四話 放課後の戦場、光と音に満ちた聖域にて
「2人とも、無理言っちゃってごめんね」
「何を言ってる。ただ、栄光の光が我らを呼んでいただけだ」
「帰りが遅くなるだけだから別にいいよ」
デパートの自動ドア通る3人。買い物袋を持った茜が申し訳なさそうに小さく歩いていると、ゆいが一点を見つめ動きを止めた。
「ゆい、どうしたんだ?」
春斗はゆいの見つめてる先を見ると、そこにはゲームセンターがあった。
「ゲームセンターに行きたいんか?」
「我はそこまで、だが、皆んなが行きたいってゆうなら……」
チラチラと春斗と茜の方を見る。らしくない上目遣いを使いながら。
「よし、帰るか」
歩き去ろうとしたが、腰に重みを感じる。春斗は自分の腰を見ると、今すぐに泣き出しそうなゆいが腰にしがみついていた。
「まあまあ、門限とかないでしょう。寄ってあげようよ春斗くん」
得意げに春斗の顔を覗き込む茜。腰にしがみついているゆいが少し泣き始めて、その涙に心が痛んだ春斗は少し考えたあと、口を開く。
「行くから、離してくれ」
「しょ…しょうがない、2人ともそんなに行きたいのか」
涙を拭いて、威勢よく立ち上がる、ゆい。
「さぁ、皆のしゅう。遅れをとるなよ。目的の魔城はすぐそこだ!!」
ゲームセンターに向かってずんずん歩いて行くゆい。その後ろを春斗と茜が追いかけていく。
◇◆◇
中は学校とは違い、音と光で満ち溢れ、最初は気圧されていたものの春斗はだんだんと慣れていく。だが、ゆいは入った瞬間からテンションが一段上がっていた。
「見よ春斗! ここには戦士たちの魂が眠っている!」「ただのゲーセンだよ」
そんな中、最初に足を止めたのは茜だ。プリ機に指を差し後ろを振り返る。
「ねえ、みんなでプリクラ撮らない?」
ゆいが目を輝かせる。
「おぉ!これがかの有名なプリクラ!」
ゆいと茜がプリ機の中に入ろうとする横で、目の前のベンチに腰をおろす春斗。
「何してるの?春斗くんも一緒に撮るんだよ」「え、俺も?」「当たり前だろ!!」
有無を言わせない感じで2人が春斗の腕を引き、気づけば三人でプリクラ機の中だった。
ゆいはカメラが起動した瞬間、謎のポーズを決める。
「我が姿、とくと見るがいい!」「ちょ、動くなって」
「ほらほら春斗くんも何がポーズ!」
撮影が終わり、落書き画面になると、ゆいと茜がウキウキで画面上の写真に絵を描く。
「魔法陣は必須だ」
画面いっぱいに描かれる謎の円と文字。茜はそれを見ながら、猫耳やハートを足していく。
「ほら、こんなもの可愛いよ」「確かに!よいなそれ」
「ほら、春斗くんも何が描こ!」
茜が春斗にペンを手渡す。少し考えた後、小さな星を描いた。
「なんだ春斗?もっと描かないのか?」
「俺は別に……」「描かなきゃ面白くないぞ!」「じゃあ、私達で春斗くんのも描いちゃお」
「よかろう。春斗!見ておけ、貴様を着飾ってやろう」
写真内の春斗にメガネやちょび髭などをつけゆいと茜が2人でクスクス笑い始める。
完成したプリクラを見て、ゆいは満足そうに頷いた。
◇◆◇
プリクラを出たところで、茜が足を止めた。
「すご、格ゲーの筐体あるじゃん」「む……決闘か」
ゆいが即座に食いつく。
「最近はソフトを買って家でやるのが主流なのに珍し〜」
ブルブルとゆいが震え始め、指が茜に向けられ——
「茜!我と勝負だ!」「お!いいよ受けてたとう!」
対戦が始まる。
ゆいは黒いローブを着たキャラを選び、茜は道着を着たおじさんのキャラを選ぶ。開始と同時にゆいのボタンを連打する音が響き始める。
「必殺! 闇の――あれ!?」「ほら、落ち着いて」
一方の茜は静かだった。操作は最低限なのに、いつの間にか体力ゲージが減っている。
「な、なぜだ……!」「ガードしないと」
結果は、あっさり茜の勝利。
「……参った」「楽しかった〜」
悔しそうにしながらも、ゆいはどこか満足そうだった。
◇◆◇
ゆいが大きなぬいぐるみの入ったクレーンゲームに興味を示して始めた。
「見よ! あのぬいぐるみ!」「欲しいのか?」「浮かんでこないか?あの、ぬいぐるみが家に居る光景が。欲しいにきまってる」
だが、ゆいの腕前は散々だった。
アームは空を切り、景品はびくともしない。
「なぜだ……!」「ボタンを連打するから降下ストップするんだよ。少しやってみていい?」
ゆいが少し右にずれて、茜が台の前に立ち100円を入れ、操作を始める。
「ここらへん?」
「いや、もっと少し後ろだ」
「2人とも頑張ってくれ!」
いつの間にか3人?で協力して景品を取ろうと頑張っていた。
何度か挑戦しているうちに、景品がポツリと獲得口に落下していく。
「よし」
茜が獲得口からぬいぐるみを取り出して、ゆいに渡す。そのぬいぐるみを抱きしめて、ゆいの目が輝やく。
「茜ー!!ありがとーー!!」
ゆいの視線が春斗にも向けられる。
「春斗も、ありがとー!!」
「いや、俺は何も」
「春斗くんのおかげで取れたんだよ、素直に受け取りなよ」
少し恥ずかしくなり、頭の後ろを掻きながら春斗は少し目を逸らす。
「そうなのか?」
「そうに決まっている。我のために頑張ってくれたのだから」
◇◆◇
帰り道、三人の影が並んで伸びる。
「今日は良き日だった」「ゲームばっかだったけどね」「まぁ、いい日か?」「うむ!」
ゆいは満足そうに頷いた。
なんでもない放課後。
でも、こういう時間が増えていくのかもしれない。
そんなことを考えながら、春斗は二人の後ろを歩いていた。




