凱旋……
さて、後は街へ帰る訳だが、ほぼ兵士ばかりの数十人の行軍では不測の事態もまず起きないだろうという事で自分達だけで帰らせる段取りにし、俺は何人かの飛行能力が有る者を連れて先に戻る事にした。ジャコールはその内の一人で有る。
俺は敢えて戻って最初にババナン農園を尋ね、ブランに出立前のババナンの差し入れへの礼と、討伐成功の報告をする事にする。まあババナンの差し入れは掛け値なしに今回の最大の功労である。
空から徐々に農園に近付いて行く。ブランの姿が有る。向こうもこちらに気付き、驚き、そしてあんな顔もするんだという程嬉しそうな顔。しかしお互いの顔が良く見える距離になる頃には真顔を取り繕っている。ごめん、俺の目良いんだ、全部見えちゃった。
とりあえず全員彼女のいる広場に降り立ち、そこで解散とした。結局残ったのは俺とジャコール。
「遠征は終わった。討伐も救出も成功した。君のババナンのお陰だ、有難う。」
俺はごく手短に要点だけ報告した。どうせもう俺の事どころじゃ無いだろう。それは良かった的な返事はしたものの、彼女の関心は明らかにもう別の所に行っている。そうして俺がぎこちなく社交辞令みたいな会話を紡いでいると、しびれを切らしたか…、
「ブラン!! 」
ジャコールが叫んでいきなりブランに駆けど寄ると、そのまま彼女をガバッと抱き締めた。ブランも受け入れている。俺はと言えば、口をあんぐりでフリーズだ。しょうがないだろ! こちとら彼女いない歴=年齢なんだから。それにしてもこのジャコール、やっぱりストレートな男だ。このままキスでもおっ始めるんじゃ無いかと更に狼狽えたが、抱き合ったまま会話を続けるだけの様で安心した。
「ジャコール様、ああお帰りなさい、ご無事で良かった。」
「ああ、何とか戻って来られたよ。正直もう2度と会えないと覚悟していた、実際何十日も石にされていたしね。又君に会えるなんて夢の様だ。」
「私もですジャコール様、そんな目に遭って良く戻って来られましたね。」
「ああ、全ては将軍閣下のお陰さ。何とおん自ら魔物を退治して、石化した者も全て救い出して下さったんだ。全てお一人でな。」
俺は2人の世界に入り込めないわ、何だか持ち上げられてむず痒いわ、居心地が悪いのでお先に失礼すると伝えて帰ろうとしていた。そんな俺の方にブランが歩み寄って来る。
「私、ジャコール様とは親しくさせていただいてたんです。だから、ジャコール様を無事な姿で連れ帰っていただいた事には本当に心から感謝しております。」
と、改めて俺に礼を述べて来る。こういうの、照れ臭いな…。
「思えば将軍様は最初から私に親切にして下さいました。町長さんの元から救い出して下さいましたし、ババナン農園の再建にも協力して下さいました。」
改めてそんな事まで…、照れ臭いってば。
「…でも…」
…ん?…
「お父さんは食べたんですよね。」