第十五話「掴めない男」
「掴めない男」
「ここか。」
街から少しわき道にそれた、目だたなさすぎる場所にその家はあった。
ナイトはノックしたら壊れてしまいそうなボロいドアを慎重にノックした。
「・・・。」
返事がない。留守なのだろうか。
ナイトはもう一度ドアをノックした。
すると突然ドアがゆっくり開いて中から中性的な顔立ちの男が出てきた。
「ノックはしないでいただけますか〜??ドアが壊れるので〜。」
やはり壊れるのか。
「そこにベルがあるじゃないですか〜。」
といって男はドアの隣にくっついているカメムシを指差した。
あれがベルなのか・・・。
「申し訳ない。ところで、あなたがMr.リオ・ランゴットか??」
そうでなければ話す意味がない。
すると男は優しく微笑みながら、答えた。
「ええ。そうですよ〜。この家は私一人しか住んでいないので〜。今一緒に住んでくださる方を募集中で〜す♪」
そういってリオはナイトに何かを訴えかけるような目で見た。
ナイトは嫌な予感がしたのではっきりと首を横に振った。
「そうですか〜。残念で〜す。それで、今日はどんなご用で〜??」
「あなたはテレパシーという技術について詳しいと聞いた。俺は今、任務でどうしてもその技術が必要なのだ。俺にテレパシーを教えてほしい。」
「それはいいですけど〜・・・。」
そういうとリオは黙って考え込んでしまった。
「何か問題があるのか??」
「はい〜。大変失礼だとは思うのですが〜、この技術は子供が理解して扱えるほど〜、優しい技術ではありませ〜ん。あなたに理解できるかどうか〜・・・。」
「そのことなら心配には及ばない。俺はグラウンド・マジックが使える。足りない分は努力が補ってくれるであろう。」
リオは彼がグラウンド・マジックが使えることを心底驚いているようだったが、何か複雑な表情をしている。
「あなたのような子供がグラウンド・マジックですか〜??普通では無理ですね〜。普通なら私も信じることはできませ〜ん。でもあなたは剣に「グローナルの騎士団」の刻印が押してありますね〜。暗黒騎士団の騎士ならば確かにグラウンド・マジックが使えてもおかしくありませ〜ん。あなたを信じましょ〜う。教えてあげますよ〜。」
「ご協力、感謝する。」
「いいえ〜、いいですよ〜。こんなところで立ち話もアレですから〜、さあさ、どうぞ中へおあがりくださ〜い。悪魔族のちびっこさ〜ん。」
「知っていたのか。」
「はい〜、噂では聞いていました〜。そうでなければグラウンド・マジックなんていう大技は使えませんから〜。でも安心してくださ〜い。私は世間の方たちのようにあなたを差別したりしませ〜ん。気にせずどうぞ〜。」
「ならば、お言葉に甘えてお邪魔させていただこう。」
そういってナイトは、土壁のボロ宿に入っていった。