第二十六話「悲しき死神」
「悲しき死神」
ユニット郊外ウォンサッギ・・・
この街には狼退治に来たことがまだ記憶に新しい。
以前来たときとはうってかわって、街中が活気付いて、穏やかな午後に戻りつつあった。
しかし、以前来たときと変わったのはそれだけではない。
「暗黒騎士団」と呼ばれていたグローナルの騎士たちは「英雄」と祭り上げられるようになったのだ。
今日も彼らが訪れると、街の住人は目を輝かせて大歓迎してくれた。
「おう!!あんたたちか。見ろよ!!この復興ぶり!!見ちがえただろ??これもあんたたちのおかげだぜ。」
騎士たちが通るたびに歓声が起きるほど、この街では彼らは特別な存在だった。
それは街の住人だけではない。
この街の村長も同じだった。
ちょうど街なかで彼らが村長と遭遇したとき、村長は嬉しそうに話しかけてきた。
「お前たち、来ていたのか。報告でもしてくれれば存分にもてなしてやったというのに・・・。でも、お前たちの出番は今のところなさそうだぞ??見てみろ!!あの日以来あの狼たちは来ないし、そのほかの目立った事件もない。平和そのものだ。ところで今日は何の用だ??視察か何かか??」
しかし騎士たちは、村長の表情とは似ても似つかない表情で黙ったままうつむくばかりで何も話そうとしない。
「ここにいる住民に殲滅令が出たからだ。」
彼らの気持ちを察してか、ただ単にKYなのかは謎だが、何も話そうとしない彼らにかわってナイトが冷たく言い放った。
その言葉に、村長を含めた街の住人は耳を疑った。
「そ、そんな、馬鹿な・・・。わしらが国に何をしたというのだ!!わしらはただ・・・ただ、自分の生活を営んでいただけだ!!」
彼の言葉の意味をわかっているのかわからないが、それでもナイトは冷たく続けた。
「あなたたちの事情がどうであれ、これは国の命令だ。我々が逆らうことはできない。あなたたちもだ。命令が下された以上、我々はその命令に従うだけだ。」
彼のその言葉はグローナルの騎士たちに向けられているようでもあった。
そういい終わるとナイトはゆっくりと剣を抜いた。
その仕草をみた村長は慌てて抗議した。
「ちょっと待て、ナイト。いくら命令と言っても従うべきものとそうでないものがあるだろう??これの場合はお前にとってはどうなのだ??」
「従わざるべき命令など、この世に存在しない。」
彼はさも当然のように言った。
彼の言葉を聞いて、村長は彼らの行動を悟った。
村長は住人のほうを向くと大声で叫んだ。
「皆のもの!!逃げるのだ!!生き延びるのだ!!」
「無駄なことを。」
ナイトはそうつぶやくと、すばやい動きで逃げ惑う住民を次々と切り捨てていった。
ナイトの行動を見て、それまでうつむいていた騎士たちも、不本意ながら殲滅を開始し始めた。
女子供関係なしに騎士たちの剣は次々と住人たちの体を引き裂いていった。
村長はナイトの剣を受け止め、応戦しようとしたが、彼の剣圧で吹き飛ばされた。
倒れた村長ののど下にナイトは剣を突きつけた。
「覚悟しろ。」
彼の冷たい言葉に自分自身の命の終わりを感じた村長はゆっくり目を閉じると、ナイトに最高の恨みを込めて、一言つぶやいた。
「やっぱりお前たちは暗黒騎士団だな。」
彼の遺言を聞いた後、ナイトは勢いよく剣を振り下ろした。
「任務、完了。」
西に傾ききった太陽が、ウォンサッギの街を赤く染めていた。