山のお宿
企画参加させていただきます
よければ最後まで読んでくださると幸いです
トタトタと音がする。でも、決して姿を見ることは叶わなかった。
ある県に取材に行くことになった。駅の近くのホテルを予約しようとしたのに、全て満室。仕方が無いので少し遠い宿に行くことにした。
宿に着いたのは夕日が沈みかけている頃だった。山中にあるそこは民宿のようで、少し年配の夫婦が快く迎え入れてくれた。
案内され中に入ると廊下は薄暗く、人感センサーがついた照明は人が通った後につくようだった。
トイレには市松人形が飾られており、少し斜めを向いているため腰掛けるとじっとこちらを見つめる形になる。風呂場は少し広く大きなすりガラスがついていたが、外が暗いためここも薄暗かった。
最後に部屋に案内された。部屋を出入りする時は鍵を閉めることを再三言われ、人は他に居ないようなのに何故なのかと思いながらも頷いた。
やっと休憩できると思い、ベッドに服も着替えず横たわる。そこでふと外の景色が気になった。山の中なのだから緑が生い茂っているのだろうと何故か思った。
ご想像通り外は真っ暗で何も見ることはできなかった。
少しして、部屋を探検しようと思い立った。他に泊まる客が居ないからかベットが2つある部屋に通して貰えたが、まだまだ広いのか他にも扉があったのだ。
1つは恐らくクローゼットの扉だった。開けようとしても鍵がかかっているらしく開かなかった。だが本命はもう1つの扉だった。
隣の部屋に行くことができる扉だろうとあたりはつけたが、隣に本当に部屋があるのかは分からなかったのだ。
なんせその部屋は左は廊下で右は階段、前は洗面所で後ろは私の部屋と、四方を囲まれていたのだ。しかも他に扉は見当たらず、私の部屋の扉以外どことも繋がっていないようだった。
いざ、と少し力みながらドアノブに手をかける。だが開かない。扉の奥に荷物か何かがあるのか押さえられているかのように開かない。
期待損だった。
そのまま風呂に入って寝ることにした。どうせ2泊3日だ。なんの部屋なのかはあの笑顔が素敵な奥さんにでも聞けばいい。
そう思い少し不気味な廊下をぬけ、またまた不気味な風呂に入りベッドに潜った。私は寝付くのが遅いため、早めに寝始める必要があった。
5分ほどした時だろうか、ことり、と音が鳴った。
聞き間違いかとも思ったが、今度はトタトタと子供でも歩いているような音がする。耳をすましてみると、開かない扉の先の部屋からだった。
真逆誰か住んでいるのか?しかしどうやって生活しているのか。疑問は募るばかりだったが、睡魔により思考は緩み、朝起きた時には忘れてしまっていた。
次の日、窓の外の緑を見ながら殆ど働かない頭で身支度をし宿を出た。本来の目的は取材だからだ。
歩き回り取材することは現代の携帯っ子達には非効率だと思われるかもしれないが、私は現場の声をリアルで届けることが大切だと思っている。このスタイルを辞めることはないだろう。
そのまま宿に帰り記事の内容を考える。そうすると、隣からゴトゴトと音が聞こえた。
その時やっと、昨日も音を聞いたことを思い出した。
しかしなぜ音がなるのか分からない。屋根裏とでも繋がっているのだろうか。そうでなくては密室内に何かが居るということになるし、屋根裏からならば野生動物か泥棒かもしれない。
しかし疲れていると危機感は働かないもので、その日もそのまま寝ることにした。
最終日である。
朝早くから取材に行かねばならないため早くでないと行けないのだが、寝坊をしてしまった。急いで身支度を済ませ、部屋を出る寸前、ゴトンと音がなった。もちろん隣からだ。
とても気になるがしかし時間がない。そのまま急いでチェックアウトを済ませた。
取材を終わらせ電車に乗り、一息ついたところで考える。
あの音の正体はなんだったのだろうか。やはり野生動物か何かが隙間から入り込みでもしたのだろうか。
そこでふと思い出した。
そういえば、夜と朝のチェックアウトのとき、奥さん、何処にも居なかったな。
ところどころ変えては居ますが大体ノンフィクションです。あの音がなんだったのかは私にも分かりません。
ここまでお読み頂きありがとうございました。




