第七話【このメンツは穴だらけ】
俺は今少女二人と朝食を取っていた。食卓には色とりどりな野菜たちが並んでいる。野菜炒めにサラダに野菜の煮物etc……。主食の類は見られず、THEベジタリアンという食事であった。味は思わず口が綻ぶほどいいのだが……。肉や米などが少しでもいいので欲しいところだ。この世界には野菜料理以外無いのだろうか? まぁ、二人とも黙々と料理を楽しんでいるようだし黙っておこう。
「ご馳走様ー! 美味しかった!」
いや、メリーはもう完食したようだが。まだ食事に手を付け始めて約三分ほどしか経っていないはずなのに、相当お腹が空いていたのだろうか。彼女は満足気に腹をさすっている。
「あ、レティー、片付けはどうすればいいかしら?」
ふと気づいたかのようにメリーはレティに声をかける。
「その辺に置いておいてくれれば大丈夫ですよ、『今日は早めに外出する』と父様に伝えたので使いの方々がやって下さるはずです」
レティは箸を置いてから問に答える。なるほど、俺も置いておいていいのだろうか。また料金を取られそうで気が引ける。まぁそのときはそのときだ。俺はそれよりも引っかかったことを彼女に問いかけることにした。
「今日は早めに外出するってどこに行くんですか?」
先程彼女がやったように俺も箸を置いてから問う。出来る限り無礼のないように振る舞わないと何があるか分からないからな。
「あぁ、それなのですが……」
「それは私が説明するわ! 色々込のお話になってくるから!」
レティが話そうとしたところをぴょんぴょんと飛び跳ねながらメリーが割り込んでくる。レティは少し微笑んでから口を噤んだ。元々二人の間で会議をしていたのだろう。後はお任せする、と言った風に彼女は再び箸を口に運び始めた。
「──今から私たち三人でギルドに行くのよ! パーティを組みに!」
大きく息を吸った後、メリーは大声でそう言い放った。箸の先をこちらに向けながら、可愛らしい笑顔で。そこそこ広い部屋に彼女の元気な声が反響する。耳が痛い。塞ぐのは失礼なんだけど、すごく塞ぎたい。パワフルがすぎる!
(それから、えぇと……パーティって言ったよな?)
俺は皿を持ち食べる振りをしながら、二人の方を見つめる。片方は女神。片方はちょっと口が悪いだけのただの商人。そして凡人の俺。今度は飲み物を取りに行く振りをしながら考える。パーティと言えば数人で協力するもの。ここまでは問題ないだろう。だが……。俺はそこまで考えてむせながら二人の方に戻る。
「コホン、二人とも少しよろしいでしょうか?」
謎の丁寧語で語り始める。二人は不思議そうに顔を合わせてから俺の方に目を向けた。
「えぇと、パーティって何か分かりますかね?」
メリーは首を激しく縦に振る。長めの髪が荒ぶる。レティは少しだけ考えてからこくり、と小さく頷いた。
「…………今一度3人のスペックを確認して頂けませんか、女神様」
俺はメリーの方に向き直る。するとメリーはハッ、とした様子で謎の書類を取り出した。鮮やかなピンク色をしたソレに彼女は目を通し始める。上から下へ彼女の金色の瞳が動いていく。
「何かお気づきの点はございますか」
テーブルに手を置いてメリーに問う。段々と彼女の顔が青ざめていく。ようやく気づいたのだろうか。
──戦闘要因が誰もいないって!
「……大変だわ! このパーティ、男女の比率が悪いわ!?」
料理は誰が作ったものなのか……これはのちのちわかると思います……ふふふ……