表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/27

年越しカウントダウン

ハワイの年越しの夜。

日本は既に年を越して2010年になっていたが、ハワイにとっては今夜が年越しだ。

どうにか二人でカウントダウンをして携帯電話越しにでもキスをしようと試みていた。

これは愛子から提案だった。


この日の昼間は愛子はおばあちゃんの家に挨拶に行く予定で昼間に俺に電話をかけてきた。


「これからおばあちゃんちに行くんだけど、日本時間の7時に帰れるか分からないの。」


「ハワイ時間の0時に間に合わないかもってこと?」


「ええ。だから今回はあなたが電話かけてくれない?」


「でも国際電話カードがないんだ。」


「買えばいいじゃない。」


ごもっとも。


「ただ今日は年越しですごく忙しいんだよ。」


愛子はむっとしてこう返した。


「私はずっとパソコンの前にいれないの!

 あなたが私と年越し過ごしたいなら電話をかけてきて!」


「わかったよ・・・。だけど本当に忙しいから掛けてこなかったらかけてくれる?」


おどおどと聞いてみると、既にご立腹の愛子ちゃんは


「待ってるわ。」


とだけ言って電話を切った。


国際電話カードを買いに行くことは決して難しいことではない。

ただこの日はいつも夜だけの仕事なのだが、昼間から大きなパーティーがあって、俺はこの場所を管理しなければならなく簡単に出かけられなかった。

今思えば完全なる言い訳だ。

外にタバコを吸いに行ったり、友達と話したりと自由な時間がないわけではない。

ただ時間の許す限りお客さんを増やしたかったし、年越しだったせいか気持ちがわくわくしてしまっていたのも事実だ。

結局俺は国際電話カードを買わずに1時間、2時間と時間だけが過ぎて行った。


夜になると一層人は増えていき、clubの中は大混乱。総勢200人は超える大パーティーとなった。

俺は完全に舞い上がり、忙しさと人の多さにあたふたとして愛子がかけてくれるだろうお簡単に考えてしまっていたんだ。

そしてカウントダウンの15分前、愛子から電話が入った。


「カードは買ったの?」


「ごめん。それが今日忙しくて。」


「そうだと思って早めに帰ってきて正解だったわ。」


「ありがとう愛子!」


ここまではめちゃくちゃラブラブモード。

二人で2009年に感謝をし、2010年に期待をしながら会話を楽しんだ。

愛子と出会えた2009年は本当にかけがえのない年になった。

俺の人生を変えてくれたし、もう人を愛することはできないんじゃないかと半分諦めかけてた俺に一筋の光をくれた。

そして「あと5分。」「あと1分。」とカウントダウンをしているときだった。


バーーーーーン


と近くで銃声がなった。


「え?今の何?」


「誰か撃たれたみたい・・・。」


「え!?」


「あっ愛子!5、4、3、2、1・・・HappyNewYear!!」


「えぇ!?あっHAPPY NEW YEAR!

 って、今撃たれた人大丈夫!?」


「大丈夫!それよりキスして!!」


俺と愛子は携帯越しに年越しキスをし二人で年を越せたのだ。

しかし、これぞアメリカ。

周りの奴らも気にせずHAPPY NEW YEARの声があちらこちらから響き渡る。

愛子はびっくりしてもの凄く心配し始めた。


「ジェイソン!そこは危険じゃないの?」


「大丈夫だよ。愛子。心配なし。」


俺は気軽に答えた。


「愛子、愛してるよ。これからもずっと一緒だよ。」


俺は愛子と過ごせるこの時間が本当に何より大事だったし、愛子も同じ気持ちでいてくれていると信じていた。


そして愛子が友達と出かけるということで俺達は電話を切った。

俺はまた仕事場に戻り、酔っぱらった客相手に仕事をする。

ここに愛子がいれば・・・そればっかり考えて過ごしていた。


どれくらい時間が経ったころだろう。俺は調子に乗ってものすごく酔っ払ってしまい愛子が電話をくれたことに全く気付けないでいた。

そして気づいた頃には携帯の充電が終わってしまい、俺が家に着いたのは何と朝の6時半。

愛子が心配してるだろうとパソコンの電源をいれると、なぜだか画面が真っ暗のまま。

俺は酔っ払っていたし、眠かったこともあって次の日愛子から電話が来たときに説明すればいいやって思ってしまい、そのまま眠りについてしまった。

次の日、愛子にとってもの凄く貴重な日だってことを全く知りもせずに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ