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人族なのに、魔物の王の王になってしまいました  作者: 星村直樹
良き隣人と虚ろな商人の王
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エルフ会議

 エルフの会議が始まった。おれは、最初の方にちょこっと参加して、いなくなる。一応その予定だが、スメルが言うには、根掘り葉掘り聞いてくると言っていた。その対応は、こうのこうでと言われたが、正直、覚えきれない。分からないことや打ち合わせで覚えていないことは、全てスメルに振ることになった。この会議の中に内通者がいるのは間違いなく、敵に話しているつもりでいろと言われた。それ以外にも、いろいろ言われたが、基本スメルに丸なげしようと心に決めた。だって、面倒くさい。


 その逃げ口上は、「スメルに話したのに、また話さないといけないのか」これが、賢い人達には効くらしい。


「皆さんよく集まってくれた。私は、皇帝陵に行って捕らわれていたが、こうして帰郷することが出来た。皇帝陵には、裏切り者3人とその家族6人がいた。そこで、セイの森を閉じようと思う。彼らが、私とシャインを皇帝陵から救出してくれたキビトだ。キビトは、私以外に、別に囚われていた5人のダークエルフも救出してくれた」


「イスタールのキビトだ。旅の途中リリーさんと出会いスメルさん達を救出してほしいと依頼された。目的が達成されてよかったが、実際は、リリーさんにスメルさんとシャインさんを引き合わすまでが依頼だった。聖の森が大変なことになっているのは聞いたが、依頼を達成した証がほしい」

 エルフ豆と酵母だけで十分だけどね。


「スメルを救ってくれたことに感謝する。彼は、エルフの族長という立場。人というのは、陰謀を巡らす者たちばかりではないと覚えよう」

「はて、イスタールとは聞かぬ国の名前だな」


「我々の国は、東方の遥か先だ。リリーは、北を目指すと言っていた。ゴル砂漠があるのに無茶をする」


「それは、当初の予定通りだ」

「リリーは、他に何と言っていた」

「シイナ国は、リリーに何をさせようとしていたのだ」


「細かい話は、スメルにした。おれは、また、同じことを話さないといけないのか」


「スメルに聞こう」


 スメルは、組んでいた腕をほどいて話しだした。


「私は彼に、風硝石を持たせようと思うのだが、どうだろう。後の連絡にも役立つ」

「それはできない。セイの森が力を弱めている今、風の触媒は必要だ」

「森は閉じようではないか。また人族が侵攻してくる」

「それでも、この原因を探るため、森を維持するため、森を閉じるために風硝石は、一つでも必要だ」


 スメルが困った顔をしておれを見た。ちょっと嬉しい。初めて感情的な顔を見た。


「それなら、おれがいっぱい持ってる。おれは商人だ。買ってくれ」

 そう言ってアイテムボックスから、ゴロゴロ、風硝石を出した。エルフにとっては宝の山。


「キビトは、アイテムボックス持ちなのか」


 スメルがぴくッとしている。これも嬉しい。


「エルフには、いないのか?」


「以前いた。その者は、ハイエルフになり空を飛べるようになって、セイの森から出て行った。なるほど・・・・」


 ハイエルフはエルフの上位種族。なるほどの後は、だからおれが飛べるわけだと納得していたのだろう。


「どうする?買わないのか」


「これほどの宝。我らに支払う余裕がない」


 宝を前に、ここに集まった6人のエルフの目が尋常ではない。スメルだけ、平然とした顔。この人は、ハイエルフに進化するんじゃないか。それなのに、おれに深々と頭を下げることも出来る。付き合いにくいのに好感が持てる。


「では、貸しということでどうだろうか」


「スメルは信用できる。いいぞ」


「スメル様、貸しとはどういうことですか」

「のちに支払うということだ。今、書面を書こう。反対する者は?」

「私は賛成だ。必要な結晶石を今手に入れなくてどうする」

「私は反対だ。我らには、重すぎる貸しだ」


 色々な意見が飛び交っている中、スメルは、平然と書面をしたためていた。


「キビト、私スメルの借りということでいいか」


「問題ない」


「皆もそれでいいか」


 全員一致で、賛同してくれた。


「では、8つくれ。エルフ6部族とセイの結界用と探査用だ」


「問題ない。これは、友好の証だ。スメルが持っていてくれ。おれに貸しを返すまで死ぬな」

 そう言って8つの結晶石とは別に、極大の風硝石を一つおまけにつけた。


「面倒なことを言う。いや、受け取っておこう」


 あれで感謝しているのだろうなと思う。この人とも、長い付き合いになるような気がした。


「ではみな」


 そう言うと、ここにいるエルフが、全員ぴくっと表情を動かした。


「そういうことだ」


「どうゆうこと?」


「帰っていいということだ」


「すまん、今後は、おれにわかるように話してくれ。それでは、支払いを期待している」


「そのために、また、我々に会いに来なくてはいけなくなったな」


 面倒ごとが増えた。やっぱり賢い人には敵わない。


「分かった。いずれまた」


 もう夜中だ。おれは、朝が早い。失礼だと思ったが、会議場のベランダから飛んだ。後は、スメルに任せればいいだろう。会議員に報酬を吹っ掛けたことだし、無礼者だと怒ってはいないと思う。

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