第二十話「栄光の覇者」
「栄光の覇者」
あれから9年の年月が過ぎた。
あんなに小さかったナイトも14歳になり、すっかり大人の顔になりつつあった。
昔から、整った顔立ちだっただけあって、成長した今は、女性の視線を欲しいがままにしている。
しかし、強さも、整った顔も、完璧なスタイルも、頭のよさも、女性の視線も手に入れたナイトの目標はただひとつ、最後に残った名声を手に入れることだった。
9年来、一度も王者の座を譲ったことのないゴールドに変わって、自分がこの騎士団を率いていくことを夢見ていたのだ。
彼は、ひそかにゴールドに勝つための特訓をしていた。
前にやったときは、ほぼボロ負け、いや、結果的には勝ったのだが、負けに限りなく近い勝ちだったので、今度は、ゴールドの動きなどを研究し尽くした。
その結果、ゴールドは、技の出、威力コンビネーションなどはとてつもなく良いことがわかった。しかし、その一方で、非常に命中率が低いことがわかった。それでやたらと攻撃を出していたわけだ。
数撃ちゃ当たる、ということわざもあるほどである。
これで彼の弱点がわかった。
ゴールドは絶対に普通よりも無駄に攻撃を打ってくる。
だから、攻撃をできるだけ避けて隙を作り、そこに強烈な一撃を加えればいい。
ナイトは、準備を万端にし、ゴールドに声をかけた。
「ゴールド、俺はお前に決闘を申し込む。俺と勝負しろ。」
ゴールドは意外に冷静な笑顔で、ナイトの求めに応じた。
「そっか〜。もうそろそろ来るころだろうとは思ってたよ。わかった。やろうか。言っとくけど、僕は手加減が苦手なんだ。本気でいくからね。」
「臨むところだ。おい、ロッド。今回も審判お願いできるか??」
「わかったよ。じゃあスタジアムで待ってるぞ。まったく・・・お前らは喧嘩が好きな奴らだな〜・・・。」
ロッドはため息混じりに返事をすると、スタジアムに向かっていった。
彼らもロッドの後を追ってスタジアムに向かった。
ナイトとゴールドは互いの位置につき、武器を取った。
ロッドがあの時と同じように、右手を上げる。
「レディ??」
ロッドの声で、二人は姿勢を低くし、構えた。
「ゴー!!」
その声と同時に、二人は地面を蹴った。
しかし、若干ゴールドのほうが早い。
このまま行けば、またしてもゴールドに先手を許してしまう。
だが、それは阻止された。
二人が地面を蹴った瞬間、ナイトから凄まじいほどの殺気が発せられたのだ。
戦いに慣れているゴールドでも、これだけ強い殺気は感じたことがなっかたため、思わずひるんでしまった。
ナイトは思いがけないゴールドの動きに少々戸惑ったが、その隙を確実についていった。
ナイトはゴールドの斧をいとも簡単に振り払うと、彼ののどに剣をつきつけた。
あっという間に勝負がついてしまった。
ロッドも負けたゴールドも意外な結果に驚いているようだった。
「俺の勝ちだな。団長の座はもらうぞ。」
ナイトはそういって剣を鞘に収めると、さっさとスタジアムを後にした。
呆然と座ったまま動かないゴールドにロッドが話しかけた。
「おい、一体どうしたんだ!?お前があんな簡単に負けるわけないだろ??」
その問いに、ゴールドが力なく答えた。
「いや、完全に僕の負けだよ・・・。あの殺気にはさすがに勝てなかったな・・・。僕よりアイツのほうが団長にふさわしいよ。」
ゴールドは立ち上がると、スタジアムを去っていった。
ロッドは彼の寂しそうな背中をしばらく見つめていたが、少し距離を開けて、彼の後についていった。