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「これって……」
「あたしだよ。一つ目があたしの過去で、二つ目は鉋君の過去みたいだね」
振り返ると映像から出てきたかのようにセーラー服姿の百華が立っていた。
「……ノンフィクション?」
「まあそうだね。あたしは小さい頃、虐待されてたんだよ」
コツコツとローファーの音を鳴らして百華はこちらに歩いてくる。私が視線を百華の足元に移したせいか、彼女はそのことを感じ取ったみたいだった。
「あ、この音ね。今でも思い出すんだよね、虐待されてたときのこと。パンパンパンパン布団でもはたいてるのかってくらいはたき続けるもんだから頭に根付いちゃったみたいでさ」
軽い口調で彼女は言った。そして私の隣に来て、手を後ろで組んで前かがみで私の顔を覗いてくる。
「ねえねえ。それよりさ、あたしが強姦されてるの見てどう思った?」
「どうって、そりゃ……」
「嫌だった? 悲しんでくれた?」
「酷いことだとは思う」
「可哀想?」
「いや……」
彼女ははにかむ。
「嫌でも可哀想だって言ってくれないんだね。変わらないなーそういうところ。でもさ、それが正解なんだよね。実際強姦されてもそんなに嫌じゃなかったの。それよりも虐待の方が辛くて、それ思い出して泣いちゃったんだけどさ」
そんなことを言う、先ほどまで見ていた百華とさほど変わらないセーラー服姿の彼女。私は状況がよく読めていなかった。
まずここはどこなのか。
そして、二つ目の話、あれは私の実体験だ。誰があんな私だけが感じたことを忠実に表現できるというのだ。
最後、この女は誰なのだ。
「その問いにあたしが全部答えてあげましょうまず、ここはあたしと鉋君の共通の空想世界。んーちょっと難しいんだけど、テレパシーが具現化された感じかな」
「そんな、非現実的な……」
「鉋君だって言ってたじゃん。共通認識が大事だって。あたしと鉋君が信じているからこの世界ができてるのよ? そして次。鉋君の過去の話ね。あれはあたしがすべて鉋君の心を読み取っていたからー、って言いたいところだけど、あれは鉋君自身の心が反映されただけね。そして最後。あたしが誰なのか。薄々勘づいてはいるんじゃない? ねえ鉋君」
「中学の隣の席の……」
「あったりー。名前も覚えててくれないなんてひどいよね。まあよく話したりはしたけど自己紹介はしてなかったから当然っちゃ当然なんだけど」
「いや、そうだとしても、」
「年齢が合わないって顔してるね。でもそれはちょっと言いたくないかなー」
信じがたいことを当然のことのように百華は語った。
「とりあえず、もう一本映画あるから見て見よっか」




