最終話
事態が表沙汰になったのは、生徒の親の手によって。
いつもなら帰宅している時間になっても帰ってこない我が子を心配し、スマートフォンへと連絡を取った。
しかし子に繋がることはなく、次に学校へと連絡を取った。
当然学校にも繋がらず、不安になった一人の親が学校へと走り、完全に施錠されている学校を不信がって警察へと通報。
警察の手によって、生徒たちは解放された。
デスゲームによって命を落とした生徒たちの親は、学校を責めたて、人災であると学校を提訴した。
犯人が森生であるという情報は、木理矢による口止めの提案もむなしくすぐに漏れる。
誹謗と中傷を浴びせられる中、森生の家族はいつの間にか町を去っていた。
SNSの一切を削除し、行方を知るものは誰もいない。
テレビとSNSは、現代のデスゲームを踏み台に、様々な問題を提起する。
「学校側の情報管理がしっかりしていれば、今回のような悲惨な事件は起きなかった」
「子ども一人にハッキングされるシステム自体が問題ですよ。システム導入を推進した政府と、システム導入に携わった企業は、責任をとるべきだ」
「学校や政府に責任を問うのはおかしい。この事件は、嫉妬に狂った少年の凶行でしかない。責任の全ては、加害者の少年にある」
「死刑死刑死刑。こんな奴を世に放った親も同罪。死刑が当然」
システムの不備が直るまで、無期限の学校閉鎖。
希望者する生徒への通院支援、及び転校支援。
一か月も経てば、生徒数は半分になり、教師の半分が入れ替わった。
校舎は今や、事件現場というシンボルだけが残り、警察と技術者が代わるがわる立ち入っている。
生徒たちの授業は、専ら自宅からのオンラインだ。
非日常な光景を胸に抱えながら、未来に待ち受ける日常のため、生徒たちは思い思いの感情に沿って勉学に励む。
「私、ミスコンにでることにしたの! 皆、応援してね!」
恋々は、恋々なりに。
「全国大会、出場決定したんだ! よければ、見に来てくれないか」
力也は、力也なりに。
「ではただいまより、既存の学校セキュリティシステムの脆弱性とその改善案について、ご説明させていただきます」
木理矢は、木理矢なりに。
自分のできることで、日常を生きていく。
今日を生きていく。
世間は何も変わらずに、ただただ時を刻んだ。




