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人族なのに、魔物の王の王になってしまいました  作者: 星村直樹
ロードキビト〈吉古神〉
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第三世代への進化

 極寒の凍土から草原へ。しかし、その南は、死のゴル砂漠が横たわっているだけ。草原のオアシスは、私たちの命なのです。



 草原?命?。。。


 おれは、古谷吉備人。脳内にニューロリンクなるコンピューターを埋め込まれて、現実と夢の区別がつかなくなった。あの日、クラスのみんなは、ネットで仮想現実の世界に浸り、おれは、変な夢を見た。


 草原は、どこまでも続く。いくら早く走っても関係ない。だけど、森のあるオアシスに出くわした。普通に立っているだけで、おれの身長ぐらいある犬のワーグ族。その中に、薄い白銀のような眼をした白いワーグと。緑の優しい目をしたメスのワーグがおれを待っていた。白銀の巨大オオカミは、どう猛さと知的な瞳をおれに向けた。



 翌日学校に行くと、優斗が、なんで、ファンタジーLD〈ライト&ダークネス〉に来なかったのか聞いてきた。


 おれたちは、脳内にニューロリンクを埋め込まれた第二世代だ。第一世代のように、電極を直接脳に差し込まれているわけではないので、第一世代のように、大容量の演算ができるわけではない。だけど、コードレスなので、クラウドに繋がって、普通に生活ができる。ほとんどの演算は、クラウドのメインコンピューターがやる。端末のニューロリンクは、お粗末なものだと思っていた。しかし、どうやら、おれのは、違っていたようだった。


 なぜみんなと一緒に、ファンタジーLDをやらないかというと。ファンタジーLDは、おれが最もやりこんでいるネトゲーだからだ。初心者と遊ぶのは、ちょっとと思った。


「キビト、どうして昨日は、ファンタジーLDにアクセスしなかったんだ?砂漠を超えた南の荒れ地から、オークが攻めてきているんだ。昨日は、偵察だけだからよかったけど、今日は、討伐に行くぞ。来るだろ」


 優斗におれがログインしていると確認できないはずだ。なんで、おれのアバターネームが本名だと知っている。その通りだけど。


「昨日なんだけど、ニューロリンクのヘルプを読んでいたんだ。優斗は、自分のニューロリンクのバージョンを確認したか?」


「第二世代だから、Ver2だろ」


「それは、そうなんだけど、第三世代適合者って書いてあったんだ。優斗は、第三世代が、どんなものか、知ってるか」

 詳しく経緯を話したいが、なんとなく詳細を話しずらい。オレのバージョンは、Ver2,35。多分みんなのは、2.01。


「第二世代の次の世代の事だろ。オレたちが初めての第二世代だぞ。第三世代がどんなものかなんてわかる訳ないだろ。第一世代の人ならわかるんじゃないか。これ作った人たちだから」


「聞けたら苦労しないよ。ヘルプにも、説明がないんだ」


「宮迫先生に聞けよ。担任なんだから」


「そうするか」


 この教室にいる生徒は、みんな第二世代適合者だ。頭にハードであるニューロチップと、それを補助する、増殖するバイオチップを埋め込まれている。そうされても、健康被害が出ない適合者だということだ。

 補助として、体の健康を支えるナノマシンも体に注入されている。ナノマシンは、マシンと言っているが、ニューロチップのような機械ではない。免疫細胞をカプセルのような検知膜に閉じ込めて、病気を感知したら、その膜が破裂して、免疫細胞を強化するというシステムだ。


 現在、ほとんどのクラスメイトが、ゲームに夢中だ。


 おれたちは、ゲームするとき、パッドやキーボードを使わないで、直接脳から信号を送る。だから、反応速度が半端ない。第一世代の開発者の人が、ニューロリンクに慣れるのに、ゲームが良いと推薦してくれた。みんな喜んで、推薦ゲームのファンタジーLDを始めたところだ。



 学校

 ホームルームになった。オレは手をあげて担任の宮迫先生に質問した。


「先生、ニューロリンクのバージョンを見たんですが、そこに第三世代適合者ってありました。これって何ですか」


「古谷ー、いい質問だ。だが、先に聞くぞー。どうやってバージョンを見た」


「ヘルプで?」


「お前、その時クラウドにつないでいたか?」


「いいえ、ゲームやっていなかったんで。おれ、ソシャゲーしないときは電源全部OFFにしています。さすがに、クラウドの通信は切れても、ニューロリンクは、切れないんですね」


「そうかそうか、お前、後で職員室に来なさい。クラウド切るなって言っただろ」


「げっ、そうだった。それで質問・・」


「第三世代な。第二世代の次に決まっているだろ。それは、開発者の予想だ。第二世代が進むと、三世代に進める予想を今からしているんだ。お前、開発者の人に注目されていたんだな。まだ、ニューロリンクを施術したばかりだ。健康被害が無いかモニターしている最中なのに、クラウドを切るなよ」


「すいません。それで、第三世代は、どういうものなんですか」


「企業秘密」


「えっ?」


「企業秘密だ。第二世代が安定していないのに、そんなの発表できるか」


 ブーブーと、教室からすごいブーイング。


「分かった、ヒントな。お前らは、口で話さなくても、意思を疎通し合える」


「そんなの当り前じゃないですか。クラウドで繋がっているんですから」


「今の謎掛けが解けんのなら、話はここまでだ。他には?」


 なんとなく大人は、ずるいと思ったけど、それ以上質問をする人はいなかった。



 放課後、宮迫先生の所に行くと、おれにだけ、もう少し教えてくれた。


「古屋ー、おまえ、ホームルームで聞くなよ。第三世代適合者は、お前だけなんだから。これからは、先生に直接聞け。それができるんなら、もっと教えてやるぞ」


「本当ですか!」


 これからは、そうすると嬉しそうな顔をしたら、先生、急に小声になった。


「クラウドだけどな。使わないときは切ってろ。そうしたら答えが分かる。その代り内容は、秘密だぞ」


 なんか、面白そうなので、ものすごく頷いてしまった。だから、家に帰って早速クラウドを切った。



 ・・・・・、・・・・・・、・・・・・、それで、こうなった。


 宮迫の野郎。これが現実なのか、仮想空間なのか、夢なのかわからんじゃんか。


 おれは、砂漠の中にポツンと一人で立っていた。

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