彼女の見えない情事
あと5日。あと5日で愛子がハワイに戻ってくる。
でも金がない!
俺は愛子が帰ってくる楽しみで浮かれていたが、そうだ、俺達は一緒に住むんだから今のままじゃ金が足らない。
そこで俺は俺なりに生活リズムを変えることに努力してみた。
まず1つ目、いつも数十杯というお酒を浴びるように飲んでは愛子に絡み、嫌がられ、そして朝は吐いてグタグタという生活を続けていたが禁酒とまではいかないが、お酒を飲むのを極力減らすことにした。
2つ目、愛子が帰ってからは昼型人間になるために夜はどんなにルームメイトが騒いでいて家に帰りたくなくても、夜中の12時までには帰宅。そして就寝。
すると自動的に朝も早く起きて気分も爽快って訳だ。
そして3つ目に節約。
俺はお酒とタバコの量が半端ない男だったが、愛子と一緒に暮らすことを考えるとやはり節約していかなくてはならない。
そこで、お酒を控えることとタバコを控えることで節約かつ健康でいられるということに気づいたのだ。
この3つを初めてから早3日目。
愛子は毎日俺を褒めてくれる。
「すごいわ。ジェイソン!」
「あなたを誇りに思うわ!」
そんな愛子の驚嘆に喜び今日も早く家に帰った俺。
今日はたまたま日本は土曜日で愛子も予定がいっぱいで電話の回数はかなりすくなかった。
昼間も愛子から電話がきて俺は声が聞けただけで有頂天になった。
「俺はずっと君のことを考えてて止まらないよ。」
「私もよ。ジェイソン。」
「いい加減俺の頭から出て行ってくれよ。」
「あはは。それはできないわ。」
なんてラブラブな会話をしたばかりだ。
ただお互い忙しかったせいもある。しかも俺のルームメイトが新しい映画を借りて愛子から電話が来たときに「映画が見たいから掛け直す。」と言って電話を切ってしまい思った以上に時間が経ってしまった。
こちらは午前4時半。日本は11時半だな。
俺は遅くなりながらも愛子に電話をかけた。
トゥルルル
トゥルルル
出ない。
きっとお風呂かな?
そう思って少し経ってからまたかけた。
また出ない。
少し心配になりまた数分待ってからかけたが、また出ない。
合計何回かけただろう、愛子は全く電話に応答しなかった。
もう11時半だ。愛子がもし出かけてるなら俺に言ってくれるだろうし、もしお風呂に入っていたとしてもこんなに入っていないはずだ。
愛子はいつも携帯を持っていてどんなに遅くても30分くらいで折り返しの電話がくるはずなのに、全くかかってこなかった。
すると俺の中でフツフツとまた不安の渦が立ち込め始めたのだ。
もうすぐ俺達は会えるのに、俺は愛子が日本には日本の彼氏でもいるんじゃないか、とかくだらない俺の妄想が始まってしまった。
それから1時間程経ったころだろうか、やっと愛子から着信が入った。
「もしもし、ごめんなさい。気づかなかったの。」
「どうやったら気付かないの?」
俺は少しすねたように聞いた。
「一階に携帯を置いたままで、二階にいたの。
もう寝たと思ってたし。」
「でも鳴ったら気づくでしょ?
まだ寝ないよ。映画観終わったら電話するって言ったじゃん。」
「たまたま気付かなかったのよ。ごめんなさい。」
愛子は俺を煙たそうに言った。
俺の中で疑いの心が大きく膨れ上がってきたが、信じることしかできないし、今喧嘩になっても仕方ないと思い冷静を装うように努めたが俺はまだ子供、愛子の反動にいちいち疑ってかかった。
「映画どうだった?」
「まあまあだよ。電話切ったときに言った通りの物語だよ。」
「そっかぁ・・・
もう遅いでしょ?」
「うん。」
「もう寝なよ。また明日かけるから。」
愛子はなんだかソワソワしているのか、電話を切りたがった。
俺は愛子が何かを隠している気がしたがあえて触れずにいた。
だってなんだか俺が大好き過ぎて悔しかったんだ。
「いつかけるの?」
「朝起きたらだから、たぶんハワイ時間で3時くらいかなぁ。」
「じゃあ俺がそれより先にかける。」
全く俺には愛子が読み取れない。
いっぱい俺に愛を語っていたかと思えば、今はまた俺の見えないところで何をしているか分からなくなり、毎日が幸せと不安で入り混じった。
俺は愛子と住むためにお金も貯めてるし、愛子と生活リズムを一緒にするために自分から改善してるのに愛子は遊んでいるばかりだ。
なんだか怒りみたいのも感じ始め、その夜は気持ちがすっきりしないまま電話を切った。
愛子が来る日まであと5日。
俺は愛子が浮気をしているんじゃないかと正直疑い始めた。
そしてこの日以降、愛子は毎晩友達と出かけるようになったんだ。




