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第二十八話「堕天使」

                    「堕天使」



ナイトは大きく息をすって、彼らに突っ込んでいった。

彼らは二手に分かれて、ナイトの意識を拡散させようとしたが、ナイトは最初から狙っていた手下を切り伏せた。

ボスはきっと強いはず。

手下を先に倒してから戦ったほうが、手助けをするやつがいない分、いくらか戦いやすくなる。

最初からそれを狙っての行動だった。

ボスはさすがに味方を全員やられて怒り狂っているのかと思いきや、意外にも冷静にその様子を眺めていた。

「本当にお前はめちゃくちゃだな。」

ボスのそんな言葉を無視し、ナイトはボスに切りかかった。

しかし、彼はガードする様子も、攻撃を避けようとする様子も無い。

ただ、笑ってナイトの行動を見つめているだけだった。

彼の意外な行動に少々驚いたものの、ナイトは的確に彼の肩を切りつけた。

すると、とんでもないことが起こった。

なんと、攻撃を受けたボスではなく、攻撃をしたナイトが肩に傷を負うことになった。

ナイトは肩をおさえて一旦ボスと距離をとった。

その結果に心底驚いて、混乱しているようだった。

しかし、ナイトが大怪我を負っている絶好のチャンスだというのに、ボスは攻撃してくる様子が無い。

ただ笑ってナイトを見つめるばかりだった。

その様子をみて、ゴールドがナイトに叫んだ。

「ナイト!!そいつ、ボディ・スリップっていう魔法を使ってる!!攻撃を受ける対象が変わる魔法だ!!」

それを聞いて、ナイトは冷静さを取り戻したようだった。

対処法はイマイチわからないが、攻撃を受ける対象が変わる魔法なら、こちらから攻撃を仕掛けなければいいだけのことだ。

どうやら自分の置かれている状況がわかったらしいナイトに、おもしろくない、といった様子でボスがようやく剣を抜いた。

「どうやら俺も本気を出さなきゃいけないみたいだな。同胞といっても、人間に加担している裏切り者に手加減はしないぞ。覚悟しろよ。」

そういってボスは目にも留まらぬ猛スピードでナイトに突っ込んで、凄まじい速さでコンボを繰り出した。

その速さに、さすがのナイトもギリギリのところでよけるのがやっとだった。

深い傷のせいか、いつになく息まで切らしている。

この様子だと、あまり長い時間の戦いには耐えられないだろう。

その様子を見たボスはにやりと笑ったあと、もう一度ナイトに突きを繰り出し、ナイトがそれをかわした隙をついて、彼の腹に一発協力なボディブローを浴びせた。

ナイトは傷の痛みと殴られた痛みに耐えかねてその場にしゃがみこんだ。

ボスはとどめをさすため、剣を大きく振り上げた。

反撃しようにも、痛みで体がいうことをきかない。

ナイトは覚悟を決めた。

ボスの剣が振り下ろされた瞬間、ナイトの剣がボスののどを突いた。

激しい戦いのまくがこれで降りたかのように思えた。

皆は安心して、仰向けに倒れているナイトのもとに向かった。

しかし、彼らを待ち受けていたのは衝撃的な映像だった。

今まで、絶対的な強さをほこったグローナル騎士団の団長が、右目から大量の血を流して倒れている。

「ナイト!!ナイト、ナイト!!」

騎士たちは激しく動揺し、何度も彼の名を呼んだ。

しかし、彼は指先を動かすのがやっとらしく、動かない手をムリヤリ動かして「生存」を伝えた。

この状態では、治療を急ぐ必要があるようだ。

彼らは急いで応急処置をし、グローナル城へ引き返した。


処置室から出てきたドクターにゴールド、ロッドの二人が駆けよった。

「どうなんだ??ナイトの具合は??」

「はい。何とか一命は取り留めましたよ。今は個室で休ませております。皆様の的確な応急処置のおかげですね。しかし・・・」

そういうとドクターは表情を曇らせた。

「ナイトさんの右目の損傷は予想以上に激しくてですね・・・。治療のしようがありませんでした・・・。」

「どういうこと??まさか・・・」

ゴールドは自分の予想が外れるようにと願った。

しかし、その予想はみごとに的中してしまった。

「・・・ナイトさんの右目は摘出させていただきました。彼の右目はもうありません・・・。つまり・・・」

「もう見えないということか・・・。」

言いづらそうなドクターに代わって、ロッドがドクターの言葉を代弁した。

「そんな!!それじゃあナイトの復帰はどうなるの??」

ドクターはうつむいて、小さく低い声で答えた。

「難しいでしょうね・・・。」

三人の間に気まずい沈黙が流れた。

「・・・申し訳ありません。私が力不足だったばかりに・・・。」

「ドクターのせいじゃない。それに、まだ復帰できないと決まったわけじゃない。」

「でも絶望的だよ・・・。」

彼らは、騎士団とナイトの未来を考えると、とても希望をもてなくなってしまった。


そのころ研究者の町ジスニアでは一人の女性がジスニアを後にして、東へ向かっていった。

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