第85話:愛の反逆
◇◇◇
#1 時空の沈黙と、世界の意思
蒼真:
「………。」
ルシェルは焔生の不死を殺す力により消滅した。
彼の魂が還ったことで、激しかった戦闘の場は、一瞬の静寂に包まれていた。
だが、その静寂は、世界の崩壊を決定づける時空の歪みが支配する、不吉な沈黙だった。
世界意思が具現化した刀、〈焔生〉から、蒼真の精神世界へ冷たい声が流れ込む。
焔生:
「……蒼真よ。永瑠という存在は、世界法則から外れた“永続バグ”」
焔生:
「世界はその修正を望んでいる。
お前の力で、永瑠の存在そのものを、無に還せ。それで世界秩序の完成だ……」
永瑠は、世界の理の圧力に打ちのめされ、何も言えず、震えている。
◇◇◇
#2 永瑠の涙と、世界の拒絶
ビシビシビシ……!!!
永瑠の足元に、小さな亀裂が走る。
世界の意思が“永瑠を排除する方向へと収束されてゆく……
永瑠:
「……私は……」
消え入りそうな声だった。
ノア:
「永瑠さん!!!……世界意思の圧力が……強すぎます……!」
永瑠の身体は、存在そのものが薄くなっていくような錯覚さえ覚える。
永瑠:
「生まれた時からずっと……
誰にも必要とされてなくて……
でも……蒼真と会って……
初めて“生きてていいのかな”って……」
涙が一粒、砕けた床に落ちた。
その涙にさえ、世界意思は冷酷に反応する。
焔生:
「その涙は存在の濁り。
世界にとっては不要な“エラー”なのだよ。」
永瑠の瞳が、大きく揺れた。
永瑠:
「……エラー……」
心が殺されていくような言葉。
その瞬間、蒼真の全身から、怒りにも似た紅い熱が噴き上がった。
◇◇◇
#3 愛の反逆、決意の咆哮
蒼真は、《焔生》を構えることをやめ、ゆっくりと刀を地面に突き刺す。
そして、永瑠に向き直る。
永瑠の手を強く握りしめる。
蒼真:
「……永瑠の母は、永瑠を終わらせろと言った。」
「ルシェルも、永瑠を終わらせろと言った」
「世界は永瑠を終わらせろと言った。」
「焔生でさえ、俺にそう命じた」
蒼真は、顔を上げ、世界の論理を否定するように叫んだ。
蒼真:
「でも俺は――」
「世界を裏切る!!!!!!」
蒼真:
「永瑠の手を、二度と離さないために。
たとえこれが、世界すべてを敵に回す選択だとしても!!!!」




