第八話「提案」
「提案」
しかし、マリアは死の直前に、ナイトに剣を残していた。
それは騎士の中の騎士しか使うことが許されない「ソード・オブ・キング」という特殊、かつ呪われた剣だった。
この剣は装備者に絶大な力をあたえるかわりに、世界一強いとされる騎士以外のものが使うとその魂を吸い取られるという恐ろしい剣だ。
しかし、マリアはナイトの急激な成長ぶりをみてこれはもう、自分が持つべきものではないと判断したらしい。
だからあえてそれをナイトに託したのだ。
しかし、彼女の死から3ヶ月たった今でも彼はそれを使おうとしない。
恐れからなのか、それともその強さゆえなのか・・・。そう考えさせられるほど、彼は強くなりすぎていた。
それを言付けるように、練兵場でまた一人、彼の手によってその尊い命を奪われた。
それを見かねて、ロッドがつぶやいた。
「マリア様がなくなって以来、あいつは感情ってやつを忘れちまったみたいだな。仲間まで殺すなんて・・・。次は俺たちかもな、なあ、ゴールド??」ロッドは隣でサッカーをしながら棒つきキャンディをなめているゴールドに返事を求めた。
「ほうふぁふぇ〜、ほうふぃふぁふぃふぁふぁふぇ〜。」 ・・・何を言っているかわからない
「・・・早く飲み込め。」
ロッドは呆れて顔で遊びをやめないゴールドをみた。
ゴールドはキャンディを噛みながら続けた。
「これで17人目、見方が殺されるの。そろそろ手を打たなきゃヤバイね〜・・・。でも僕あんなバケモノと話したくないな〜。だって・・・。」そこまでいうとゴールドは首を切られるジェスチャーをし、続けた。
「こうされそうじゃん!!マジビビっちゃうよね〜!!」
「そうはいっても一応お前は団長なんだから。あいつだってお前のいうことなら聞くはずだ。ちょうど次の任務がひかえてるんだろ??」
ロッドはグズグズしているゴールドをせかすように念を押した。 「わかったよ〜。せっかちなんだから〜。」
ゴールドはだるそうに返事をすると、剣についている血をふいているナイトにさりげなく近づいた。
「ねえ、ナイト。次の任務はジスニアの視察だね。だから〜、僕から提案なんだけど、・・・武器を持っていかないっていうのはどうかな〜??」
前のナイトなら絶対に反論しそうな内容だ。
しかし、彼は表情ひとつ変えずに承諾した。