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人族なのに、魔物の王の王になってしまいました  作者: 星村直樹
ロードキビト〈吉古神〉
12/43

闇魔法とは

 三人で、ほのぼのしていたら、カーンが、困った顔してテントに入ってきた。


「なんだ、こっちから行こうと思っていたのに」


「お前らも入れ。ドワーフのガブと孫のジャスミンだ。訳有りなのは、分かったが、とにかく、まず謝れ。わしらに相談しないからこうなったんだぞ。ハーン一家のザイだ」


「すまんかった」

「すみませんでした」


「まあいい。それでどうしたんだ」


「さっきまで、ミスリルの剣の偽物を作っていたんだと。それを領主に納めないと、一族を鉱山から追い出すそうだ。そんなことされたら、一族が全員死んでしまうそうなんだが」


「そうじゃ、さっきの若いのが、水結界を途中で解いてしもうたから、もう、あの剣は青光りせん。ええとこまでいっとったのに、どうしてくれる」


「鉱山?偽物?お前、本当は、ミスリルの剣を作れと言われたんじゃないのか。じゃないと、草原のオアシスまで来て作る必要はない」


「ぐっ」

「そうよ。領主の奴が、私たちに、無理やりタダで鍛冶屋をさせようと無理難題言ってきたのよ。あいつらに、ミスリルの価値が分かるわけない。これで十分だった」


「職人としては、最低だな。でも、腕は良さそうだ。その領主は、もっと最低だけどね」


「おっ、こいつらも助けるのか」


「いま水路の溝を手で掘っているんだ。器具がほしい。鍛冶屋が欲しかったんだ」


「何の事じゃ」


「一族全部まとめて面倒みるって言ってんだ。まだ、飯を食わすので精いっぱいだけど、いいかな」


「キビトは、成長魔法で、2千匹のオークを養っている。オレらも、これから手伝いに行く。オークには、ワイドオークの王がいる。立派な王だそうだ」


「オレも行こう。衛生は大事だからな」


「本当か!助かるよ」


「そう言うわけだ。お前らも、鉱山に居ても生きていけないのだろ」


「こっちに来るなら歓迎だぞ。ついでに、鉱山の鉄も持って行こう。どうせ、本当は、ドワーフの土地だったんだろ」


「分かるのか」


「時代劇見ていたからな、っと、そう言う話は、師匠に、いっぱい聞かされているんだ」

 師匠とは、歴史の宮迫先生のことだ。何でか、説教のように物凄く教えられた。話は面白かったけど。職員室でだったもんな。


「どうする、歓迎するぞ」


「おじいちゃん」

「どうせ、わしの一存で決められる。その話、ええんじゃな」


「一族は、何人いるんだ。20人か、30人か?」


「172人じゃ」


「お、おう。ここに移動のための食料を持ってこさせる。1日で、全員、ゲートを通ることが出来るか」


「お前さん、ゲートの事を知っとるんか」


「おれのザブ職業は、錬金術師だからな。その、代官に・・ごめん、領主に見つからないのなら、ゲートに扉をつけたい。後で、ちょくちょく鉄をちょろまかしたいからな」


「封印をすべきじゃろ。そんなことしたら、もう、戻れんがな。一度に大人数がいなくなれば、そりゃ白みつぶすしに探すじゃろうからな」


「おれが、扉を作りに行くよ。じいさんと二人で行ったら、頑丈なのができそうだ」


「ガブさんだろ」

 シミに怒られた。


「すいません。ガブ、それでいいかい」

「おじいちゃん、それじゃあお姉ちゃんが」

「仕方ないんじゃ」


「なんだい、領主に人質を取られているのかい」

「キビト、何とかならんのか」


「なりますよ。おれ、魔法剣士なんで。鉱山町の領主でしょう、それぐらい何とかします」


「じゃあ頼むかね。カイとクイから聞いてるよ。強いんだって」


「それほどでも、その代わり、バザールで、いっぱい種とか買い込んでください。料金後払いで」


「仕方ない」

「わしも出そう」

「すまん。恩にきる」


 イベント発生って感じだな。


「そうだ、水結晶を弁償するよ。水玉でいいんだろ」


 そう言って、アイテムボックスから水結晶を出した。普段使わないからいっぱいある。


「こんな大きいのを、お前さんアイテムボックスを持っとったのか。話には聞いたことがあるが、初めて見た」


「オレのは、闇魔法のステータス付きなんだ」


「闇魔法?」


「今度教える。飯も食ったし、その鉱山に行こう」


「駄目よ、この二人が食べてからだよ」


「すいません」



 そんなわけで、ガブと、凍土に行くことになった。



「カーンそれにザイ。ドワーフたちに、オアシスを使わせていいか?。あそこに集合させる」


「オアシスは、みんなの物だ。それを守ってくれたら好きにしていい」


「ここは元々わしらが管理していた水源じゃ。大切に使うよ」


「そんじゃあ凍土に行ってくる」


 ガシン

「何すんじゃ」


「飛んでいくんだよ。その方が早い『浮遊』『ウオーム』『エアーバリアー』!」


 最初ちょこっと浮いて、ふわふわ上昇、微妙に赤く光って風をまとった。


「『加速』!」


 グ―ンんと上昇したところで、ベクトル変化させ凍土に向かう。最初カブを驚かせないためにこのスピードで進んだ。


「ヒヤーホウ。すごいな。どうなっとる」


「暴れるな。落っこちるぞ。おれが持っているから浮いているんだ。これは闇魔法だよ」


「闇魔法って、ゾンビとか生むやつじゃないのか。闇って言ったら、そんなイメージじゃろ」


「それは、土魔法と水魔法の合体業だろ。闇魔法は、この世界に無い魔法だよ」


「土と水?土魔法にそんな使い方があるんか」


「ドワーフは土魔法だろ。命の無いゴーレムが動くだろ。ゾンビは、ゴーレムの死体版だよ。生き物は死ぬと死後硬直するから、それを水魔法で軽減する。なっ、人の死体のゴーレムの出来上がりだろ」


「なっ、って言われても、ぞっとせんわい。じゃあ、闇魔法ちゅうのはなんじゃい」


「今、飛んでいるだろ。逆にものを引き寄せるとか。闇魔法の真骨頂は、引き寄せる魔法かな。後、物を重くしたり、閉じ込めたり、そんな魔法だよ。アイテムボックスに閉じ込めスキルがあると、大きいものでも、吸い込んでくれて収納できちゃうんだ。便利だろ。だから、出来上がった鉄を全部貰っていこうよ。本当は、ガブ達の物なんだろ。鉄鉱石から鉄を生成すると、水が汚れるんで、水が貴重な草原に、鉄鉱石を持ち込むのは、ダメな」


「鉄は領主の所にある。そんなことが出来るんなら、全部持って行こう」


「領主か。その領主は、力で実効支配しているだけで、領民に何も恩恵がないんだな。おれから言わせたら犯罪だよ。そいつも連れて来るか。罪を償わせよう」


「ワハハ、面白いことを言う。不思議なわっぱじゃ」


「一番偉いやつが、責任を持つんじゃないのかよ」


「逆じゃろ、全く責任を持たないのが王じゃ。一番強いから、誰も逆らえん」


「じゃあ、一番じゃ無ければ罪を償わないといけないってことだ。あれだぞ、多分この世界で、おれが一番強いぞ」


「その割には、女に敬語だったな」


「誰にでもって分けじゃないぞ。飯食わせてくれるからな。実際、頭が下がるよ。だから、おれが大事にしているものを痛めつけるようなやつは許せないね」


「変わったやつじゃのう。ワハ、ワハハハハハ」


「だから、暴れるなって。ゲートの場所を指さしてくれ。急ごう」



 そこからはスピードを上げた。ガブには悪いと思ったが、休みが3日しかない。何とか時間を作ってバザールに行きたいと思っていたからだ。ボイが言うには、テント村になっているところには、荒野から商人が物を買い付けに来る。逆に、主食のパンの種や珍しい物を売ってくれるそうだ。直接見たい。

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