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私の嫌いなもの

私はイケメンが嫌いだ。


私には二人の双子の兄がいる。身長は180センチをこえ、私よりも細いんじゃないっかて言うぐらいのスタイル。アイドルグループに所属していて人気者。


世間様からは性格も良くてトークも面白く、若いアイドルであるが気遣いもでき家族愛に溢れた完璧美青年とみられている。


はぁ?


性格が良いぃぃ?


家族愛に溢れるぅぅぅ?


完璧美青年?


ちゃんちゃんらおかしいんですよ!


あの男たちが私に対してどれだけのことをしてきたのか知ってますか!知りませんよね!


じゃあ、言いましょう。ぶちまけましょう!


まず第一にあの男たちはね、家では全く働かないんですよ!家事は全部私に任せ、部屋の掃除までさせる。だけど文句を言う時だけは一丁前。


やれ、なんでここ掃除してないんだ。


やれ、冷蔵庫にプリンがないんだけど。


やれ、お風呂沸いてないんだけど。


私はあんたらの家政婦か!20にもなった大人が高校生の女子に向かってやっていいことじゃないからね!?私は別にあんたらに養ってもらっているわけでもないからね!?


第二に私の趣味に口を出す。漫画が好きで悪いか!アニメが好きで悪いか!部屋中が美少女で溢れ返ってて悪いか。あんたらのせいで一般的に女子向けって呼ばれてるものを心から楽しめないの!


言っとくけど、あんたらのファンも相当気持ち悪いからね! 帰ってきたらポストの中に誰かの髪の毛、爪、体液が入った瓶が置かれてたの私のトラウマもんだからね。



まあ、 落ち着いて考えてみればさ、世間での顔と家族との顔が違うのはまあしょうがないよ。うん、アイドルってそう言う職業なんでしょ?私に世間の顔の通り優しくしろなんて言わないよ。せめてほっといてほしいの。私で鬱憤を解消しないでほしい。というか出てって。家から出てって二人暮しなり、一人暮しなりして。いや、しろ。


イケメンだから何を知っても許されと思ったら大間違いだから。


そんなこと言ってた女帝も麦わら帽子の人のムカつくって言われてたでしょ?


まあ、そんなわけで私は兄がしいてはイケメンが嫌いだ。


***


「ぬふふふふ」


放課後、教室の隅で気持ち悪い声をあげるのが私です。軽重小説を嗜みながら微笑んでいるのが私です。


やっぱり家に帰りたくない時はこれに限る。今日はあの野郎どもが午後からオフで家に帰っても何のいいこともないのだ。


ちっ!何、休みとかもらってんのよ?私生活クズなんだからちゃきちゃき外で働きなさいよ。ついつい自分の家の方に向かって呪を飛ばしてしまう。


とぁー怨怨怨怨怨怨怨!


「何してるの?」


「ひゃあ!」


驚いて持っていたラノベを落とす。


「ご、ごめん…そんな驚くとは思わなくて…」


「なんだ…杉本くんか」


私(さっきまでラノベを片手に持ち、片手を窓の外に向けブツブツ喋ってた人)に話しかける猛者は誰かと思ったよ。


杉本くん。私の前の席の男子。病弱らしくたまにしか学校に来ない子。猫背でなんか髪がもっさりとしていて目が完全に隠れている。それ前見えてるって感じ。ちなみに下の名前は忘れた。


「杉山だけどね」


おっと、上の名前も間違えてたよ。


「今日はどうしたの?授業中はいなかったよね?」


間違えたことを華麗にスルー!自然に会話を続ける。杉山くんは苦笑しながら席につく。多分私の顔の厚さを笑ってるんだ。


むふふ、これぞ私が身につけた処世術!どんなに嫌いだろうと笑顔で「うん、かっこいいよ!」って褒めることができる。ちょっとやそっとのことでは私の笑顔は揺らぎもしない!


「先生から少し呼び出されてね」


そっか…ついに単位足りなくて…私は優しく彼の肩に手を置く。


「ずっとタメ口でいいからね」


「いや、留年しないから」


「なんだ」


私は杉山くんへの興味が一瞬にして失せたので、本に顔を戻す。


はぁはぁはぁ。いいよ〜いいよ〜もうちょっと服破いてみようか。くーたまんないわぁ〜


「グヘへへへ」


「完全に変態の顔だよ…」


変態とは失礼な。こんなバリバリの生のJKに向かって言っていいことと悪いことがあるんだぞ!ぷんぷん( *`ω´)


「杉山くんだって好きでしょ?美少女」


「そりゃ、嫌いじゃないけどさ…」


「女の子に際どい格好してほしいでしょ?見えそうで見えないことに萌えを感じるでしょ?抱きついてペロペロしたいとか思うでしょ?」


「お、思わないよ!」


「またまた〜そんなうぶなふりしちゃって〜男子高校生の頭の中なんて桃色空間くせに〜」


「ぐっ…」


え?本当に変態だったの?引くなぁ!


変態で私に話しかけてくる変人とか人生終わってない?


「そ、そういえば!美少女じゃなくてイケメン系には興味ないのかな!」


「話の逸らし方が露骨すぎ」


イケメン系て(笑)。言いたい事はわかるけどもうちょい言い方あったよね?というかこの答えは決まってる。


「全く興味ないかな」


「へ、へぇ〜そう…」


何落ち込んでんのこいつ?あっ!まさか杉山くんは男性アイドルオタクでもあるの?それでその話題を話せる人を探していたと。


「ふっ」


「何?そんなに優しい目で見て」


「私が知ってるの“earth ”ぐらいだけどそれでもいい?」


「えっ本当に!」


うむ、人に喜ばれるというのは気分がいいのう。


ちなみに“earth”というのは私の兄たちが所属している3人組アイドルグループだ。メンバーは空、海、月の三人。私の兄は空と海でバリバリの本名プレイである。


何で恨みの対象である兄たちに詳しいかって?


無理矢理ライブに連れてかれるからだけど何か?新曲とか聞いて感想言わせれますが何か?出演番組も全部見せられますが何か?


私の脳は存外優秀なようで結構覚えてますから!


「じゃ、じゃああの三人の中で誰が一番好き!?」


おっと、最初にそれきちゃいますか〜わかる。わかる。相手の推しが誰かが一番気になるよね〜


しかし誰が好きか…正直に言ってしまえば誰も好きじゃないけど、ここでそれをいうのはKY過ぎるよね。だけど兄二人は死ねばいいと思ってるし、残りの一人は別に注目しなくても兄が気にしないからよく知らないし…


「まあ、まし《・・》なのは月くんかな」


「月くんが好きなんだね!!!!!!!」


うん?ちょっとニュアンスが違う気もするけど…まっいいか。そっか杉山くんは月くんファンか。兄二人を選ばないとは中々いいセンスしてるね。まあ、月くんがどんな人か知らないけど。


この後、杉山くんは一人上機嫌に喋っていた。どんだけ溜め込んでいたの?と疑問を抱くくらい。吐き出すだけ吐き出してスッキリとした顔で杉山くんは帰っていちゃのだった。めでたし、めでたし。顔…半分髪の毛で隠れて見えないんだけどね。


***


そしてまた一週間がすぎ、私は先週のように教師で本を読んでいた。ちっ何週一で休みなんか貰ってんのよ。私生活クズ(以下略。


「こんにちは」


「あれまぁ、どなたでしたっけ?一週間も学校サボる人の名前は覚えていなくてねぇ」


嘘は言ってない。未だに下の名前知らないし。


「本堂さん。少しお時間いただいていいですか?」


杉山くんは私のボケを回収しないで真面目な顔で言う。あっ本堂は私の名字です。名前は圭子。誰も興味ないか。もっと興味ないことを言うと親は空、海、大地って名前をつけたかったらしいけど最後に生まれたのが女の子だったからこの計画はおじゃんになったそうな。名前に土が2こも入ってるのはその名残。


閑話休題




「いいよ、聞いてあげる。パクっ。さぁ、はなしねぇ」


「とりあえずスルメを加えて片膝を立てないでくださいよ。どっから出したんですかそれ…」


ポケットだけど?


私は渋々スルメを咀嚼して飲み込む。


「で、何?」


私がしゃんとしたのを見て杉山くんは


背筋を伸ばしーー以外に背が高い


もっさりとした髪の毛を取りさらいーーカツラだった


私の目をはっきりと見ながらーー目が力強く瞬いて


告白したーー月くんの顔で


「本堂さんが好きです。僕と付き合ってください!」



***



「新しい朝が来た〜と」


私は上機嫌でテレビをつけトースターのスイッチを入れる。私がこんなに機嫌がいいのには訳がある。


それは昨日


杉山 月くんを振ってやったことだ。



『ごめんなさい』


『私別に杉山くんの事は嫌いじゃないけどずっとオタク友達としか見てなかったの』


『正直に言えば、杉山くんに惹かれたことは一度もないし、友達がいなくて私に話しかけてくる寂しい奴ぐらいの認識だった』


『これで普通に告白して来てくれたら、気まずい知り合い程度でいられたんだけど…』


『まず、“earth”の月を好きか確認したのがすごい気持ち悪いと思った』


『それで、(勘違いだけど)好きだとわかったら一週間後に告白とかありえない』


『どうせこの顔で告白したらいけると思ってたのが透けて見えるのよ』


『何なのギャップ萌えとか狙ってたの?放課後の教室。女子と二人きりとか。隠れてアイドル。実はイケメンとか。そういうワードにときめくと思ったの?』


『あんまり舐めないで』


『後、一つだけ言うね。私はイケメンが嫌い。自分をカッコいいと思い込んでる残念男が嫌いなの。顔が良けりゃ何やってもうまくいくと思ってる夢想男が本当に嫌い』


『私は本気で人は中身だと思ってる』




いや〜あの顔は本当に傑作だった。まさか断られるとは思ってなかったんだなぁ〜そういうところがいやなんだけど。



ーー次のニュースです。あの人気三人組アイドルグループ“earth”の月がグループを脱退しました。




はい?


え?え?えッ?ちょっまじですか?


あれ、これまさか私がやらかしちゃった感じ?


ーーピンポ〜ン


やっぱり!?正解だった!?


ってなんだ玄関の呼び鈴か。こんな朝早くに誰だよもう〜


私はこの時混乱していたのだと思う。だから、誰かを確認せずにドアを開けてしまった。


「はいはい、誰ですか?」


「こんにちは」


「うぇ!」


で、で、でたぁぁぁぁぁ!まさかの御本人登場!

家を訪ねるなら顔を隠せよとか、何で家知ってんの?とか何脱退とかしてくれちゃってんの?とか昨日の今日でよく顔出せたなとか色々ツッコミたいことがありすぎて言葉が出てこないよ!


いや〜ツッコミの積合せや〜


「すいません。突然訪ねて来てしまって。でも、一刻も早くこの想いを伝えたくて!あの後よく考えたんですが、やっぱり本堂さんがいや圭子さんが好きだなって思って。だから改めて言います」


「あなたの好きな人になるように頑張るので付き合ってください!」


早朝から何言ってんのこいつ!?何その告白の言葉。私の好きな人になったら私から告白するわ!なるように頑張るから付き合えってなに?


後、イケメンのその無駄にメンタル強いとこ、無駄にポジティブなとこ、人の迷惑を省みないこと、時と場を考えないとこ、思いを想いって漢字にしちゃうとことが本当に嫌なんだけど。


そこが一番わかって欲しかったんだけど。


深々と頭を下げているとこ悪いけど。





やはり私はイケメンが嫌いだ。






チーン


あっ…トースト…焦げたかも…はぁ…











連載の方は三月まで待ってください。

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