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夢と希望と海賊船  作者: 五十鈴 りく
Ⅲ・宝石と恋人と女王陛下 

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⑬真偽のほどは

 そんなゼノンとのやり取りの後、あたしたちはディオンのもとへ向かった。

 城下町へ行く許可を求めるためだ。

 わかりきってたけど、やっぱりディオンはすっごく嫌な顔をした。


「アホか」


 全否定だ。あたしはそれくらいじゃめげなかったけどね。


「でも、手詰まりなんでしょ?」


 あたしのそのひと言に、ディオンは顔をしかめた。そして、ゼノンをちらりと見遣る。ゼノンはかぶりを振った。


「俺は何も話してないよ」


 情報源ニュースソースが絞れないんだ。まさかヴェガスとは思わないか。


「あれだけバタバタしてれば、誰だって何か探ってることくらい察するよ」


 とか言ってごまかす。ディオンはチッと舌打ちした。


「えっと、あたしとマルロはゼノンと一緒に行動する。これだけは約束するから」


 すると、ディオンは深々と嘆息した。


「……それから、船の外では絶対にエピストレ語を話さないこと。話せることを誰にも覚られるな」


 お、いい流れ?


「もちろん!」


 と、あたしは大きくうなずいた。

 すると、ディオンはゼノンに目を向けて渋々言った。


「出かける前にこいつらに詳細を話しておいてくれ。首に縄をつけてもいいから目を離すな」


 いや、それ駄目でしょ。


「了解」


 縄はつけないよね?

 ディオンはちょっと疲れた顔してる。宝石の捜索はやっぱり難航してるんだ。

 ……大丈夫かな?


「じゃあ、ミリザとマルロは明日の朝、俺のところに来て。説明してから出かけるから」

「うん!」

「わかった!」


 マルロも俄然張りきってる。マルロはディオンの役に立ちたいんだもん。

 明日に備えて船長室を出ようとしたあたしたちだったけど、どうしてだか不意にディオンはマルロを呼び止めた。


「マルロ、少し残れ」

「え?」


 マルロは戸惑いつつもちょっと嬉しそうだった。

 何? あたしには内緒の話? ……別にいいもん。あたしはヴェガスと話すから。



 ことの顛末をヴェガスに伝えると、ヴェガスはすごく心配してくれた。


「私もついて行けたらいいのだが……」


 パルウゥスのヴェガスは、あたしたち以上に危険だ。つかまったら奴隷にされちゃう。

 パルウゥスたちの膂力は並の人間よりもずっと強いけど、そこはやっぱり多勢に無勢。よってたかって拘束されたらどうにもならない。


「大丈夫、ゼノンもいてくれるし。あたしが集めた情報が役に立つといいんだけど」


 こうしてヴェガスと話していると考えがまとまる。

 ディオンもきっとそう。だからヴェガスに相談したんじゃないかな。

 ヴェガスはそれでも心配そうにあたしを見た。


「ミリザ、決して彼から離れてはいけないよ?」

「うん」


 そう言ってうなずいたら、ヴェガスは安心してくれると思った。でも、実際はまだ心配そう。

 あたしって信用ないなぁ……。



     ☠



 そうして、ドキドキしながら迎えた翌日の朝――。

 ゼノンは船室の中であたしとマルロに事情を話してくれた。あたしはヴェガスから簡単な話を聞かされてる。だから初耳ってフリして話を聞いてたけど、マルロにしてみたら本当にびっくりだったよね。


「女王陛下の宝石……」


 そうつぶやいた。ゼノンは大きくうなずく。


「俺たちが集められた情報によると、宝石を盗まれたのは海軍中佐パゴニ卿の子息、セラス殿――陛下の『お気に入り』の一人だ」


 ああ、ディオンと同じ『女王の恋人』だ。

 ここは口を挟まずに黙ってゼノンの話を聴く。


「稀少な宝石を入手したと吹聴していたらしいことを周囲は聞き及んでる。でも、いざ謁見の時になってその宝石がないと騒ぎ出したらしい。本当は大したことのない宝石を誇張して言った手前、出すに出せなくなったんじゃないかとか、はなからそんなものはなかったんじゃないかって言い出す人もいたけど、そこは陛下がセラス殿を信用された。宝石は盗まれたのだと。陛下がそう仰った以上、なんとしてでもその宝石を探し出さなければことは収まらないわけだ」


 うぅん。ほんとに、そのセラスって人の嘘じゃないならいいんだけど。


「ディオンは一応セラス殿に話を聞いたらしいんだけど、要領を得ないって言ってた。宝石の色形を語る時が嫌に曖昧だって。形はネックレスに加工してあるらしいんだけど、色は青緑色だって、やっとそれだけ聞き出せたみたいだ」


 あたしは少しだけ気づいたことをつぶやく。


「ディオンに宝石の話をしたくなかったのは、ディオンの手柄になったら嫌だから?」


 本来だったら、珍しい宝石を陛下に献上して自分の評価を上げたかったはずなのに、これじゃあ本末転倒だもん。

 ゼノンも苦笑した。


「多分ね。でも、宝石が見つからなくて困るのは誰よりもセラス殿だ。ただでさえ嘘つき呼ばわりされてしまっているのに、このまま宝石が見つからなかったら失脚してしまうだろうね」

「うわ……」


 そこでマルロがませた口調と笑顔で言った。


「そのセラスって人に恩を売るのも悪くないね」


 マルロってば。でも、ゼノンはうなずいた。


「そういうことだ」


 あたしは意気込みを新たにした。


「よし。じゃあがんばって探そうね!」


 ただ、そんなあたしの熱意をゼノンは不安そうに眺めてたような?


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