第十三話「氷の心」
「氷の心」
ナイトは少女を自分の部屋に案内した。
風呂などの使い方を一通り説明すると、彼は考えた。
事情を聞こうにも、話せないとなるととても難しい作業になる。
せめて彼女の名と親の名くらいは聞ければいいのだが。
そこで彼はだめもとで彼女にあることを聞いてみた。
「お前、文字は書けるのか??」
しかし、彼女は首を横にふった。
やはり駄目か。ならばと彼はもう少しランクを落として聞いてみた。
「では、親か自分の名前は書けるか??」
すると彼女は机の上のペンと紙を手に取ると文字を書き出した。
文字、というよりはほとんど絵に近い感じだがそこにははっきりと「れいな」の文字が書かれていた。
「それはお前の名か??お前はれいなと言うのか??」
すると彼女は静かに首を縦にふった。
だんだん希望がみえてきた。
彼はそれならばと親の名がかけるか聞いたが、それは無理なのか彼女は躊躇して書かなかった。
「そうか、ならばもう良い。今日は疲れただろう。ゆっくり休め。」
ナイトはれいなに彼らしくない優しい言葉をかけると、武器の手入れを始めた。
彼女はうなずいたが、剣や銃などの普通では見られない代物たちに興味津々の様子だ。
彼のそばを離れようとしない。
それに気づいたナイトは
「なんだ、お前。これが気になるのか??それなら一度武器の手入れをしてみるか??」
と聞いた。
するとれいなは満面の笑顔で嬉しそうに大きくうなずいた。
感情を失いかけていたナイトだったがさすがにこの笑顔には心を動かされた。
人の感情を動かす為には、偽りの感情は必要ない。
本当の心からの感情を表し、全力でそれを表現することで初めて人の心を動かすことができるのである。
ナイトは彼女につられてか、微笑み混じりに
「そうか。なら俺が指示するからやってみろ。」
といって銃を手渡した。
重たいからなのか、慎重にしているからなのか、彼女は銃を両手で受け取ると、彼の指示に従い手入れを始めた。
いつもなら、面白くもなんともない手入れだが、今日の手入れは何か特別なものがあるらしい。
彼女は話すことはできなかったが、その一日、彼らの笑顔は絶えなかった。