04話 適性が多くても注意は怠りません!#3
屋敷に帰宅した一行は、早速訓練場に移る
(うわ~…まじでやるのかよ…てか急すぎて今日の花への水やり忘れちまったじゃねぇか…)
僕は屋敷の花をメイド達と共に育てている…
しかし、そんなこともお構いなしにアキレスは真剣をぶんぶん振り回す…
…ッッ⁉…真剣…⁉
「ちょッ…父上⁉なんで真剣なんすか⁉」
思わず口に出した…
アキレスは口を開く
「いや、ただ振ってただけだ…安心しなさい。」
この父…
続けてアキレスが口を開く
「お互い木剣でやるぞ…」
アキレスが木剣を一本投げてきた
僕はそれを受けとる
『坊ちゃまぁ~、頑張ってください~』
屋敷の使用人たちはジルバートを除いて僕の鑑定結果を知らない
メイド達は応援してくれる…
屋敷の兵士たちはあまり興味がなさそうだ…
しかし、一人だけ真剣に結果を見届ける兵士が居た…
まぁ、いいだろう…
「グラン!構えろ!…」
正面のアキレスが真剣なまなざしを向ける…
普段ゆるゆるの父がここまでするなら、その期待に応えないと…
さて、仮とはいえ【七聖剣第一席の力】見せてもらおう…
僕も木剣を構える…
そのとき、僕の構えを見てアキレスが口を開く…
「その構えはなんだ?見たことのない構えだ…しかし、様になっているじゃないか…」
兵士たちのざわめきが止まらない…
この王国では…兵士たち、騎士たちの剣術は主に【王国剣術】で統一されている…
つい、前世の構えになってしまった…
まぁ…ぶっちゃけ詮索はされないだろう…
だってこの父親だぜ…
今アキレスは見たことのない剣術の構えに興奮しているようだ…
「グラン!!行くぞ!!」
アキレスが咆哮と共に地面を踏みぬいた…
「【シェバールト剣術 一式 虎斬】」
アキレスの振り上げが飛んでくる
前世でいう”唐竹割”だ
しかし、魔力が込められているのか斬撃が双方向からも襲ってくる…強度もなかなかだ…
(この感じ…嫌になる…ずっと蔑まれてきたからな… だが!!…今は違う、この世界でこの剣術を使えるのは僕だけだ! …ってことは…この世界ではこの剣術は僕だけのモノになる!!!)
斬撃を迎えるように僕は守りの構えに入る…
(ここまで来たら…僕の考えてたオリジナルも入れてみよう…)
そのときの空気は静寂そのものだった…
騒がしかった兵士、応援するメイド、母、姉たちが息を飲む
静寂が一つとなったとき…
「【鏡花流 壱節 舞桜 ”神懸八百万”】」
(知ってるか?…花というのは育て方によって同じ種類でも違う輝きを見せる。そう…花はその者の鏡なんだ…そして…)
”万物には神が宿る…”
もともと守りの態勢であった刀術に工夫を加え受けから流しに即座に切り替えアキレスの首元に刃先を向ける…
「父上!僕の勝ちです!」
その様子に観衆と目の前の父が唖然としている
(まぁ仕方ないよな…)
そうだ、見たことも聞いたこともない剣術に自分たちの剣術が負けたのだから…
パチパチパチ…
どこからか拍手の音が聞こえる…
聞こえる側に目をやると執事のジルバートが涙を流しながら手を叩いていた。
そしてアキレスが…
「うぅぅ…!グラン立派になったなぁ…!!」
と、泣いていた…
「「うぉぉぉぉぉ!!」」
拍手の音から一拍の間を置き歓声が訓練場に響いた…
(今日はほんとにとんでもねぇよ…)
この日は屋敷中の歓声に包まれて終わった…
後で潅水は忘れずにやらないとな…
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この出来事の少し後にヴェルーム家の執務室ではこんな会話があった…
「旦那様、奥様、お茶をお持ちしました。」
ティーセットを運んできたのはヴェルーム家の執事ジルバートだ。
「うむ、ありがとう。ついでだジルお前の意見も聞きたい…」
そう話すのはヴェルーム家の現仮当主アキレス・ディ・ヴェルームだった。
問いかけられたジルバートが答える
「グラン坊ちゃまのことですかな…?」
「あぁ、その通りだ…」
「そうですなぁ…僭越ながら申させていただきますと勇者もしくは転生使徒とみるのが妥当かと…」
「お前がそう言うならそうなんだろうな…」
ジルバートの答えた内容にアキレスはより神妙な表情を浮かべる。
そのとき横から口を挟む者がいた…
「グランはこの国の光になるかもしれません…それにこれを機に私はヴェルーム家当主に戻ります!」
そう宣言するのはヴェルーム家現当主のテミス・ディ・ヴェルームだった…