第二十三話「暗闇の戦い」
「暗闇の戦い」
そのナイトの声と同時に、騎士たちが目を覚ましたかのように狼たちの群れの中にもう一度突っ込んでいった。
しかし、騎士たちは、今度は一人一人各々で戦う気はさらさら無いようだ。
剣術に長けたものが前に出て、魔術に長けたものが後ろで魔術を放つ絶好のときを待つ。
つまり、前衛組みは言わば「おとり」で、魔術師たちが「本体」になる、前衛・後衛型の戦い方に変更したのだ。
しかし、ロドリゴはナイトのその判断に納得いかず、ナイトの胸ぐらをつかんで、大声でナイトに怒鳴りつけた。
「なぜ俺たちの邪魔をする??お前らは引っ込んでろ!!」
するとナイトはその手を静かに払うと、冷たい声で言い放った。
「邪魔ではなく、加勢だ。現にあなたたちの今の実力ではこの狼たちに勝てる確率は0.000001%だ。この数値はほぼ0に等しい。つまり、我々の加勢なしであなたたちが彼らに勝つことはできない。」
ナイトの言葉に、ロドリゴは余計に腹が立ったらしく、
「うるせぇ!!てめぇなんかに助けてくれなんて頼んだ覚えはねぇ!!勝率は・・・0.0001だかなんだか知らないが、あることにはあるんだ!!こいつら下がらせろ!!」
「その要請は承認できない。また、勝率は0.000001%だ。」
ロドリゴの言葉にナイトは丁寧に言い返した。
「知るかそんな数字!!もし下がらせないんだったらお前ら・・・」
ロドリゴがナイトにインネンをつけようとしたとき、急にナイトがすばやく剣を抜き、ロドリゴに切りかかった。
なんとかギリギリのところでかわしたものの、もし当たれば大怪我どころではすまない。
「あっぶねぇな!!バカヤロー!!てめぇやるならフェアにやれよ!!」
ロドリゴの言葉を無視すると、ナイトはロドリゴに背を向けて、狼たちの群れのほうへ歩いていってしまった。
彼を追いかけようとしたロドリゴの背後でドサッという妙な音が聞こえた。
振り返ってみると、狼が5、6体、ばっさり真っ二つに切られて倒れていた。
狼たちに囲まれたゴールドたちだったが、ロドリゴ一行の加勢により、優勢を保っていた。
お互いに助け、助けられの二人三脚で狼たちを倒し、あと一息というところまで狼たちを追い詰めた。
また、ゴールドには得策があるらしく、そこまで狼たちを追い詰めたのにも関わらず、一旦距離を置いて、あえて彼らに攻撃するチャンスを与えた。
案の定、狼たちはゴールドに向かってグラウンド・マジックで作った、空気の針を放ってきた。
するとゴールドは、待ってましたと言わんばかりに、グラウンド・マジックをお返ししてやった。
ゴールドは空気の濃度を調節して、厚く、弾力性のある空気の壁を作り、空気の針を彼らに向かって跳ね返して、彼らを一掃した。
騎士たちはロドリゴの意向とは裏腹に、グローナルとユニットで協力して、狼たちを殲滅した。
最後の一匹が倒れたとき、ナイトが一声かけた。
「ターゲット、デリート完了。戦闘終了。」
その声を聞いて、騎士たちからは歓声が上がったが、ひとりだけ今の戦いに納得がいかないものがいた。
ユニットの騎士団の団長ロドリゴだ。
ロドリゴはロッドとナイトの前に立つと、先ほどよりももっと大きな声で抗議をした。
「なぜ、なぜ俺が止めても邪魔をした??俺たちで十分だとあれほど言っただろ??」
「何度も同じことを繰り返すのは好きではない。あのままだとあなたたちが全滅する恐れがあったからだ。」
ナイトの冷たい返事にロドリゴは逆上して怒鳴りつけた。
「えらそうなこと言うな!!さっきの戦いだって貴様らは俺たちの足手まといだっただろうが!!」
「むしろ足手まといはあなたたちだったように感じるが・・・??」
「てめぇ・・・!!」
ロドリゴが剣を抜いて、ナイトに切りかかろうとしたところで、慌ててロッドが止めに入った。
「まあまあ、でも結果的に助かったんだからそれでいいじゃないか。ここで争ってもどちらの得にもならないだろ??それよりも早く長老に報告しにいこう。」
「ちっ・・・。」
ロドリゴは舌打ちをしたが、しぶしぶロッドの言葉に従った。
ナイトも、彼の様子をみて、剣を納めると騎士たちの群れについていった。