真相事実発覚
そんなある夜の事、俺はつい出来心で愛子の元彼が気になってしまい愛子に問いただしてしまった。
「君はどうして元彼と別れたの?」
愛のあるセックスが終わり二人ベットで横たわっていた時に俺は聞いてしまった。
愛子のさっきまでの笑顔が消え口ごもるように答えた。
「言いたくないわ。」
その言葉に余計に知りたい願望が駆り立てられた俺はさっきより強く問いただした。
「どうして?俺は何も君に話せないことはないのに、君は隠し事をするの?」
馬鹿な俺。
愛子は遠くをじっと見て小さく言った。
「最低な男だったから、言いたくないの。」
「なんで!言ってよ。俺は過去を気にしないから。」
愛子は俺の方に顔を向けじっと見つめた。真剣な表情の愛子はどこか寂しそうに見えた。
俺はどうしても愛子のことが知りたくて、大人げなく何度も問いただしてしまった。すると愛子は少し怒ったように横たえていた体を持ち上げ
俺の目の前に座り言った。
「一緒に住んでた家を追い出され、お金も携帯も家の鍵も全て盗まれたの。
盗まれた携帯から知らない女に何人も電話をかけられていたし、私の友人にも電話をしていたの。」
じっと見つめる愛子の瞳が静かに閉じて、また大きく開き俺を見た。
「言いたくないって理由分かった?」
部屋は沈黙で覆われ、しっかりと俺を見つめる愛子に俺はとまどい、言葉に詰まった。問いただしてしまった子供な自分を思い知らされた。
何も言えないまま俺は愛子を抱きしめ、愛子の肩が小さく震えているのを感じた。
「ごめん。大変だったんだね。聞いてごめん。」
俺はフツフツと愛子の元彼に怒りを感じながら愛子の背中をさすった。
小さな体のこの女の子は考えられないくらい傷つき、それでも米国に一人でいるんだ。
俺にできることはなんだろう。俺は愛子に何をしてあげれるだろう。そう思ったらいてもたってもいられなくなり、俺は間違った行動をとってしまうことになった。
次の日の朝、俺の家に泊まった愛子は乱れた髪を一つに結び、俺のダボダボのTシャツを着たままリビングへとやって来た。
小さな体の愛子は俺のTシャツがまるでワンピースになっていて、裾から見える細い生足がまた色気を感じさせた。
朝から愛子が俺の傍にいて笑顔で「おはよう」と言ってくれる。こんな小さな事が嬉しくて俺は朝から何度も何度もしつこいくらいキスをすると
決まって愛子は
「しすぎよ。」
と笑う。これが聞きたくてまた何度も何度もしちゃうんだ。
その時ルームメイトの男の一人レントがリビングへとやってきて俺達に向かってこう言ってきた。
「愛子、俺がお前の元彼に仕返ししてやるよ。」
愛子はレントの言葉を聞いた瞬間俺のキスを止めレントを一度見て俺を見返した。
「ジェイソン、あなた話したの?」
「ああ!だってそいつはどうしようもない奴だからレントには法律に強い友達がついてるから大丈夫だよ。」
俺は少しでも愛子の役に立てればと思っただけのことだった。
「愛子、元彼の番号を教えてくれ。」
レントが愛子にこう聞くと愛子は言った。
「何もしないで。彼はクレイジーなの。」
「クレイジーなら大歓迎だ。今度パーティーに呼んでくれよ。」
「いやよ。やめて。」
愛子の表情は何かに脅えているようだった。そんな愛子の手をギュっと握り、あくまで頼りになる男を演じてみただけだった。
「愛子、レント達なら大丈夫だよ!ヤツを君に近づけないようにしてくれるから、番号を教えてあげて。」
「まだだめなの。」
「え?どういうこと?」
俺の手をぎゅっと握り返しながら、真剣な表情で俺に訴えた。
俺もレントも愛子の怯えてる表情を感じ取り、一度この話を終えた。そしてレントはそのまま仕事に出かけ、俺は愛子にさっきのことを聞いてみた。
「愛子、さっき『まだだめ』って言ってたけど、どういうことなの?」
リビングの中心にあるソファーに腰をかけタバコを吸っていた愛子の手が止まり俺を見た。
何か言いたそうな顔をしたが、下唇をぎゅっと噛みしめ視線を上下に動かしながら何かを考え始めた。
俺は黙って愛子の隣に座り愛子の足に手を置いた。するとゆっくりタバコを吸いこみ吐いて、俺を見て言った。
「まだだめなの。まだコンタクトを取らなければならないの。」
「どうして?」
「言えないわ。時が来たら話すから。」
まただ。
愛子は決して自分の話を自分からしてこない。むしろ隠したがるんだ。この仕草が俺を少しイラつかせ、つい無理やりにでも聞こうとしてしまう。
「今話して。お願い。」
「ジェイソン、お願い分かって。言いたくないの。」
「君は僕を信じてないの?僕は君が何を言っても離れないし、失望したりなんかしないよ。」
「そういうことじゃないの。ただ簡単に口に出すには勇気がいることなのよ。」
愛子の意志は強かった。この態度がまた俺を不安にさせ俺はつい信用されてないんだ、とマイナスに考え始めた。そしてまたも子供じみた態度を取り
愛子を困らせ始めた。
俺はこのまま家で二人で過ごせないと思い愛子を誘い近くのコンビニにタバコと軽食を買いに向かった。
きっと愛子を嫌な気持ちにさせてしまっていたのかもしれない。俺はよそよそしい態度を取り、今もまださっきの話を気にしてます的な雰囲気を存分にかもしだしていた。
そしてコンビニの帰り道、とうとう愛子が足を止めこう言った。
「あなたに言わなくてはいけないことがあるの。」
「知ってるよ。何を隠してるの?」
俺の態度はこうだ。愛子は視線を足元に落とし、俺達は道端に立ち止まった。昼間のワイキキの人の多さといったら異常なくらいだが、中心部から離れた俺の家は
人というより車通りが激しく、俺達の声は自動車の音でかき消されるほどだった。しかし愛子の小さな声ですら、はっきりと俺の耳に響いた。
「私、妊娠してるの。」
視線を足元に落としたまま愛子はだまり、俺は唖然と愛子を見つめ口から出た言葉は
「冗談だろ?」
だった。
愛子は首を横に振り長いTシャツの裾をひっぱった。
「だからまだ元彼とコンタクトを取らなければならないの。ごめんなさい。」
涙を瞳に浮かばせ俺を見る愛子は子供のようで、俺は飛びかかるように愛子を抱きしめた。この子を俺が守りたい。本気でそう思った。
「愛子、大丈夫だよ。俺がいるから。俺は決して離れないから。」
俺の腕に抱かれた愛子は声を漏らして泣き始めた。
「わ、私・・・知らなくて。昨日知ったの・・・。ご・・ごめんなさい。」
「謝らなくていいんだよ。俺こそごめん。
愛子はどうしたいの?」
「堕ろすわ・・・。」
声も涙で枯れてしまい、注意をして聞こうとしないと聞き取れない程の小さな声で言った。そして俺の背中をギュっと強く抱きしめた。
「でも本当は堕ろしたくないの・・・。」
「愛子・・・。俺は堕ろした方がいいと思うよ。」
「でももし次に子供ができなくなったらどうしたらいいの。」
「そんな事ないから大丈夫だよ。」
俺は泣きながら話す愛子の顔を両手で挟み俺の方へと向かせた。この時俺はすでに愛子に夢中になってしまっていたのだろう。普段なら俺に関係のない
面倒くさいことなど分かった時点でサヨナラだったが、俺は決意をしこう言った。
「堕ろすことが今回は一番いい判断だと思うよ。
だけど愛子が産みたいなら産めばいい。それでも俺は一緒にいるから。」
「本気で言ってるの?」
涙でぐしゃぐしゃになった顔で愛子は聞いた。
「ああ。本気だよ。だって俺はもう君を愛してるから。」
ワイキキから離れた道路の脇でアメリカ人の俺と日本人の愛子は何度も何度もキスをし抱きしめ合った。俺の中で元彼に愛しての憎悪感と愛子に対しての愛情が
入り交じり愛子を抱きしめる手にも力が入った。
この子は俺のものだ。そう心から思った。




