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絶対、だめっ!  作者: 芝井流歌
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 やっぱり自分の部屋が一番落ち着く。

 誰にも関わらず踏み込まれず、静かに穏やかに過ごせるー!

 寝不足だった分、昼寝で睡眠時間を取り戻すぞ!

 ベッドに入ると久しぶりに心地よく眠れそうだった。

 今朝の凪沙とたまきさんのやり取りに頭が疲れたし、昼寝してすっきりしよう……。

 たまきさん、あんなにきらきらしててかわいいのに、なぜ変態な変換しかできないんだろうか。

 僕と凪沙のことを疑ってないのは幸いだけど、僕の気持ちを少しは察してくれてもいいのにな。

 やべぇ、切なくなってきた……。

 いいんだけどさ、片思いなんてそこらじゅうに転がってるんだろうし。

 僕だけが片思いしてるわけじゃない。

 僕はたまきさんに片思いで、凪沙は僕に片思いで、稔は凪沙に片思いで……、なんだ身内だけでこんなに片思いだらけじゃないか!

 あー……変な矢印が多いけどな……。

 たまきさんも誰かに片思いしているんだろうか。

 んー、たぶんそれはないか。

 なんせ男はみんな同性愛だとしか思えないんだしな、彼女の脳内は。

 あのきらきら笑顔は変態妄想を描いてるから輝いているんだと思うと苦笑いが出るなぁ……。

 美少年好きねぇ……、うちのかわいい弟に会ったら最後、妄想の頂点に掲げられそうじゃないか!

 いやいや、それはまずい!非常にまずい!

 僕の聖だけは例え脳内だろうが汚されては困るー!

 

コンコンコン。


 え、やばっ!母さんだ!

 昨日のごたごたは気付いてないだろうけど、そんなことがあったから寝不足で学校行きませんでしたーとか言えねぇ……。

 ど、どうしよう……。

 ここは寝たふりか?無視強行突破か?


 コンコン。


 しつこいな、僕は寝てると思ってくれよー。


「寝てるの?」


 うん、寝てるー!と心の中で叫んでおく。

 だからさっさと退散しておくれ。


「おにぃ、具合……悪いの?」


 ん?その愛しくてかわいいハスキーボイスは……。


「聖?」

「うん……、おにぃ起きてるの……?」

「起きてる、起きてるよー!入っておいでー!」


 そっとドアが開いたと思うと、隙間から聖が様子をうかがっている。

 なんだその御主人様の帰りを待ってたネコみたいな目はー!かわいすぎるー!


「どうした聖?入っておいで?」

「……具合、悪いんじゃないの……?」

「大丈夫だよー、心配してくれたのか?かわいいやつだなぁ。大丈夫だからおいでおいで」


 敬遠しているようにも見えるけど、すぅっとドアを開けておそるおそる入ってきた。

 誰も取って食べたりしないよー、たぶんな?


「聖、帰ってたのか?今日は学校早かったのか?」

「ふつう……、6時間目まであった……」

「え?もうそんな時間?」


 言われて時計を見るともう5時を過ぎていた。

 そんなに爆睡していたのか、そうとう疲れてたんだな。


「おにぃ、早退してきたの……?」

「あぁ、うん。でも頭が痛かっただけだから大丈夫だよ、寝たらすっきりしたしな」

「……じゃあ……入れていいの……?」

「うん?なにを?」

「なぎちゃんと……友達みたいのが来てる……」


 げ、あいつまた来たのかよ!

 しかも友達らしきってもしかして……いやな予感しかしないんだが……。


「聖、その友達らしきって背の低いかわいいお姉さんと、もうひとりは男だった?」

「……そう」

「おっぱらっておいで?凪沙おばちゃんに帰れって言っておいで!」

「……おにぃが言ってよ」

「いやいや、それはかわいいお前のお願いでもできないなぁ。あ、むしろお兄ちゃんのお願い、おっぱらってきてくれるよねー?」

「……やだ」

「や、やだってお前……」

「モンブラン……」

「え?」

「なぎちゃんがモンブラン持ってきてくれてる」


 あいつー!聖の好物で釣りやがって……くっそー!


「分かったよ、でもお前は宿題でもしてなさい。お部屋から出るなよ?」

「……なんで?」

「いいから!お兄ちゃんがいいって言うまでお部屋にいなさい、分かったな?」

「……うん」


 全然納得してないようだが仕方ない。

 かわいい弟をたまきさんの餌食にはさせられないからな。

 聖が出て行ったのと同時に、僕は玄関へと向かい外の様子をうかがった。

 声からして僕の予想通りの3人だ。

 せっかく安眠してすっきりしたところなのにまた頭痛の種を持ってきやがって凪沙のやろう……。

 しかもたまきさんのテンションめっちゃ高そうだし、かわいいけど嬉しいけど……どうなることやらだけど開けるしかない。

 しぶしぶ玄関のドアを開けると、無邪気にわくわくしている顔のたまきさんと、心配そうな顔の葉山弟、そしてなにも企んでいませんよ?と企みを隠しきれていないにやにや顔の凪沙が口ぐちにしゃべりながら入ってきた。


「おじゃましまーす!あ、これひーくんにモンブランねー!

「貴様……、聖の好物で釣りやがったな!確信犯めっ!」

「えー?なんのこと?あたしはひーくんにおみやげだよって持ってきただけなんだよ?それと、みのちゃんには抹茶プリンね、はい!」

「……僕のは?」

「なんで弥に差し入れしなきゃいけないの?勘違いしないでよねー?ひーくーん?モンブラン食べよー!」

「おいコラ!聖を呼ぶな!あいつは宿題中なんだよ!」


 僕の制止を無視して凪沙はずかずかとリビングのテーブルにケーキの堤を置いた。

 葉山姉弟も続けていそいそと上がってくる。

 まったく容赦などない!


「おじゃましまーす!弥くんち綺麗だねー!めっちゃ整理されてるって感じー!やっぱ美少年ちはおうちからして美しいのねー!」

「姉ちゃんの部屋がちらかりすぎなんだよー。薄い本買いすぎだし……、少しは制御しろよなー」

「自分の憧れの人に家の中を見られるのはこんなにも恥ずかしいものなのか!


 すんごいじろじろきょろきょろ見られてるんだが……。


「た、たまきさん?あんまり見ないでくださいよ……」

「あー!このクッションすんごいかわいいねー!手作り?誰の手作り?弥くんの元彼?」

「そ、そんなもんいませんよ!そのクッションは妹が家庭科で作ってきたんじゃなかったかな?」

「妹さんがいるのね!妹さんは兄の禁断の愛を公認なのね!それでこのクッションを使って弥くんに持たせて彼氏を落とさせようと……!うん、いいね!こんなかわいい物を持ってる弥が好きだよと言わせる作戦!それいい!妹さんグッジョブ!」

「妹を使って変な妄想しないでくださいよー!」


 さっそくの妄想炸裂にツッコミどころ満載であたふたしている僕の横から、凪沙が壁にかけてある写真を指さして言った。


「たまきさん、弥がいくら変態兄貴でもこんなかわいい時代もあったんですよー?こっちが妹の稔ちゃんで真ん中が一番下の弟で聖くん。下の2人はとってもいい子なんですよー!」

「きゃー!めっちゃかわいいー!3人兄弟の長男なのね、うんうん、美形家族なのね!会ってみたいなー!」

「弟の聖くんは部屋にいるみたいですよ?呼んできましょうか?」


 さっき僕が呼ぶなとあれほど言ったにも関わらず、凪沙は聖の部屋に向かって叫んだ。


「ひーくーん?一緒にモンブラン食べよー?出ておいでー!」

「呼ぶなっ呼ぶなっつってんだろアホ!」

「いいじゃない宿題くらいあとでやれば……。あんたなにをそんなにあせってるの?」

「分かんないのか!たまきさんは……」


 ガチャリとリビングのドアが開くと、中を覗いてる聖が顔を出した。

 そして一瞬時が止まったかのように全員が聖のほうを向いて固まった。


「……あ……なぎちゃん……」

「ひ、ひーくんモンブラン、モンブラン食べようか!ね、ね?」


 その異様な空気をさすがの凪沙も悟ったのか、急に動揺していた。

 嫌な予感がするものの、そっとたまきさんのほうへ目を向けると、やっぱり固まってじっと聖を見つめていた。

 やばい!たまきさんのロックがオンになってしまったー!


「あ、ひーくんご挨拶しようか。同級生の葉山秀助くんと、そのお姉さんの……」

「たまきだよ!聖くん?よろしくね!たまきちゃんって呼んでね?仲良くしてね?」

「……え……はい。よろしく……お願いします……」

「へー?弥の弟、ミニ弥って感じだなー!かわいいー!何年生?」

「何年生?4年生?5年生?お兄ちゃんのこと好き?」

「え……」


 スイッチが入ったかのような葉山家の質問攻めにビビる聖、それをあわてて止めようとする僕をにやにや見ている凪沙。

 こいつ、絶対こうなることを分かってて犯行に及んでるな!


「聖くんは好きな子いるの?男の子?女の子?それともお兄ちゃん?こっちの秀助おにいちゃんなんかどうかな?」

「姉ちゃん、かわいそうだよー!ね、聖くん俺とモンブラン食べようか!」

「秀助お兄ちゃんがいいの?いいのね!弥お兄ちゃんでもいいのよ?悪くないの、うん、兄弟だからって悪くないのよ!でも秀助おにいちゃんがいいならいいの!男同士でもなんにも恥ずかしいことないし、後ろめたく思うことはなにもないのよ!」

「ちょっとー、たまきさん!いい加減にしてくださいよ!弟がドン引きしてるじゃないですかー!聖、お兄ちゃんのところへおいで?な?」

「……やだ」

「ひ、聖?なんでお兄ちゃんがいやなんだ!こっちおいで、ほら!」


 な、なんか聖が今までに見たことない目をしている気がする……、心なしか顔が赤いような感じにも見えるし。

 そうか、さすがに6年生になってお兄ちゃんのところへおいでっていうのも子供扱いだったから嫌だったのかな。

 初対面の2人の、しかもそのうち1人はスペシャルにかわいいお姉さんだもんな、うんうん、聖も男の子になってきたってわけか。


「ひーくん、お茶どこだっけ?」

「おい!僕んちを自分ちのようにわらわらするな!僕がやるから座ってろよ。みんな紅茶でいいよな?」

「わー!美少年に紅茶入れてもらえるなんて幸せー!しゅーちゃんも手伝ってあげたら?絵になるぞー、わくわくっ」

「姉ちゃん落ち着けよー!聖くん、俺の隣おいでよー!取って食ったりしないからさー」

「こらっ葉山弟!少し黙ってろって。たまきさんもおとなしくしててくださいよー」

「……おにぃ」

「うん?なんだい聖?」

「おにぃ、たまきさんのこと……、好きなの?」


 小学生の一言に周りが凍りつく音がした。

 兄の恋愛対象をずばりと当てる小学生の弟、どうなんだ?

 それとも僕が分かりやすすぎるのか?


「あ、いや……、たまきさんはバンドのボーカルやっててさ、めちゃかっこいいんだよ。見えないだろ?こんな……か、かわいらしい人なのにさ……」

「おにぃ、顔……赤い」

「いやいやっ、あー!聖、紅茶のポッド取ってくれないか?そっちの右下の棚の……」

「……違うなら、俺、たまきさんと付き合ってもいい?」

「は……はぁ?」


 聖の突然の発言に思わず持っていた紅茶の葉っぱを落としそうになったけど、いやいや、自分の脳内変換が変なことになってしまったんだと思い直した。

 たまきさんの変態妄想に影響されて僕の脳内までおかしなことになってしまったのだ。


「ひ、聖ぃ?お湯がまだ沸かないから座ってていいぞ?あとはお兄ちゃんがやっておくから」

「……おにぃ、違うなら、いいんだよね?」

「な、なにがだよ?」

「俺、おにぃがたまきさんのこと好きじゃないなら、もらう」


 今度こそ紅茶を落としたのは言うまでもない。

 あまりの衝撃発言に動揺する僕とは裏腹に冷静な聖、その兄弟の姿にくぎ付けになる外野。

 この異様な空気に口火を切ったのは葉山弟。


「聖くん、弥お兄ちゃんは俺の姉ちゃんのことが好きなんだよ。だから聖くん、俺と付き合おう?」

「は……はー?なに言い出すんだよ!いろいろ言ってはいかんことを交えやがって聖をこれ以上変な世界に引きずり込むなー!」

「なんで?弥には姉ちゃんあげるから、聖くんは俺がもらってもいいだろ?なぁ、姉ちゃん?」

「うわー!ついにしゅうちゃんにも年下の彼ができるのかー!美少年候補だけど……未来の美少年だからショタコンでも許す!お姉ちゃんが許す!うん、っていうことはリバありだね、うん!しゅーちゃんが攻めでもツンデレ風に受け入れちゃう聖くん、逆にショタと思いきや鬼畜攻めな聖くんにたじろぎながらも襲われちゃうしゅーちゃん!きゃー!どっちもいいよ、いい!」

「ちょちょちょ、ちょっとー!変なカップリングも変な妄想もやめてくださいよー!葉山弟!お前はノーマルだろ?男に興味あるわけじゃないだろうが!」

「うん、ノーマルだと思ってたんだけどさ、なんていうか……姉ちゃんの妄想話聞いてたらかわいい男の子もいいなぁって思ってきてさー」

「いやいやいや!おかしいよな?おかしいだろ!たまきさんの影響で男に走るとか、もうそれは妄想じゃなくて現実に犯罪だぞ?うちの弟を犯罪に巻き込むんじゃなーい!聖と付き合うだなんて絶対許さんからな!」

「おにぃ、大丈夫、秀助さんとは付き合わない。俺、たまきさんと付き合うから……」

「だ、だめだだめだだめだ!なにを言ってるんだお前も!初対面の女性に対して勝手に話を進めるような……ていうか冗談はやめなさい!」

「……おにぃ、はっきり好きって言わないから。俺、たまきさんが好きだから付き合ってください」

「えー!聖くんてばだいたーん!お姉さんびっくりだよー!でもでも、聖くんにはうちの弟の彼氏になるっていう使命があるのよ?うん、お似合いだと思うし、運命だよ、運命だよこれは!」

「待って待って!たまきさんも待って!みんなおかしいよ?おかしくないかこんなのっ!」

「姉ちゃんがだめでも弥には凪沙ちゃんがいるじゃないかー。それとも聖くんから姉ちゃんを奪える自信があるのか?姉ちゃんは俺と聖くんが付き合うのは賛成だよなー?誰も異論はないはずだぞ?」

「い、異論だらけだ!第一たまきさんがだめでも凪沙がなんて選択しいらん!僕は一途に……、あ……」


 たまきさんが好きだ、なんてみんなの前で告白できるかー!

 そりゃ僕がたまきさんをってこと知らないやつはこの中にはいないけど……みんながいる前で、しかも弟の挑発に乗るような形で告白なんてできるかよ!

 でも、ここでうじうじしてたら聖の押せ押せムードにたまきさんが負けてしまうかもしれない……、いや、この人のことだから男には興味を示さないと思うけど……。


「一途に……?あたしのことが好き?兄と弟の奪い合いに挟まれちゃうの?あたしを巡って美少年兄弟がぶつかりあっちゃうのー?だめだめ、仲良くしなきゃだめだよー!あ、でもそのぶつかりあいの末にお互いのいいとこがちらほら見えてきて、お互いに兄弟の枠を超えて両想いになってく展開もありかもー!きゃー!新しいなー、うん、うん、ケンカしたほうがいいよ!あたしを巡ってケンカして、行く末には禁断の兄弟愛が始まって……きゃー!」

「た、たまきさん……」

「弥くん、皆まで言うな、分かってる!聖くん、君の気持ちも受け取ったよ!さぁそして兄弟で奪い合うといいよ!そしてそこに聖くんを狙うしゅーちゃんが参戦!あぁー素晴らしいー!鼻血でちゃうー!」

「聖くんも弥も姉ちゃんのことを好きになるなんて、血は争えないなー。聖くんは諦めて俺と付き合ってくれればいいのにー」

「しゅーちゃん、それはいいけどそれはだめなのよっ!兄弟がいい感じに仲良くなりだしたところでしゅーちゃんが聖くんを奪いに現れる、それがロマンス!最高にロマンスだよ!」

「姉ちゃん、恋愛ってシナリオで動くもんじゃないだろー?」

「たまきさん、弟のいう通りですよ!勝手に段取りつけるもんじゃないです」

「おにぃ、……なぎちゃんがおにぃのこと好きだって気づいてないの?」


 またまた聖の爆弾発言に一同の目が凪沙のほうへ向く。

 今まで外野を楽しんでいた凪沙もさすがに凍り付いていた。


「弥くん!やっぱり幼馴染にはなにかあるって!なにかあるって思ってたのにかくしてたのっ?そうならそうと言ってくれればよかったのにー!ね、凪沙ちゃん?弥くんのこと好きだったんだー?」

「俺も弥と凪沙ちゃんはなにかあるって思ってたんだよなー!まさか今朝の弥がキス下手って話、凪沙ちゃんとの実話だったんじゃないかってにらんでてさぁー!」


 や、やめろ!それ以上言うなー!

 あのキスはなんとなくしたキス以上になんにもないんだってお互いにわきまえたとこなんだぞっ?

 おそるおそる凪沙に違うと言う言葉を言ってくれと目で合図したら凪沙はため息をついて口を開いた。


「みんなが変な方向に傾いてるみたいだけど……、あたしは別に片思いでいいし、弥と付き合いたいとは思ってない。別に付き合っても今の状態が変わるわけでもないでしょうしね。弥がたまきさんのこと好きでも、あたしは弥が好き。昨日のキスで改めて自覚したし、やっぱあたしこいつに惚れてるんだなって……なんか文句ある?」


 今まで散々言いたい放題だったリビングが静まり返った。

 ひ、否定どころか暴露ですか……、ていうか僕本人にもそこまではっきり言ってなかったくせに……。

 しかも昨日のことまで暴露かよー……。


「へぇ……?おにぃ、なぎちゃんにキスしたんだ?たまきさんのこと好きなのに?」

「えっ?いや、それは違う違う!昨日はその……いろいろあったんだよ!だからその……」


 あーもう!どう転んでも悪いほうにしか転ばないじゃないかー!

 どうしてくれるんだこの状況!


「……あのさ、さっきからただいまって言ってるんだけど?」

「み、みのちゃん!お、おかえりー……おじゃましてまー……す」


 なんとまぁ修羅場の時に帰ってきやがるこの妹のタイミングの悪さ……。

 いつからいたのか分からないけど、じぃっと僕のことを睨んでいる……。


「稔、お、おかえり……いつ帰ってきたんだ?」

「帰ってきてほしくない話してたみたいだね、おにぃ」

「え、……え?」

「あたしがなぎちゃんにキスしてたら殴りかかってきたくせに……自分は好きでもないなぎちゃんとするんだ?キス」

「違う違うっ!落ち着け稔……っ!僕は別に女同士だからだめだと言ったわけじゃないだろ?な?寝こみを襲ったりとか、幼馴染の凪沙にするのはどうだって言っただろ?お前が凪沙を好きだということは否定してないじゃないか、な?落ち着け!」

「あたしがなぎちゃんのこと好きだって知ったあとにしたんでしょ?好きでもない片思いのなぎちゃんにキスしたんでしょ?」


 全員の目が僕に集まってくる……。

 今にもブチ切れそうな稔、最低といいたげな冷やかな目の聖、お気楽そうに展開を待っている葉山家、みんなから集まる視線を浴びてたじろぐ僕を開き直って見る凪沙……。


「あぁ、だから……したけど……しちゃったけど雰囲気でっていうか……はい、ごめんなさい……」


 いやもうここは認めて謝るしかない。

 謝るのが正しいかは分からないけど、それしか思いつかない!


「おにぃ……さいてー……」

「なぎちゃんかわいそう……」

「弥、やるなー!姉ちゃんのこと好きだとか言っておいてやることやってんじゃーん!」

「弥くん、あたしのことはいいのよ!兄弟愛も大事なんだからね?その上に恋愛があるんだから、そう、妹ちゃんが凪沙ちゃんを好きでも、弥くんと聖くんが思いあってても、しゅーちゃんと向き合ってても、あたしはぜっんぜん大丈夫だから!うん、むしろカモンだよ!いろんな愛の形があるんだもん、恥ずかしがることじゃないよ!さぁ、もっと禁断の話を言っちゃうんだ!」

「だから……凪沙とはそれだけで、それ以外はなにもないし、もうこの際だからぶっちゃけますけど、僕が好きなのはたまきさんだけですから!」


 しーん……。

 ってならないでほしかったけど、それは無理な話だよな……。


「ねぇ弥?あたしがあんたに片思いしてるように、あんたもたまきさんに片思いでしょ?じゃあひーくんがたまきさんに片思いでも、葉山くんがひーくんに片思いでも、みのちゃんがあたしに片思いでも、別にあんたがだめだめ言う権利はないでしょ?」

「……そ、それは……」


 言いたいことは分かる、そうなんだけど、片思いが悪いことではないんだけど……。

 でも、分かってても妹が幼馴染の女の子が好きとか、弟が僕と同じ人を好きだとか、同級生の男が弟のことが好きとか、いや、だめじゃないんだけど……。

 いや、やっぱだめだ!

 絶対、だめー!


ここまでお読み頂きましてありがとうございました。


怒濤のラストでしたが、人間関係が分かりづらくなかったでしょうか?

かなり書き直したので伝わっていれば安心です。



今後の活動の参考になりますので、ご意見やご感想などございましたらよろしくお願い致します。

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