星の勇者様
空を照らす星。
それは人類に夢と希望を与えた。
魔の手に堕ちようとも変わらず。
輝き続けた。
魔王バラストは高らかに笑う。
「その程度か。その程度で勇者を名乗るか。」
勇者レイアスはバラストに踏まれると、噴水のように口から血を放出した。
「愚かで、浅はかで。して、哀れなものだ。」
弱い、弱いと笑いながら、もはや動かなくなったレイアスの体を何度も蹴り付ける。
その度にポンプのように口から溢れる血の量は、徐々に少なくなっている。
「102年ぶりに誕生した勇者の資格を持つものがこんな虫けらだったとは、人間も気の毒だ。」
バラストはレイアスの体を持ち上げるとひょいと後ろに投げ捨て、そのまま神樹イベラへと歩みを進めた。
イベラの巫女ユリチカは絶望にただ震えるだけだった。
どしんどしんと地面を震わせながら、ユリチカの横を通るバラストの目は、真っ直ぐに神樹イベラへと向かっている。
「やっぱり希望なんて持たなければ良かった。」
ユリチカは涙を流し、レイアスの方に頭を丸めて呟いた。
「神樹イベラ・・・どうかお願いです。せめて、この者達の魂だけは安らかに浄化してください。」
ユリチカは胸の前で手を合わせる。
ちりん、首に付けていた鈴がそれに揺られて音を鳴らした。
「魂だのなんだのと、くだらぬ。幻想にしがみつく事しかできないキサマら人間は、元よりこうなるしかなかったのだ。」
バラストはユリチカを横目に神樹イベラの前に立つと、神樹イベラの幹へと腕を突っ込み、神樹イベラの核を引っこ抜いた。
そして、バラストがその核を飲み込もうとした瞬間。
「待てよ。」
何者かの腕がバラストの腕を掴み、静止させた。
「きさまは・・・」
「レイアス様!」
ユリチカの声が響く。
涙声で、震えながらも高らかに。
「なぜきさまが・・・」
「ユリチカの声が聞こえたんだ。泣いている声が。」
ユリチカは胸に下げていた鈴を握りしめた。
「そっか、共鳴の鈴・・・」
「だがきさまに何が出来る!?虫けら風情が。」
「わからねぇ。でもよ・・・」
レイアスはユリチカを見て微笑み、ユリチカと出会った時のことを思い返した。
落ち込んでいたレイアスを叱るユリチカの姿が目に浮かぶ。
「何が出来るか分からないから、やってみるしかないんだよ。」
ーー次回、最終話
【共鳴せし万物の魂。】
1日という長い間、「星の勇者様」を応援してくれて本当に有難うございました。
僕も初連載が決まった時はこんなに続くとは思っていませんでした。
まさに感無量です。
「星の王子様」のパロディ的なストーリー展開になるはずだったのが、途中のアンケートで結構な高評価を戴きまして。
それならば、と、本当にやりたかった王道ストーリーに持って行かせていただきました。
子供の頃からドラクエやFFで育った人間だったので、もう描いてる途中でこっちが熱くなっちゃって(笑)
僕はそういった作品に助けられたこと、何度もあります。
そういう意味では、僕にとって勇者そのものでした。
この作品も是非そうなってくれたらな、と思います。
そしてまた、この意思を受け継いだ皆が、更に後世にこの勇敢な意思を託す。
そういったバトンの一部に携われていれば、本当に嬉しいです。
来週で終わりますが、最後まで本当にありがとうございました。