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業務内容

「今日から魂管理課に移動な」

「はい…?」


ボク、雨夜あまやヨミ。

死神歴200年のれっきとした死神です。

ここ地獄の死神。

常世株式会社死神課の総務として各部署の書類管理、作成、整理。

天国との業務対応の電話対応。

魂回収のリストアップや回収した魂の管理、報告など…色々と仕事をしてきた。


「雨夜先輩!私、結婚することにしたので会社辞めます!」


198年働いてやっとできた後輩も2年後には結婚で会社を辞めていく。


「まずはおめでとうございます!部署長に退職願提出いただいているので、こちら退職の書類ですね。提出期限あるので守ってくださいね」

「ありがとうございます!!」


死神もやめてしまえばただの亡者だ。

と、ボクが死神になった時に言われたこと。


この後輩も退職したらただの亡者になって地獄で悪魔や鬼にでもなるか…それとも天国で手続きのち転生か。

そもそも退職を許される上司がいることが羨ましい。

この総務課にはボクの他に休職中の鬼の先輩。

提携会社へ出張中の悪魔の先輩、そして上司の骸骨…死神の上司がいます。


「おい雨夜!!この書類どうなってんだ!!」


ですが、居るだけで仕事はしない。

声と態度と背だけが大きく、年功序列で上になっただけの無能ことクーゲルシュライバー上司。

青黒い喋る骸骨でフードをかぶっていて、威圧感と不気味さがあるが200年もいたら慣れた。


「その書類は社長にいい顔したく期限ギリギリなのも知っていて俺がやるから!と言ってあなたが請け負って、あなたが作成した提携会社への報連相書類です」

「こんなのでわかるわけがないだろう!!」

「あなたがやるからと言って他部署に話を聞いたのはあなたなので、あなたがわからないことをボクがわかるわけがないでしょう」


正論をいうと怒り出し、クーゲルシュライバー上司が自分で積み上げた書類の山を蹴散らかした。


「それ…ちゃんと片付けてくださいね」


ため息交じりに溜まった仕事を片付けようと机に向かおうとすると上司に肩をつかまれる。


「お前の後輩が退職するだろ?だから、『今日から魂管理課に移動な』」


こうして冒頭に戻るわけですが、魂管理課の仕事は総務として書類関係はしている。

だが実際に『人間がまだ死なないように』と干渉するのは入社したばかりの研修のとき以来だ。

そして先ほど退職の手続きをしたのは魂管理課に所属していたことを思い出す。


「お!雨夜じゃなねぇか!なにやらかしたんだ?」

偽手ぎしゅさん…何もしてないですよ…」

「総務の鬼から座を引きずり落とし、総務の鬼と呼ばれてるお前が総務からいなくなるなんてな」

「その二つ名初めて聞きました…そんなこと言われてるんですね」


善は急げ。クーゲルシュライバー上司に今日の仕事を丸投げし廊下を歩いているときに声をかけてきたのは偽手ぎしゅさん。

この人は2000年前に何かをやらかした罰として社長に姿を奪われここで働かせられている可哀そうな人。

体は持たず魂だけで今隣にいても姿は透明で正直、声をかけてもらわないといるのかいないのかわからない。


「ちなみにボクが総務に所属してるのはその鬼の先輩が休職するから代わりにだったんですけどね…」

「まぁ…ここ200年で一番下の存在になったらそうもなるわな」

「ボク未婚だし彼氏もいないのにバツイチ二児の母って言われたときはこの会社辞めようと真剣に思いましたね…」

「何がどうなってその噂が流れたんだよ…」

「パソコン作業していて、広告で子供服が流れてきたから最近の子供服ってかわいいの多くていいですねって言ったら次の日にはそう言われてました…」


ボクが死神になったのは江戸後期だったのでかわいい子供服なんて見たことがなかったのだが、一言声を漏らしただけで次の日には噂が広まり謎に気を使われたりされて大変だった。


そんな話をしていると魂管理課の部署に着いた。


「お疲れ様です。今日から移動してきました雨夜です」

「人手不足で助かった!早速だけどこの人頼むわ!!」


管理課の上司に2枚の紙を渡された。


「雨夜の担当先はすぐ近くに偽手くんもいるからわからないことがあったらすぐ聞いてな!!」


そう言って上司は風のようにいなくなってしまった。


魂管理課は死期が近くない人間をまだ来させないように干渉する部署だ。

簡単に言うならば自殺を失敗させて未遂で終わらせる。


例えば首吊りをしようとしたらロープが切れた、誰かから電話がかかってくる、誰かが訪ねるなど。

これ全て死神、魂管理課の仕事なんです。

そして人間さんが死ぬ気がなくなったら仕事終わり!という流れなのですが…。


「研修の時は…練炭自殺しようとしてた人だったので窓ガラス割って酸素入れたのと、廃ビルだったので救急車呼んで…ってしました事を思い出しました」

「人間からしたらいい迷惑かもしれねぇが俺様たちからしてもいい迷惑なんだよなぁ…」

「まぁ姿が見えているわけではないので、必然を偶然と思ってもらうしかないですね」


偽手さんと話をしながらもらった紙に目を通す。


「そいやお前の担当する奴って俺様の担当者と年齢近いな…最近の若いやつなんでこうすぐに死にたくなるのかねぇ…」

「思春期はいろいろ思うんですよ」

「そりゃまたいい迷惑だな」




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