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一人ぼっちの空港で


ついにやってきた。明日、明日、愛子に会える。

日本とハワイは時差があるため愛子はすでに日本を出てるはずだ。日本の午前中に愛子から電話が入っていた。

入っていたって事はお分かりのように、俺はまたもやってしまったんだ。


前日は仕事の大きいパーティーがあって、愛子と最後に電話をしたのは俺がパーティーを抜け出して友達の家に向かっている時だった。

愛子はこれから出かけると言っていたが、電話の最後にこう言った。


「ジェイソン。もう少しで会えるから、お願いだからトラブルは起こさないでね。」


「当たり前だよ、愛子。心配しないで。」


「ジェイソン・・・。浮気はしないでね。もうすぐだから。」


「何でそんなこと言うの?しないよ!大丈夫。」


こんなに弱気な愛子も珍しかった。

そのあと俺は友達の家に行き、愛子から折り返しの電話が入っていたがその時全く気付かず、国際カードも今日切れたばかりで買っていなかった為折り返すことができなかった。

その後すぐに家に帰ったし、何も問題があったわけでもない。

俺にとってはいつもと変わらない夜だったが、この夜の愛子の発言を考えて愛子がどれほど俺の言葉が必要だったのか想像もつかなかった。

そして次の朝も電話が鳴った時にはまだ寝ていて、愛子が出発する前にちゃんと話もしてあげれなかった。

きっと空港についたら連絡がくるだろう、そう簡単に考えていた。


しかし愛子からの着信が入ってから2,3時間はとうに過ぎているが愛子からの着信はない。もう少し待ってみようと待ったが、まだなかった。

愛子の携帯はもう止まっているはずだし、俺は愛子にかけることはできない。

何かあったのか?まさかキャンセルしてないよな?

なんて勝手にも不安が立ちのめてきた。


そのまま愛子から一切着信は入らなかった。

きっと大丈夫だろう。簡単に考えながら、明日早くに空港に行くため早めに帰宅した。

家の中には変わらずパーティー好きの男どもが各々のソファーで寝っ転がっていた。部屋中には大音量にされた映画が流され、もう500万回程も見ている映画にほとほと嫌気がさした。


俺は皆が寝静まった中、携帯の開いた。そこにはいつもと変わらない笑顔の愛子が俺の肩に抱かれている。


『愛子が来るんだ。愛子に会えるんだ。』


俺は息をころして嬉しくて笑った。

その時、そういえば愛子が何度もパソコンにメールを送ってるのに一度も返信しないじゃない、と怒っていたことを思い出した。

最近愛子から預かったパソコンの調子が悪く、いつも開こうとすると画面がつかないことが多々あった。

この日もどうせつかないだろう、と思っていたら何と1回でうまく機動したのだ。

するとそこには愛子からのメールがいっぱいきていた。


「I love you so much.」


「I always love you.」


など、愛子からの愛の言葉でいっぱいになっていた。

この日のこの時間は俺達が喧嘩してたときじゃないのか?なんて思わせる時間帯のもあった。

そして最新のメールはなんと愛子が日本を飛び立つ前に出したメールだった。


「ジェイソン。

 私はあなたと出会えて、こんなにも人を愛せる自分を知れて幸せです。

 ありがとう。」


こんな内容のメールだった。

俺はそのメールの内容に対して、そこまで深刻には考えていなかった。ただ愛子は心の優しい女なんだってことを再認識できただけで俺は明日愛子に会ったらまず抱きしめてキスをしようと、ワクワクしながらパソコンの電源を切った。

そして俺はそのまま眠りにつき、朝早くのシャトルに乗り込み、空港で今か今かと愛子を待っていたって訳だ。


俺は愛子との出会いから今までの思い出が走馬灯のように脳裏に走った。

吸っていたタバコからはもう煙も出ない。

愛子と出会って短い間だったがいろいろなことがあったんだな。

今一つ一つ思い返してみると、愛子が俺に求めていたことを俺はしてあげれなかったんだと思った。そして俺自身も愛子の求めていることに関心を示してあげれなかったと思う。

俺が女なら俺はいやだな。


そして俺は携帯の画面をもう一度見た。

そこには今日、この時間会えるはずだった未来の妻が笑顔で写ってる。

俺は怒りとむなしさに一気に覆われ、目の前に久しぶりの再会を喜ぶ人たちがよけに俺を腹立たしくさせた。

残りのタバコもあと1本。

俺はそのタバコに手をつけず、ポケットにいれ立ち上がった。

もう一度空港の出口に目をやったが、そこには俺の待ちわびてる人の姿はなかった。

そしてそのまま帰りのシャトルの方へ俺は歩いて行った。胸の苦しみとポケットにつっこんだプレゼントの重さが俺の涙を誘ったんだ。


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