闇魔法とは
三人で、ほのぼのしていたら、カーンが、困った顔してテントに入ってきた。
「なんだ、こっちから行こうと思っていたのに」
「お前らも入れ。ドワーフのガブと孫のジャスミンだ。訳有りなのは、分かったが、とにかく、まず謝れ。わしらに相談しないからこうなったんだぞ。ハーン一家のザイだ」
「すまんかった」
「すみませんでした」
「まあいい。それでどうしたんだ」
「さっきまで、ミスリルの剣の偽物を作っていたんだと。それを領主に納めないと、一族を鉱山から追い出すそうだ。そんなことされたら、一族が全員死んでしまうそうなんだが」
「そうじゃ、さっきの若いのが、水結界を途中で解いてしもうたから、もう、あの剣は青光りせん。ええとこまでいっとったのに、どうしてくれる」
「鉱山?偽物?お前、本当は、ミスリルの剣を作れと言われたんじゃないのか。じゃないと、草原のオアシスまで来て作る必要はない」
「ぐっ」
「そうよ。領主の奴が、私たちに、無理やりタダで鍛冶屋をさせようと無理難題言ってきたのよ。あいつらに、ミスリルの価値が分かるわけない。これで十分だった」
「職人としては、最低だな。でも、腕は良さそうだ。その領主は、もっと最低だけどね」
「おっ、こいつらも助けるのか」
「いま水路の溝を手で掘っているんだ。器具がほしい。鍛冶屋が欲しかったんだ」
「何の事じゃ」
「一族全部まとめて面倒みるって言ってんだ。まだ、飯を食わすので精いっぱいだけど、いいかな」
「キビトは、成長魔法で、2千匹のオークを養っている。オレらも、これから手伝いに行く。オークには、ワイドオークの王がいる。立派な王だそうだ」
「オレも行こう。衛生は大事だからな」
「本当か!助かるよ」
「そう言うわけだ。お前らも、鉱山に居ても生きていけないのだろ」
「こっちに来るなら歓迎だぞ。ついでに、鉱山の鉄も持って行こう。どうせ、本当は、ドワーフの土地だったんだろ」
「分かるのか」
「時代劇見ていたからな、っと、そう言う話は、師匠に、いっぱい聞かされているんだ」
師匠とは、歴史の宮迫先生のことだ。何でか、説教のように物凄く教えられた。話は面白かったけど。職員室でだったもんな。
「どうする、歓迎するぞ」
「おじいちゃん」
「どうせ、わしの一存で決められる。その話、ええんじゃな」
「一族は、何人いるんだ。20人か、30人か?」
「172人じゃ」
「お、おう。ここに移動のための食料を持ってこさせる。1日で、全員、ゲートを通ることが出来るか」
「お前さん、ゲートの事を知っとるんか」
「おれのザブ職業は、錬金術師だからな。その、代官に・・ごめん、領主に見つからないのなら、ゲートに扉をつけたい。後で、ちょくちょく鉄をちょろまかしたいからな」
「封印をすべきじゃろ。そんなことしたら、もう、戻れんがな。一度に大人数がいなくなれば、そりゃ白みつぶすしに探すじゃろうからな」
「おれが、扉を作りに行くよ。じいさんと二人で行ったら、頑丈なのができそうだ」
「ガブさんだろ」
シミに怒られた。
「すいません。ガブ、それでいいかい」
「おじいちゃん、それじゃあお姉ちゃんが」
「仕方ないんじゃ」
「なんだい、領主に人質を取られているのかい」
「キビト、何とかならんのか」
「なりますよ。おれ、魔法剣士なんで。鉱山町の領主でしょう、それぐらい何とかします」
「じゃあ頼むかね。カイとクイから聞いてるよ。強いんだって」
「それほどでも、その代わり、バザールで、いっぱい種とか買い込んでください。料金後払いで」
「仕方ない」
「わしも出そう」
「すまん。恩にきる」
イベント発生って感じだな。
「そうだ、水結晶を弁償するよ。水玉でいいんだろ」
そう言って、アイテムボックスから水結晶を出した。普段使わないからいっぱいある。
「こんな大きいのを、お前さんアイテムボックスを持っとったのか。話には聞いたことがあるが、初めて見た」
「オレのは、闇魔法のステータス付きなんだ」
「闇魔法?」
「今度教える。飯も食ったし、その鉱山に行こう」
「駄目よ、この二人が食べてからだよ」
「すいません」
そんなわけで、ガブと、凍土に行くことになった。
「カーンそれにザイ。ドワーフたちに、オアシスを使わせていいか?。あそこに集合させる」
「オアシスは、みんなの物だ。それを守ってくれたら好きにしていい」
「ここは元々わしらが管理していた水源じゃ。大切に使うよ」
「そんじゃあ凍土に行ってくる」
ガシン
「何すんじゃ」
「飛んでいくんだよ。その方が早い『浮遊』『ウオーム』『エアーバリアー』!」
最初ちょこっと浮いて、ふわふわ上昇、微妙に赤く光って風をまとった。
「『加速』!」
グ―ンんと上昇したところで、ベクトル変化させ凍土に向かう。最初カブを驚かせないためにこのスピードで進んだ。
「ヒヤーホウ。すごいな。どうなっとる」
「暴れるな。落っこちるぞ。おれが持っているから浮いているんだ。これは闇魔法だよ」
「闇魔法って、ゾンビとか生むやつじゃないのか。闇って言ったら、そんなイメージじゃろ」
「それは、土魔法と水魔法の合体業だろ。闇魔法は、この世界に無い魔法だよ」
「土と水?土魔法にそんな使い方があるんか」
「ドワーフは土魔法だろ。命の無いゴーレムが動くだろ。ゾンビは、ゴーレムの死体版だよ。生き物は死ぬと死後硬直するから、それを水魔法で軽減する。なっ、人の死体のゴーレムの出来上がりだろ」
「なっ、って言われても、ぞっとせんわい。じゃあ、闇魔法ちゅうのはなんじゃい」
「今、飛んでいるだろ。逆にものを引き寄せるとか。闇魔法の真骨頂は、引き寄せる魔法かな。後、物を重くしたり、閉じ込めたり、そんな魔法だよ。アイテムボックスに閉じ込めスキルがあると、大きいものでも、吸い込んでくれて収納できちゃうんだ。便利だろ。だから、出来上がった鉄を全部貰っていこうよ。本当は、ガブ達の物なんだろ。鉄鉱石から鉄を生成すると、水が汚れるんで、水が貴重な草原に、鉄鉱石を持ち込むのは、ダメな」
「鉄は領主の所にある。そんなことが出来るんなら、全部持って行こう」
「領主か。その領主は、力で実効支配しているだけで、領民に何も恩恵がないんだな。おれから言わせたら犯罪だよ。そいつも連れて来るか。罪を償わせよう」
「ワハハ、面白いことを言う。不思議なわっぱじゃ」
「一番偉いやつが、責任を持つんじゃないのかよ」
「逆じゃろ、全く責任を持たないのが王じゃ。一番強いから、誰も逆らえん」
「じゃあ、一番じゃ無ければ罪を償わないといけないってことだ。あれだぞ、多分この世界で、おれが一番強いぞ」
「その割には、女に敬語だったな」
「誰にでもって分けじゃないぞ。飯食わせてくれるからな。実際、頭が下がるよ。だから、おれが大事にしているものを痛めつけるようなやつは許せないね」
「変わったやつじゃのう。ワハ、ワハハハハハ」
「だから、暴れるなって。ゲートの場所を指さしてくれ。急ごう」
そこからはスピードを上げた。ガブには悪いと思ったが、休みが3日しかない。何とか時間を作ってバザールに行きたいと思っていたからだ。ボイが言うには、テント村になっているところには、荒野から商人が物を買い付けに来る。逆に、主食のパンの種や珍しい物を売ってくれるそうだ。直接見たい。




