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第53話:夜明けに残る傷跡

◇◇◇



#1 目覚め


深い暗闇の中、蒼真は荒々しく息を吸い込み、跳ね起きた。


胸の奥が、焼けるように痛い。


肉体ではない。


もっと奥――魂が軋んでいるような痛み。


視界の端には、夢の断片が焼き付いている。


鎖。


血の染みついた石床。


鉄格子の冷たさ。


遠くの誰かの嗚咽。


蒼真

「……っ……はぁ、はぁ……ッ!」


汗が噴き出し、シャツが背中に張り付く。


蒼真

「ウィンターの……夢、か……」


時間外領域で触れた記憶が、夢となって逆流したのだと、直感でわかる。


ただ――肝心な部分が「真っ黒だった」。



◇◇◇



#2 残った映像


蒼真は額を押さえ、呼吸を整える。


断片だけが脳内を駆け巡る。


“燃える村”


“檻の中の少年”


“伸ばした手”


“誰かを抱えて泣く少年”


蒼真

「……ウィンター……」


そこまで来て、急に映像は途切れる。


まるで意図的に、誰かが黒い幕を降ろしたように。


蒼真(心の声)

「(牢からの脱出は……した。姉と、逃げたはず……)」


蒼真(心の声)

「(でもその先が、どうしても見えない)」


蒼真(心の声)

「(まるで……“自分で封じた”みたいに)」


この夢が、何かの鍵だとだけは感じていた。



◇◇◇



#3 授業 — “観測聖女 vs 日本の教育”


しかし、現実は残酷だ。


夢だろうが運命だろうが、朝一限目は始まる。


一限目・現代文。


教師

「はい、ノアさん。この漢字の読みを答えてごらん」


ノアは立ち上がり、胸を張って言う。


ノア

「観測完了!“漢字”は、この世界を構成する古代の魔法陣ですね!」


教師

「違うよ!!ノアさん!!これは国語!!」


蒼真(心の声)

「(先生……強く生きてください……)」


ノアはきょとんとしたまま席に戻り、プリンの空容器を積み始める。


一方――


永瑠が、じっと蒼真のノートを覗き込んでいた。


永瑠

「……蒼真の字、綺麗。整ってる」


蒼真

「やめろ!近い!授業中!!」


永瑠は耳を赤くしながら、囁く。


永瑠

「……落ち着く匂いもする」


教室が一瞬静まる。


蒼真

「距離!!距離感って言葉知らないのか!!」


クラス女子(小声)

「距離じゃなくて、接触だよあれ」


蒼真は、冷や汗をかきながらノートに逃げるように視線を落とした。



◇◇◇



#4 休み時間 — 現実が追ってくる


休み時間。


突如、職員室の方向から叫び声。


担任

「雪村ァァァァァァァ!!!!!」


鬼の形相の担任が突進してきた。


蒼真

「なんで俺!?今日なにも悪いことしてないぞ!?」


教師

「雪村くん!保護者会で言われたんだよ! 『永瑠さんとノアさんと三人で同棲してるって本当なんですか』って!!」


蒼真

「言ってない!誰だ流した奴!!?」


クラス全員、天井を見上げる。


蒼真

「お前らぁぁあ!!」


ノアが堂々と割り込み、


ノア

「安心してください先生。同棲ではありません! 私は“観測対象”である蒼真さんの隣で生活データを取るために寝泊まりしているだけです!」


教師

「それが一番アウトなんだよノアさん!!!」


永瑠まで口を開く。


永瑠

「私は……蒼真を守るために傍にいる。それが一族の掟」


教師

「掟の概念が日本と違いすぎるんだよ!!」


蒼真は机に突っ伏し、


蒼真(心の声)

「(異世界で魔物と殴り合うより、この日常の方がキツい……)」




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