


 ザインの号令で、オークの女たちが、みんなに弁当を配る。こっちは、朝食用だったサンドイッチだ。この後オークの女たちは、家に帰って昼飯を作らないといけい。手の空いている者は、救護班や弓矢などの武器補充に従事する。


「キビト、元気をつけな」

「ウラさん!」

「皇帝さん、あんたもだよ」


 ヒデラは、こんな貧しい農村で、こんなおいしい食事を出す魔物や亜人の女たちに敬意を払っていた。おれとおんなじだ。


「ありがとうウラさん」


 美味しいご飯を食べると元気が出る。敵が3万だろうが、どんとこい。


「ブヒッ、大将、ザイン将軍。準備できたぞ」


 オーク王バウワがやって来た。戦いの準備は、全て整った。

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