第二十四話「血縁関係」
「血縁関係」
「そうか。あの狼たちを撃破したか。それはご苦労だったな。」
村長は騎士たち一人一人にお茶をだし、静かに言った。
「そうだよ〜♪僕たち強いでしょ??褒めて褒めて★」
「しかし、これができたのは俺たちだけの力じゃないんです。ロドリゴたちが協力してくれたから・・・。」
ゴールドの傲慢な態度に逆上して、またロドリゴが怒り出す前に、ロッドがロドリゴを見ながら、すかさず口を挟んだ。
するとロドリゴは不服そうに村長に言い訳した。
「違う!!こいつらが勝手に俺たちの獲物に手を出してたんだ!!こいつらは俺の管轄の場を荒らし回ってたんだよ!!」
「ロドリゴ」
村長は興奮するロドリゴを落ち着かせようと、優しく語りかけた。
「別にわしは彼らにも、お前にも怒ってはいない。むしろ感謝しているのだ。よく、彼らと協力して戦闘ができたな。偉かったぞ。」
「俺は協力した覚えはねぇな。危うくあのクソガキに」
といってナイトを指差し、続けた。
「殺されかけたんだ。とても協力してるって感じじゃなかったな。」
村長の言葉に内心嬉しい気持ちでいっぱいだったロドリゴだが、ここで手放しで喜んでは騎士の名がすたる。
ロドリゴは、嬉しい思いを隠して、わざとひねくれたセリフを返した。
「なに、どっちにしろお互いに助かったのは事実だ。彼らには礼を言わんとな。」
そういって村長は、グローナルの騎士たちに頭を下げた。
するとナイトは待ちくたびれたのか、用件を切り出した。
「ところで、村長。報酬はまだか??」
「おお、そうだな。これが約束の10万ドルだ。」
そういって村長は大きなトランクの中から札束を取り出し、ナイトに渡した。
それをみたロドリゴは、どうも納得いかない様子で噛み付いてきた。
「ちょっと待てよ。何でてめぇが全額もらってんだよ??」
「そういう契約だからだ。」
ナイトはさも当然のようにさらっと答えた。
「そんなのありかよ!?俺たちだって戦っただろうが!!」
「勝手にお前たちが加わってきただけだ。」
「ふざけんな!!」
このままではまた喧嘩だ。
しかし、村長はそのことで提案があるらしく、片手を挙げて、ロドリゴを黙らせた。
「ロドリゴ。誰がお前たちに報酬をやらんと言ったんだ??お前たちのぶんもちゃんと用意してある。祖父というのは、孫には何でもやりたいものだ。」
しかし、ロドリゴはその言葉に戸惑いがあるようで、ナイトに話す時とは別人のような小さい声で言った。
「で、でもよぉ・・・。恩人から金を取るって言うのは何か・・・ちょっと違うような気がするんだが・・・。」
村長は、そのロドリゴの心中を察していたのか、優しく、包み込むような声で言った。
「だがお前たちも戦ったのだ。報酬をもらう権利がある。これは決して巻き上げるのとは違う。仕事をしただけの「報酬」だ。そうだろ??」
黙って動こうとしないロドリゴに、村長はなかば強引に札束を渡した。
「これはお前へのプレゼントだと思って受け取れ。」
しかし、彼が本当に気になっていたのは、そのことではなかった。
「これはありがたくもらおう。でも、でも、俺は本当にあんたを「じいさん」って呼んでもいいのか??だって、俺はあんたのホントの孫じゃ・・・」
ロドリゴは、小さいときに戦争で、グローナルの騎士に両親を殺された孤児だった。
身寄りのないロドリゴを孤児院から救い出し、わが子のように育ててくれた村長には、感謝しても、し尽くせないほどの恩というものがある。
しかし、それでも「じいさん」と呼ぶのには、やはり、少なからず抵抗があった。
しかし、村長はロドリゴのその思いを断ち切るように、情けない言葉を聞かないように、ロドリゴの言葉を途中で切って、元気よく宣言した。
「わしと血がつながってようがなかろうが、今更それは関係のないことだ。別にお前がそうなりたくて、なったわけじゃないのだから、引きめを感じることは全く無い。わしのことは、本当の祖父だと思っていい。」
村長はそういうと、自分よりも遥かに背の高い、ロドリゴの頭をなでた。
ロドリゴは、今まで感じたことの無かった愛を感じ、にっこりと笑った。
グローナルの騎士たちは、その暖かい笑顔に見送られながら、ウォンサッギを後にした。