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夢と希望と海賊船  作者: 五十鈴 りく
Ⅱ・先生と師匠と島探検

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⑯採取を終えて

 小船はゆっくりと島の周りの海を漂い、そうして浜に到着した。あたし以外はみんなびしょ濡れ。それにちゃんとした食事も摂ってないし、さすがにちょっと疲れた。


「一度屋敷に戻る。そのうちゼノンも帰って来るだろ」


 ゼノンだけは森林の道を引き返したんだよね。

 みんなで領主館に向い、硝草の入った麻袋を入り口に下ろした。そして、エセルは伸びをする。


「じゃあ、風呂入って着替えてからまた来るよ」


 手をヒラヒラさせながら軽くそう言ってエセルは去った。ヴェガスとスタヒスに向け、ディオンは言う。


「Σας ευχαριστούμε για σήμερα.Επιβραβεύστε θα έχω σε μεταγενέστερη ημερομηνία」(今日は助かった。報酬は後で持って行く)


 二人は大きくうなずいた。


「Ναι.επίσης, σε μεταγενέστερη ημερομηνία」(はい。また後日に)


 ヴェガスとスタヒスはディオンのそばのあたしにも笑いかけた。


「Αντίο.Θα σας δούμε και πάλι」(さよなら。またね)

「Αντίο.Θα σας δούμε και πάλι」(さよなら。またね)


 あたしも二人にそう返して手を振った。二人が遠ざかると、ディオンは小さく嘆息し、それから言った。


「オレも風呂に入って着替えて来る。お前も後は好きにしろ」

「うん。その硝草、その後どうするの?」

「加工場に持って行く」

「あたしも連れて行ってくれるよね?」


 自分で採った硝草がどうなるのか見届けたい。でも、ディオンはやっぱり嫌な顔をした。


「どこまでも機密に頭を突っ込むやつだな」

「いいじゃない。今更でしょ?」


 あたしが不敵に笑うと、ディオンは諦めたみたい。


「オレよりも支度が遅かったら置いて行くからな」


 ってことは、連れて行ってくれるって意味だよね。


「うん、ありがと」


 笑ってあたしはディオンと別れて部屋に戻った。海に飛び込んではいないけど、土とか草の汁とか汚れがひどい。あたしも軽くお風呂に入ることにした。沸かしてる暇もないから、水風呂。大急ぎで入って汚れを落とした。服もマリエラからもらったスカートとブラウスに着替える。

 部屋から飛び出してディオンのところへ、誰も見てないと思って廊下を走ってたあたしを呼び止めたのはゼノンだった。


「ミリザ!」

「あ、ゼノン!」


 あたしはそのまま方向転換をして屋敷の入り口の方に駆け寄った。小銃やロープも持ってないし、一度部屋に戻ってたのかも。


「おかえり!」


 出迎える犬みたいにまとわりつくあたしに、ゼノンは優しく笑った。


「ただいま。とにかく無事でよかったよ。ほんとに、上で見てても気が気じゃなかった」

「あ、大鷲追い払ってくれてありがと! 一発で的中だもん、さすが師匠!」


 えへへ、とあたしも笑うと、ゼノンはちょっと照れたようだった。


「拳銃習ったけど、あたし、今回は抜く暇なかったね」


 まあ、今後の役には立つはずだから練習は続けるつもりだけど。

 すると、ゼノンは小さくかぶりを振った。


「抜くことがなくて何よりだ。できるならそれが一番いい」


 それもそうかも知れない。そうあたしが納得してると、ゼノンは少しだけ厳しい目をした。


「でも、次からは留守番していてほしいな。それが俺の――いや、俺たちの共通の意見だと思うよ」


 う。


「足手まといだったのはわかってるんだけど……」


 あたしがしょんぼりすると、ゼノンはきゅっと眉根を寄せた。


「危ないって言いたいんだ。怪我とかしてほしくないからね」

「うん、ありがとう……」


 心配かけたんだなって思う。ありがとう。でも、ごめんね。

 あたしは自分の心に正直に生きたい、それだけ。勝手でごめんね。



 そうしてディオンの部屋に行くと、美味しそうなにおいがした。どうやら料理を運んでおいてくれたみたい。お風呂に入っている間に用意してくれたみたいで、白身魚と鶏肉のフリッターは揚げたて。手軽に食べられるように一人分ずつバスケットにサンドイッチと一緒に取り分けてくれてある。


「お前らもさっさと食え」


 ディオンはそれだけ言うと再び食べ始めた。あたしとゼノンも慌てて食べる。ほぼ立ち食い。

 そうしてると、エセルがやって来た。


「あ、美味しそうだな。軽く食べて来たけどせっかくだし」


 最初から人数よりも多く用意されていた。ディオンたちが足りないといけないからかな。

 みんなは喋りながら食べてたけど、食べるのが速い。だからあたしは無言で黙々と食べてた。う、のど詰まる。

 あたしがなんとか食べ終わるのを、ディオンは一応待っていてくれたのかな。


「じゃあ、行くぞ」


 食べたすぐに動くと脇腹痛い……なんて言ってられない。


「うん!」


 あたしは大きくうなずいてディオンたちの後に続いて部屋を出た。

 

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