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俺がバカか。男がバカか。

遠距離が始まり20日目。

俺がいつも通りクヒオ通りで仕事をしながら飲んでいる時だった。

愛子からの突然の電話。

実は俺達はこの3日程、愛子と大喧嘩になることがおきた。

愛子の友人の一人が俺が酔っているときに彼女にキスをしようとしたと、わざわざ日本にいる愛子に電話をかけて伝えてくれたようだ。

案の定、いやそれ以上に愛子はもの凄く怒り、聞いたことのないようなどなり声を俺にあげた。

正直俺はあまりの愛子の怒りように引いてしまい、しかも愛子が完全に別れを選んだこともあり一度俺達は別れた。

どうしてそんな大事なことを言わないかって?

話にならない程くだらない話過ぎたんだ。


俺の馬鹿げた行動も、愛子自身もなぜこの友人の知らせにあそこまで怒ったのかって反省したし、何よりワイキキは暇人の集まりだから人の噂話は毎日絶えない。

そんなことを毎日気にしていたら生きていけないからだ。

俺は心から愛子に謝り、愛子も俺に謝ってきた。

そして俺達はまたラブラブ一直線ってわけだ。


そんな矢先だった。


「ジェイソン!私チケット取ったの!」


この一言から始まった。

俺は嬉しさよりも怖さがこみ上げてきてしまい口から出たのは


「早すぎるよ。」


だった。


「なにそれ。喜んでくれるとおもったのに。」


「だってお金の工面ができてないよ。」


「あなたが早く帰ってきてって言ってたんじゃないの?」


「そりゃ早く帰ってほしいよ!だけどもっと賢くならなきゃ・・・。」


愛子の怒りが始まった。


「私は何度ももっと時間がほしかったら言って、って言ったでしょ?

 それでもあなたが25日に帰ってきてって言ってたんじゃない。」


確かに。

だけどこの間別れる大喧嘩した後に帰国が早まったってことがどうも納得いかない。


「実は冗談でしょ?」


なんて笑いながら聞いた。


「いいえ。本気よ。」


どうも本気のようだ。


今思えば、手放しで喜んであげるべきだったと思う。だけど俺にはそんな金の余裕もなかった。


「家はどうするの?」


俺が真剣な声で聞くと愛子も真剣な声で答えた。


「あなたはハワイに住んでいるのに探しもしないじゃない。

 だから早めたのよ。」


「探してるよ!でも仕事があるから・・・。」


「じゃあ私が確認してって渡した何件もの電話番号にかけたことあるの?」


確かにない。

むしろ愛子が調べてくれた不動産の電話番号は紙に書いたまま失くしたのだ。口が裂けても愛子に言えない。


「だから22日のチケットでホテルも3日間取ったのよ。

 私が直接自分の目で確かめるためにね。」


なんて頼りがいのある女だ。


「しかもあなたID取ったの?」


実は俺はサイフを以前失くし、免許証もID(個人証明書)も失くしたままで役所に行けばすぐにでも再発行できるのだが、俺はそれすら怠け者で行っていなかった。

IDがなければ家も借りられない。

愛子の怒りが溜まるのももっともだ。


「私が帰るまでにIDは取りに行って。

 家もなるべく探して。あなたはそこに住んでるんだから!」


このあたりから愛子との喧嘩は絶えない毎日だった。

愛子だってもっと俺に優しくしてくれればいいんだ。

そう思って俺もへそを曲げてしまい、愛子もへそを曲げたまま電話を切った。



俺は愛子との電話の後、ものすごく将来について考えた。

愛子といる時は見えるもの全てが素晴らしかったし、愛子といる瞬間はまるで天国にいるかのように思えた。

でも今はどうだろう?

愛子もきっと心配に違いない、だけど俺だってそうだ。

俺は女に困ってる訳でもないし、結婚だってこんなに急ぐ必要だってない。

愛子が日本人だから俺達が一緒にいるために仕方なく結婚って道を選ぶだけなんだ。


そんな風に俺の頭の中で悪い方へ悪い方へと思考回路が進んでしまい、結局はまたとんでもないことを愛子に言ってしまう結果となる。


その夜に愛子からまた電話が入った。

愛子はいつも俺の事を気にしてる。まぁ無理もない。俺は電話がくる度にバーかクラブに入り浸っているんだから彼女の愛子がいい気がするはずもない。

だけどこれが俺の仕事であって、そこは理解してほしい。なんて都合よく考えていた。

愛子は昼間の喧嘩の続きはしたくないようだ。

いつもと変わらず優しい声で、俺の冗談に笑ってくれる。


しかし俺はそんな空気を壊すかのように、先ほど脳裏に走った悪い考えがとうとう口から出てしまったのだ。


「結婚したら君は離婚してもアメリカに住めるね。」


はい。最悪です。


「何言ってるの?」


「だから今結婚しても嫌なら離婚して。そしたら君はアメリカのどこの州でも住めるんだよ!」


ここまでくれば誰にでも想像はできるでしょう?

「考えさせて。」と言い愛子は電話を切った。


俺はなんて馬鹿なんだ、と後悔しても時既に遅しで愛子から折り返しの電話はなかった。

不運にも俺の国際カードも終わってしまい今から買いにいける店はない。

俺はもやもやと自分を責めながら朝を迎える始末だ。


愛子が帰ってくるまで後20日。



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